シンガーソングライター
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こうして、借り物ではない、自分の言葉で、個性で、歌を唄う、表現する、シンガーソングライターが、若者たちの支持を勝ち得て定着していくことになった[2][21][38][67][68]。彼らの多くが自ら作詞作曲した楽曲を、ギターを弾きながら歌う「ソロのフォークシンガー」であったため「シンガーソングライター=フォーク系のソロシンガー」のイメージが付いた[56][64][69][70]

一方で、当時は職業作詞家・作曲家が作るようなレベルの楽曲を歌手が容易に作れるとは思われていなかった。前述の内田裕也発言は[51](シンガー=ソングライターは)「ロカビリーがだんだん歌謡曲になったのと同じ。長く続かない」といった主旨だったし、富澤一誠かまやつひろしの対談では、富澤が「ぼくから見ると、作詞・作曲・歌と三つのことをすべてうまくやるってことは、困難じゃないかと思えるんですがねえ。だから、三つのことをそれぞれプロフェッショナルがやった方が、いいものが生まれると思うんですけど」と話している[52]。当事者の一人だった南こうせつ自身も「ブームが続くとは思ってなかった」と話しており[71]、シンガーソングライターによるフォークブームは短命に終わるのではないかという見方もあった。しかし、1970年代に才能あるシンガーソングライターが多く続いたために、一過性のものではなく、日本の音楽界のメインストリームになっていった[21][64][72][73][74]

特に1973年頃から、五輪真弓金延幸子りりぃ荒井由実吉田美奈子小坂明子小坂恭子中島みゆきらが台頭した時[2][75][76]、彼女たちの中にギターを持たずにピアノを弾いて歌うというような、フォーク臭の全くない者がいたため彼女らを「女性フォークシンガー」とも呼び辛く、適当な言い方がなく「女性シンガーソングライター」という言い方が非常に多く使われた[56][74]。これも「シンガーソングライター」という言葉の認知度アップに影響があったと考えられる[77]。勿論、多くの「シンガーソングライター」を輩出した「ヤマハポピュラーソングコンテスト」の功績も非常に大きい[78][79]。なお、「女性シンガーソングライター」の原型は、1967年に小薗江圭子の詞に自分で曲をつけた「この広い野原いっぱい」でデビューした森山良子という見方もあるが、森山は職業作詞家・作曲家の作品や洋楽カバー曲を歌うことが多く1970年代半ばまで歌謡曲歌手というイメージがついていた[2][80]

今日に繋がる「女性シンガーソングライター」の草分けは、1972年にアルバムデビューした金延幸子、五輪真弓、りりぃあたりで、「女性シンガーソングライター」による最初の大ヒット曲はヤマハポプコン出身の小坂明子が1973年12月に出した「あなた」である[2][79]。シンガー・ソングライターの台頭は、職業作詞家・作曲家の安定を揺るがす存在になっていく[49][81]。また歌謡曲歌手にも大きな影響を与えた[82]。1970年代も半ばになると、フォークという言葉ではフォローできない音楽がたくさん出てきて、フォークはニューミュージックという呼び方に吸収されていった[73][83]。歌謡曲のフィールドでも渡辺真知子のように自作曲で日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞するような者も出てきた。1980年以降には、シンガーソングライターの影響を受けた職業作詞家・作曲家が出てくるようになった[69][84]。現在の音楽界は、シンガーソングライターたちが成し遂げた変革の上に成り立っている[63][67]

平尾昌晃は「昭和40年代後半のアイドルブームに沸く日本の歌謡界に、沖合から大きな波が押し寄せていた。それが『フォーク・ブーム』である。吉田拓郎、井上陽水らのヒットを契機に、南こうせつとかぐや姫、グレープなどの、いわゆる叙情的なフォークソングもヒットし『昭和歌謡』の幅はグンと広がった。この頃から、フォークソングは、ニューミュージックと言われる時代に入ったのだと思う。僕は作曲家であり、歌手でもあるけど、正直言って、彼らの才能には脱帽した。何しろ、自ら作詞作曲し、楽器を演奏しながら歌う彼らがひとりではなく、次々と登場してきたのだから。しかも、彼らが自分で歌う『結婚しようよ』にしろ、『傘がない』にしろ、『神田川』『精霊流し』『なごり雪』にしろ、それがまた名曲であったからである」などと論じている[85]

小西良太郎は『スタア』1975年1月号の「歌は世につれ世は歌につれ 『不況の中の'74年歌謡曲やぶにらみ考」という記事で[86]、「1974年10月最終週のLPレコードの売り上げは「1位『二色の独楽』(井上陽水)、2位『かぐや姫LIVE』(かぐや姫)、3位『氷の世界』(井上陽水)、4位『NSP III』(NSP)、5位『陽水ライヴ』(井上陽水)、6位『ゴールデン・プライズ第2集』(カーペンターズ)、7位『追憶』(沢田研二)、8位『オン・ステージ』(八代亜紀)、9位『ぼくがつくった愛のうた』(チューリップ)、10位『ライブ3』(五木ひろし)と、フォーク勢が上位を独占。


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