シンガーソングライター
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更に自分自身の言葉を持っていれば、それが理想的なシンガーソングライターということになる」などと論じている[2]。2013年『Disc Collection 日本の女性シンガー・ソングライター』という書は、「自身で作曲(作詞だけではなく)をしているシンガー」のみを掲載しており、「作詞だけするシンガー」をシンガー・ソングライターと認めていない[3]

1980年前後に"軟弱""ネクラ"などと世間から叩かれてイメージを悪くした「ニューミュージック」という言葉に比べると[101]、「シンガーソングライター」という言葉は好イメージが持続した[102]。1980年に突如、漫才ブームが勃興したが[103]、人気を集めた当時の(若手と表現された)B&Bツービート紳助・竜介たちは、それまでの漫才師が台本作家が書いたネタを演じていたのに比べて[102][104][105]、自分たちでネタを書いた[102][104][105]。これを当時のマスメディアが「彼らはそれぞれが自分たちで考えたネタで勝負。いわばシンガーソング・ライター。彼らの本音をぶつけたネタがヤングの共鳴を受けている」と、「シンガーソング・ライター」という言葉を自作自演の良い例えとして使用している[102]

1970年代に「シンガーソングライター」という言葉は定着したものの、1980年代以降に言われ始めた「J-POP」というカテゴリーでは、自作自演であることが強調されなくなった時期もあった。ビーイング小室哲哉つんく♂等のプロデューサー主導による楽曲や、バンドブーム以降のロックバンドヒップホップグループによるグループ単位での音楽活動が目立ったため、ソロシンガーのイメージがある「シンガーソングライター」とはあまり呼ばれなかったのかも知れない[2]。しかし現在のミュージシャンは大抵曲を自作しており、むしろ自分で曲を作らない人が少数派になっている[64][75]宇崎竜童は「ここ20年くらいは、みんながシンガーソングライターになって、演歌以外は職業作家へのオファーが少なくなりましたね。『歌謡曲』というものは一回滅びたのかなと思います」と述べている[106]



2000年代?

「シンガーソングライター」という表現が使われ始めて長年が経過したが、この表現は再び誇りを持って非常に多く使われるようになった。2000年代頃よりテレビ朝日ミュージックステーション』は、自作自演歌手をシンガーソングライターと紹介することが多く、オリコンがCDの売り上げ1位記録を「女性シンガー・ソングライターとして○○以来の快挙」等と報道したり[107]専門学校や音楽スクールに「シンガーソングライター科」等が置かれたりするのは[108]、「シンガーソングライター」という言葉自体が定着しているといえる[109]。また、モーニング娘。市井紗耶香が「シンガーソングライターになりたい」と、モーニング娘。を卒業したり[110]中村あゆみのシンガーソングライターの名曲カバーアルバムの発売[111]等は、シンガーソングライターの先人をリスペクトする事例と言える。日本経済新聞は、ポール・マッカートニーを英シンガー・ソングライターと紹介している[112]。また、現在の若いシンガーは、肩書を「シンガーソングライター○○」と称したり、「○歳の時に、シンガーソングライターになろうと決めた」「生涯シンガー・ソングライター」等と話す者も多く[113]、ベテランミュージシャンの中にも肩書を「シンガーソングライター○○」と称する人が増えてきた[114]2022年、松任谷由実が文化功労者に選出されたが、文部科学省は松任谷の「職名等」に「シンガーソングライター」と書いた[115]。国からシンガーソングライターが職業として認められたと見られる。本項のシンガーソングライターの説明は"ソロ形態"と書かれているが、"職業"と置き換えてもいいのかもしれない。ホコ天上がりの元バンドマンでプロデューサーの寺岡呼人は、こうした傾向を「シンガーソングライター至上主義」と表現し「1970年代の分業制の方が結果的に後生に残るようなものを作ってる気がする」と疑問を呈している[116]。寺岡は「シンガーソングライターという言葉の持つ意味合いがどんどん変わってきているなと感じる。もともとは『歌謡曲をぶっつぶそう』みたいな形でシンガーソングライターが出てきて、専業の作家やアレンジャーを追い払っていったと思うんです。でも今いろんな人たちと仕事していると、自分で歌う歌詞が直前までできあがっていないみたいなのって本末転倒だな(プロデューサーと最初から共同作業をしようとしている)と思う」などと話している[24]

ライブハウスストリートなどで活躍しているアーティストの中にも、インディーズ事務所に属するしないを問わず、多数のシンガー・ソングライターと自称する若者達もいる。自らの演奏と歌声でメッセージをダイレクトに観客に伝えるというこのムーブメントに関わる個々のアーティストの動機・年齢層は様々で、メジャーデビューを夢見る者、趣味として続けていく者など多岐にわたる。また、この背景にはかつて音源の制作やその音楽配信が膨大な資本組織を必要としたのに対し、インターネットによる様々な技術やサービスによって音楽配信が個人もしくは小規模のレーベル等のレベルで可能になったことが大きい。これらの事が「次世代のシンガーソングライター」を産み出す要因となりつつある。

なお演歌業界では、21世紀に入ってからも作曲家・大御所歌手への弟子入りなどを経てデビューという事実上の徒弟制が残っており、吉幾三のように自分で作詞作曲できる一部の例外を除き、多くの歌手がベテランになっても師匠や外部から曲を貰えるのを待つしかない状態である。
各国のシンガーソングライター詳細は「Category:各国のシンガーソングライター」を参照
脚注[脚注の使い方]
注釈^ たとえば、後述の林伊佐緒と同世代の藤山一郎は、作曲の仕事も多数行っており「ラジオ体操のうた」をはじめ自ら歌唱した曲も存在するが、藤山のヒット曲の数々は他人の作曲であり藤山が「シンガーソングライター」といわれることはほとんどなかった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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