シンガーソングライター
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作曲しか行わず編曲を他者に依頼する場合でも、一般的にはシンガーソングライターというのに対し、作詞しかしない場合にはシンガーソングライターとは言わないことが多い(後述)[2][3]。また、自作をしていても、自演曲の中で自作曲の割合が小さい場合には、シンガーソングライターとはいわないことが多く[注釈 1]、逆に 100%自作曲でなくても、自作曲の割合が大きい場合にはシンガーソングライターと呼ぶこともある[2]。 

楽曲の制作方法は、歌手により様々である。先に作曲、後に作詞(「曲先(きょくせん)」や「メロ先」、「はめ込み作詞」等と呼ばれる手法)という手法をとる者もいれば、逆に先に作詞、後に作曲(こちらは「詞先(しせん)」と呼ばれる)する者もいる。作詞・作曲を並行して行う者もいる。
シンガーソングライターの真贋

シンガーソングライター的な活動(シンガーソングライティング)は誰でも直ぐに始めることができるが、本来は職業人の肩書きであるため、自ら「シンガーソングライター」と名乗る上では客観的に認められ得る実績を問われることになる。この点については芸能活動を行っていても作品出演や動画再生回数などの実績がない場合は芸能人と名乗れないことと同じである。

そもそも作品の質が素人レベルで聴くに値しない場合[注釈 2]は論外として、一定の質の作品を作り続けていたとしても、素性の明らかなレコード会社からのデビュー[注釈 3]や作品売上[注釈 4]などといった、客観的に認められ得る実績を持たない場合は、他者からは「自称シンガーソングライター」と呼ばれる可能性がある[4][注釈 5]。また、活動が社会的影響力を持つ場合は芸能人に含まれるが、無名であると一般人の扱いになる場合がある[注釈 6]。更に加えると、歴とした職業人としてのシンガーソングライターは契約に基づき計画的に作品を制作し、サウンドデザインを熟慮し、売上が不調な場合は早期の契約終了、不祥事を起こせば即刻契約解除という厳しい成果主義の下で活動しているのに対して、アマチュアのシンガーソングライター(と自称する者)は締切もなく思いつきで作品を作り始め、サウンドデザインは稚拙で、リリース時期も適当に決めるため、似て非なるものである[5]

アマチュアの場合は自己陶酔が酷いと、他者から評価された実績が何も無いのにプロになったつもりで居たり[6]、音楽にすらなっていない滅茶苦茶な楽曲の公開やライブを平気で行う場合もある[7]。また、実力が無いのに自身の主義信条を守ることを最優先に考えているため、他者からの指摘を聞き入れることもなく、音楽教室に入るなどして音楽の基礎についてプロに教えを請うこともしない。挙句の果てには既存の音楽理論を全く無視した支離滅裂な歌や演奏を「型にはまらない独創性」と勘違いし、更なる悪循環に陥って行く[6]。従って、程度の低いアマチュアは他者評価では「勘違いした人」となり、ライブハウスなどのライブ会場で支離滅裂な歌や演奏を披露した結果、出入禁止の処分を受ける可能性がある[6]。他者評価を重んじて戦略的に活動するプロのシンガーソングライターの間でも実力や売上は天と地ほどの格差があり、常にマスメディアで取り上げられるような人気シンガーソングライターと、特定の界隈でしか知名度のない辛うじてプロに留まっているだけの者とでは比べ物にならない程の差が生じている[8]。従って、シンガーソングライターは自己陶酔だけでは務まらない非常に格差の大きい過酷な職業である。当然のことながら、商業的に成功する方法は誰かが教えてくれるわけでもなく、業界人や客から痛烈な批判を受けながら自力で改善を繰り返すという泥臭い営業活動を積み重ねなければならない。
シンガーソングライターに関わる被害

シンガーソングライターとして活動する場合、音楽業界では偽物の業界人あるいは悪意を持った業界人が多数暗躍[9][10][11][12]し、夢追い人を食い物にしているため、デビューの誘いを持ち掛けておきながら金銭の支払いや性的関係を要求するような偽プロデューサーや詐欺レーベルなどに騙されないようにする必要がある[13][14]。シンガーソングライターとしての活動は個人の存在を直接社会に晒して行う活動であり、様々な悪意を持った者が近寄りやすい状態にあるため、まずは誘いを受けたら疑い、その場で信用に足る証拠を提示するように求めたり、誘いを受けた後も自ら相手の行動を観察・調査し続け、信用できる人物・団体かどうかについて考える必要がある[9]
語源と背景

「シンガーソングライター」という言葉は、1970年代初頭にアメリカジェームス・テイラーが注目され、続いて英国エルトン・ジョン、アメリカのキャロル・キングなどのめざましい活躍もあって[15]、彼らが「シンガーソングライター」と呼ばれ、それが日本でも普及したもの[16][17][18][19]

元々、ポップ・ミュージック(ポップス)の世界では、英米でも日本でも曲を作ることと歌うことは分業で行われていた[2][20]。英米ではそれらを今日オールディーズなどと称しているが、日本でいえば歌謡曲と、どちらも基本的には分業であった[21]。そこへ自作自演の流れを持ち込んだのはビートルズボブ・ディランらである[2][20][21][22]。1960年代には多くの自作自演のミュージシャンが高い人気を得ていた。にもかかわらず1970年代初頭、あえてアメリカで「シンガー・ソングライター」という呼び名が使われた要因は、「ロック的な狂熱とは縁の薄いパフォーマンスの価値を、歌やソングライティングを強調することで補う必要があったから」とレコード・コレクターズ誌は解説している[23]。英米の「シンガー・ソングライター」は、「大きな夢や怒りではなく、身のまわりの出来事に目を向けた歌を作って歌う」「誠実な自己告白的の歌を歌う」というような意味合いがあった[23]ローリング・ストーン誌のロック史では、「シンガー・ソングライター」は映画『卒業』のダスティン・ホフマンのように、スターらしからぬスターが誕生したニューシネマの現象と関連づけて語られているという[23]。本来の「シンガー・ソングライター」という言葉には「ロックのアンチテーゼ」のような意味があった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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