南極海では、21世紀に主な獲物であるオキアミ類が温暖化や海洋酸性化により激減することが予想されており、影響が懸念されている[3]。
近年、個体数は年々増加し続けているものの、総計で1万頭前後と非常に少なく、絶滅危惧種に指定されている。
巨大で高速で泳ぐことから捕獲が困難で、古くは捕鯨の対象とはならず、元々は個体数は30万頭いたと推定されている。しかし、19世紀以降、爆発銛、大型・高速の捕鯨船が導入された近代捕鯨が始まると捕獲対象となった。
もっとも早く減少した北大西洋のシロナガスクジラは、第二次世界大戦前には関係国の協定により捕獲が停止されており、1954年には国際捕鯨委員会で正式に捕獲停止が決定された。
手付かずであった南極海でも20世紀初頭には捕鯨が始まり、ノルウェー、イギリス、日本を中心とした10カ国が捕鯨船団を派遣するなどして捕獲が行われた。最盛期である1930・1931年の1漁期だけで約3万頭が捕獲された。
第二次世界大戦による捕鯨中断のため若干の回復があったものの減少が続いた。1937年に一部の国の協定で操業期間制限が始まり、1946年の国際捕鯨取締り条約で捕獲量に制限が設けられたものの、規制に用いられた「シロナガス換算方式(BWU)」の欠点から、個体あたりの鯨油生産効率の高いシロナガスクジラに捕獲が集中し、十分な歯止めとならなかった。
1962・1963年の漁期を最後に通常型の捕獲は停止された。捕獲停止時の南極海の通常型の個体数は約700頭と推定されている。なお、亜種のピグミーシロナガスクジラも1966年には捕獲が停止され、南極海での捕鯨は完全停止した。
北太平洋でも東部海域は1954年、西部海域も1966年には捕獲が停止された。その後はごく少数の例外を除き捕獲はされておらず、捕獲は全世界で停止状態にある。捕獲禁止後も長らく個体数回復の調子が見られなかったが、近年では回復に転じている。南極海の個体数について、1997/1998年の推定では通常型(ピグミーを除く)2300頭とされ[59]、このほかピグミーシロナガスクジラが5,700頭以上とされる。増加率は、南極海の通常型について1978/1979年期-2003/2004年期の間で年平均8.2%と推定されている。
南半球では、ミナミシロナガスクジラ、ナガスクジラ、ミナミセミクジラに関しては、各々が本来の生息数の50%未満に回復するのは西暦2100年ごろだと推測されている[60]。
日本
由比ヶ浜に漂着した個体(2018年8月6日)
日本列島では古くは「長須鯨」と呼称されていた[5]。1966年に本種を対象とした商業捕鯨が禁止されたが、1907年から1945年の間だけでも北海道・青森県・三重県・和歌山県・四国地方・宮崎県などで推定2,565頭が捕獲されている。これらの捕獲のアジアの系統群への影響は大きかったとされ、近年ではほぼみられない[7][11]。また、中国大陸や朝鮮半島や台湾における近代商業捕鯨は実質的に日本が統治時代などに開始したものが主体であり[注 7][61][62][63]、同じアジア系個体群に属していたとも思わしい散発的な捕獲例が朝鮮半島の東岸や黄海や台湾などに存在する[14][18][16]。
1870年に現在の臼杵市大泊に打ちあがった記録のある「大鯨」は肩甲骨の形状から、本種とする説もある[64]。