シンガポール
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1959年から1984年総選挙まで小選挙区制であったが、1988年から小選挙区制に並列してグループ選挙区制度(英語版)が導入された[36]。この制度は定数が単数もしくは複数の選挙区で最多票を得た政党がその選挙区の定数を総取りする規則であり(アメリカ大統領選挙に似る)、多数派の人民行動党が常に有利になる選挙システムとなっている。そのため、憲法に指導政党が定められていないだけの事実上の一党独裁制とされることもある。

民族暴動を機に、マレーシアから追い出されるように独立した経緯から、国内民族問題に敏感であり、民族対立を煽るような言論・表現は煽動法(英語版)や宗教調和維持法(英語版)などによって、厳しく取り締まられる。

一方、トランスペアレンシー・インターナショナル腐敗認識指数によると、公職における汚職の少なさでは、世界トップクラス、日本を抜いてアジア1位であり、欧米以外では最も行政・政治腐敗の少ない国家である。経済平和研究所(Institute for Economics and Peace)が2022年に発表した「政府の質指数」(汚職の防止、横領の抑止、エリート派閥の形成の防止によって決定される)によると、シンガポールは1.602で世界12位、アジア1位である[14]
国会シンガポール国会議事堂

国会一院制。任期5年。解散あり。定数は選挙区選出83、非選挙区選出0-6、任命9。非選挙区選出は野党懐柔のために設けられた枠で、選挙区選出枠以外は、憲法改正案、予算案の議決権を持たない。
選挙リー・シェンロン上級相

1968年から1981年までの13年間は、国会の全議席を人民行動党が占めていた。その後の総選挙でも1984年は定数79で人民行動党77、野党2。1988年は定数81で人民行動党80、野党1。1991年は定数81で人民行動党77、野党4であった[37]

供託金は候補者1人当たり13000シンガポールドルで、供託金没収点は有効得票÷定数の8分の1である。
2001年総選挙
2001年総選挙は9月28日には選挙人名簿の縦覧を開始。10月18日に議会の解散が行われ、10月25日総選挙が告示された。投票日は9日後の11月3日であった。日程は野党の選挙態勢を整わせないよう極めて慌ただしく進められた。結果は、人民行動党82、労働者党1。野党議席が3に満たなかったため、非選挙区選出枠からシンガポール民主連合1人が選出された。人民行動党は得票率75.29%で98.80%の選挙区議席を獲得している。
2006年総選挙
2006年5月6日、総選挙が投開票された。与党・人民行動党 (PAP) が全84議席のうち82議席を獲得した。得票率は2001年の総選挙より8.7ポイント低下し、66.59%であった。投票率は94%で、有権者数は122万人。37議席は人民行動党候補が無投票当選。選挙が行われた47議席中人民行動党が45議席を獲得した。野党は1988年以来過半数を上回る候補を立てられず、政権を争うという意味では選挙前から「不戦敗」の状況が続いてきたが、回避した。労働者党が1議席(ラウ・アキアン書記長)、シンガポール民主連合が1議席(チャム・シートン新人民党書記長)を獲得した。与党の得票率は、2001年は75.29%、2006年は、8.7ポイント下がって66.59%。野党の2人はいずれも前回よりも得票率を伸ばした。人民行動党は1965年のシンガポール独立以来、単独政権を維持してきた。
2011年総選挙
2011年シンガポール通常選挙」も参照2011年5月7日、総選挙が投開票された。野党は、立候補届け出が遅れて受理されなかったタンジョン・パガー選挙区(定数5)を除いて候補を擁立し、全87議席のうち82議席で選挙戦となった。またインターネットでの選挙活動が解禁された。その結果、与党・人民行動党(PAP)が全87議席のうち81議席を獲得したものの、野党・労働者党(WP)が1集団選挙区で勝利して過去最多となる6議席を獲得した。同集団選挙区では外務大臣ジョージ・ヨーが人民行動党のグループを率いており、現役閣僚が落選するという与党には厳しい結果となった。集団選挙区で人民行動党が敗北するのは史上初。野党のシンガポール人民党(SPP)は改選前の1議席を守れず議席を失った。人民行動党の得票率は60.1%と、過去最低だった1991年総選挙時の60.9%を下回った。投票率は93.06%であった。
2012年補欠選挙
2012年5月27日、野党労働者党議員の不倫発覚後、国外逃亡して2月に自動失職したホーガン選挙区(定数1)の補欠選挙が行われた。結果は与党人民行動党が圧倒的有利にもかかわらず、野党労働者党の候補が6割以上の得票率で勝利した。争点が野党の不祥事より移民政策の方が大きくなり、外国人を積極的に受け入れている政権与党が否定的な野党に敗北した格好となった。
2015年総選挙
2015年9月11日、シンガポールで総選挙が行われた。結果、首相のリー・シェンロン氏率いる人民行動党が、全89議席のうち83議席と圧勝した。野党・労働者党は6議席を守ったが、人民行動党は得票率を69.9%に回復させた。地元紙『ストレートタイムズ』は与党圧勝の理由を7つあったと分析した(独立50周年要素、死去したリー・クアンユー元首相の弔い合戦効果、政策の変更、WPが管理するタウン・カウンシルの運営をめぐる過失、抜本的な変化への恐れ、選挙の顔の7つ)。
2020年総選挙
2020年7月10日新型コロナウイルス感染症拡大の中、総選挙が行われた。結果は、人民行動党(PAP)が83議席を獲得し勝利したものの、得票率は前回15年の69.9%から61.2%に大きく下がった。一方で、野党の労働者党は前回の6議席から10議席と議席数を増やし、シンガポール独立以来、初めて野党の議席数が2ケタに達した。リー・シェンロン首相は、若年層のPAP離れが苦戦の原因との認識を示した。
法律詳細は「シンガポール法」を参照

