中国のチャン・イーモウ監督の武侠映画『HERO』(2002年)では刺客「無名」を演じ、オープニング間もなく繰り広げられたドニー・イェンとの華麗な武術対決シーンが話題となった[1][28][29]。その後も、自身も製作に参加しモーガン・フリーマンと共演した『ダニー・ザ・ドッグ』(2005年)では、悪徳高利貸しにピアニストの母を殺され闘犬のように育てられた主人公「ダニー」の野性と繊細さを好演し、次第に人間らしさを取り戻していく難しい表現にも挑戦し成功を収めた[3][30]。
しかし2004年12月に起きたインドネシアのスマトラ島沖地震の際には、ちょうど家族とインドネシアにバカンスに来ていたリーは災害に巻き込まれてしまい、一時は行方不明と報道されて安否を危ぶまれたこともあった[3]。幸い怪我は軽傷で済んで無事にチャリティー・コンサートに出席しファンをほっとさせた[3]。翌2005年10月にも、インドへの聖地巡礼の旅の最中にパキスタン地震に遭遇する出来事もあったが、この地震では特に何の被害もなかった[3]。
2006年には、実在の武術家「霍元甲」を演じた『SPIRIT』(2006年)を最後に武術映画から引退すると公言した[3][5]。「異種格闘技戦」のシーンでは中村獅童とも共演し死闘を好演した[3][31]。この映画で、香港映画評論学会大奨の主演男優賞を受賞した。『SPIRIT』の撮影後、リーは長く住んでいたカリフォルニアを離れ、家族とともに故郷の中国へ帰国し移住した[3]。香港のアベニュー・オブ・スターズにあるジェット・リーの手形
その後は『ザ・ワン』(2001年)以来、ジェイソン・ステイサムと共演した『ローグ アサシン』(2007年)で謎の殺し屋を演じ、馬新貽殺人事件を題材とした『ウォーロード/男たちの誓い』(2007年)ではアンディ・ラウや金城武と共演し、香港電影金像奨の主演男優賞を受賞した。
2008年にはアクション・スターの先輩ジャッキー・チェンとの本格的なアクション初共演作『ドラゴン・キングダム』が公開され、『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』では「始皇帝」役で出演した。2010年にはアクション映画ではない『海洋天堂』で自閉症の息子の行く末を憂える一般人の父親役を演じて高評価され新境地を開いた[2]。また同年には、シルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガー、ジェイソン・ステイサムやブルース・ウィリスなどハリウッドアクション俳優の主役級が多数出演する『エクスペンダブルズ』に参加し、シリーズ2作目『エクスペンダブルズ2』(2012年)や3作目の『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014年)にも出演した。 『エクスペンダブルズ』シリーズの合間には、『白蛇伝説?ホワイト・スネーク?』(2011年)や、デジタル3Dの『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』(2011年)、現代物の『ドラゴン・コップス-微笑捜査線-
甲状腺の病気を告白以後
そうした中、『封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド』(2016年)では主人公で古代中国の軍師姜子牙役を演じ、2017年には中国武術の振興を目的に自身が製作し、ジャック・マー主演の短編映画『功守道(中国語版)』が公開され、リーも老召使い役で出演した。この映画は、親交のあるジャック・マーとの交流から生まれた映画で[34]、「アリババグループ」会長のマーの映画デビュー作となった。アクション顧問には、リーの代表作や『マトリックス』などの武術指導でも有名なユエン・ウーピン、共演者にはドニー・イェンやサモ・ハン、元横綱のドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ(朝青龍)、トニー・ジャーら著名人も出演した[35][36]。