ジェーン・オースティン
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オースティン自身、田舎に3、4の家庭があれば小説にもってこいの材料だ、と述べているが、そこでの人間階級を徹底的に描き尽くしており、人間性の不変さを示し、心理写実主義の先駆ともされている。

同時代や後年の作家にも高く評価されている。モームは『世界の十大小説』で『高慢と偏見』を選び、「大した事件が起こらないのに、ページを繰らずにはいられない」と評し、するどい感性とユーモアのあふれる文体は比類がなく、平凡な生活の中で見出した真実味のある多彩な描写は非常に巧みであると論じている。英国留学した夏目漱石は『文学論』で、「Jane Austenは写実の泰斗なり。平凡にして活躍せる文字を草して技神に入る」と、絶賛している。

一方で、同じ女性作家のシャーロット・ブロンテは情感に欠けると非難し、マーク・トウェインは動物的な嫌悪を感じるとし、D・H・ローレンスも批判的であった[4]

時代色が反映されていないのも特色の一つで、オースティンが生まれた翌1776年にアメリカ独立宣言が出され、20代前半にはフランス革命が起こっている。意図的かどうかは不明だが、作品にはそういった出来事は完全に排除されており、自らの経験にないことには決して手を触れなかった。同時代の文壇とも一切関わらず、作家とは全く関係がなかった。前述したとおり、作品もすべて匿名で発表され、読者もその名を知ることはなかった。なお、現在残っている手紙は、ほとんどが姉のカサンドラ宛てである。

一連の作品は、英文学古典の一つとして高く評価されている。初級の講義から各国の学会での高度な研究に至るまで多くの大学でオースティンの作品が取り上げられている。バースゲイ・ストリートには現在、ジェイン・オースティン・センターがあり、様々な資料を展示する他、研究・啓蒙活動が行われている。

「君の心の庭に忍耐を植えよ、その草は苦くともその実は甘い」は彼女の言葉である。オースティン家の紋章

2016年以降に流通している10ポンド紙幣の肖像画に、ジェイン・オースティンが採用されている[5][6]
著作
長編小説

分別と多感(Sense and Sensibility、1811年)

高慢と偏見(Pride and Prejudice、1813年)

マンスフィールド・パーク(Mansfield Park、1814年)

エマ(Emma、1815年)

ノーサンガー・アビー(Northanger Abbey、1817年)

説得(Persuasion、1818年)

短編小説

レディ・スーザン(Lady Susan)

惣谷美智子
訳・解説 『レイディ・スーザン 書簡体小説の悪女をめぐって』 英宝社 1995年


ワトソン一家(The Watsons、未完)

サンディトン(Sanditon、未完)

都留信夫監訳 『サンディトン ジェイン・オースティン作品集』 鷹書房弓プレス 1997年「イヴリン・キャサリンあるいは東屋 ・ある小説の構想 ・ワトソン家の人・サンディトン」を収録


習作

The Three Sisters

Love and Freindship

The History of England

Catharine, or the Bower

The Beautifull Cassandra

都留信夫監訳 『美しきカサンドラ ジェイン・オースティン初期作品集』 鷹書房弓プレス 1996年


作品の映画化

オースティンの作品はその親しみやすさからか、これまでに幾度も映画化・映像化がなされてきた。

なかでも『高慢と偏見』は、最も取り上げられることの多い作品で、2005年現在では6本の映画が制作されている。近年では2005年に制作されたジョー・ライト監督、キーラ・ナイトレイ主演の映画『プライドと偏見』がある。5本のテレビ用シリーズの中では、BBCによって1995年に制作されたジェニファー・イーリーコリン・ファース主演版の評価が非常に高い。2001年の『ブリジット・ジョーンズの日記』にはこの小説にヒントを得た人物が登場している。その他にも『高慢と偏見』から派生した作品はいくつもあり、2009年発行の『高慢と偏見とゾンビ』は高評価を得て、2016年には映画化もされている。

エマ』も、これまでに5回映画化されている。『分別と多感』は1995年にアン・リー監督で『いつか晴れた日に』として映画化され、エマ・トンプソンアカデミー脚色賞を受賞している。『説得』は2度のテレビシリーズ化、1度の映画化が行われた。『マンスフィールド・パーク』と『ノーサンガー・アビー』についても映画化されている。2016年にはケイト・ベッキンセイル主演で短編作品『レディ・スーザン』が"Love and Friendship"として映画化された。

1980年に制作された『マンハッタンのジェイン・オースティン』では彼女の唯一残された戯曲である「サー・チャールズ・グランディソン」の映画化を目論んで争う2つの映画会社を題材としている[7]
本人を題材とした映画・ドラマ

ジェイン・オースティン 秘められた恋(2007年) - オースティンの若き日のただ一度の恋を描いた伝記映画

ジェイン・オースティンの後悔(英語版)(2007年) - TVドラマ


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