シンガポールの法体系はイングランド法を基礎としている。主要な法分野(特に行政法契約法、衡平法および信託法、財産法、不法行為法)は、その一部が立法により修正がなされたものの、主に判例法の体系によっている。刑法会社法家族法を含む他の領域は、その性質上、主として制定法となっている。

シンガポールにおける判例がない場合はイギリスにおける判例法を参照するか、シンガポールの法律のモデルとなったイングランド法の解釈を援用することがある。最近においては、イギリス本土のアプローチが不適当であるときに、同じ英連邦の主要国であるオーストラリアカナダの判例を参照する傾向が強く、またイギリスの判例に依拠せずシンガポールの裁判所が独自の判断を下すケースも増えてきているという[38]。一部のシンガポールの法律は、イギリス法を継承したものではなく、他の法体系に起源を有するものがあり、それらの法律は最初の立法時の経緯を斟酌し母国法を参照する。例えば、証拠法や一部の刑法の取り扱いはインド法に基づいて解釈されることがある。憲法解釈については、他国の例を参照することを嫌い、シンガポール国内の政治的・社会的状況を斟酌して解釈される。

刑事法や取締法規については一般的にいって厳格であり、裁判所の許可のない拘留を認めることや、イギリス植民地時代に制定された、組織について政府が管理権を有する結社法が未だに存在し、身体刑死刑が実施されている。

なお、あらゆる形態のポルノは禁止されている[39][40][41]
死刑制度詳細は「シンガポールにおける死刑」を参照

世界的にも厳しい死刑制度を維持している。人口あたりの死刑執行件数は、正確な統計がある国家としては最も高い。特に、薬物に関する犯罪については厳しく、麻薬密輸で有罪になった時は死刑のみが適用されたため[42]、入国カードにも「麻薬密輸者は死刑」と警告文が書いてある。外国人の麻薬密売業者が死刑になった事例が存在し、死刑廃止国との間で外交問題に発展したことがある。死刑の方法はイギリス式の絞首刑であり、死刑執行人が存在する。

ただし、近年では一部の厳しい規則は改定されることもあり、麻薬密輸で有罪になった場合に死刑が適用される条文については、2012年に停止されている[42]

シンガポールにおける刑罰が厳しいのは、太平洋戦争中の日本占領地時代において、厳罰化が犯罪抑止に対して効果があったことをリー・クアンユーが認めたためでもある。
仲裁

国際取引に関する紛争の解決方法としては、一般に訴訟よりも仲裁が広く用いられているが、アジアではシンガポールの仲裁、シンガポール国際仲裁センター(SIAC)が広く利用されている。このことは、シンガポール、さらにはイギリス法系の法律家にとって、巨大なリーガルマーケットを意味しており、シンガポールにとっては、国家的な戦略と位置付けられる[43]

2015年には、シンガポールへの申立件数が271件と5年で4割増え、主に外国企業同士の案件を扱う機関では、香港の国際仲裁センター(HKIAC)と並びアジア首位になった。2011年にアメリカ合衆国コンゴ民主共和国の間での仲裁判断について、香港最高裁が中華人民共和国本土政府の見解を仰いだことから、HKIACの司法独立性に対して不信感を印象付けた[44]


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