のどの表面には60本程度の畝(うね)がある。主食であるオキアミを捕食するときは、この畝が広がって大きなのど袋をつくる。頭頂部には2つの噴気孔がある。歯に代わる部分として食事に使われるいわゆる「鯨ひげ」と呼ばれる髭板の長さは1枚70センチメートル以上にも及ぶ。ただし、髭板の長さではセミクジラ科のホッキョククジラの方がはるかに長く、最大3m近くに達するのに比べれば小さく、鰭の大きさでも同じ仲間のザトウクジラには及ばない。
しかし、シロナガスクジラ最大の特徴は、やはり何と言ってもその体長である。世界最大の動物であるが、その大きさは、人間を仮に平均170センチメートルだとすると、シロナガスクジラは、およそ12倍から最大で20倍に相当する[注 3]。
しかし、捕鯨の影響により多数の大型鯨類が小型化した可能性が指摘されており、本種も平均体長が4 - 7メートルも減少した可能性がある[32]。
英名の由来である、海面下にあると青く見える体色。
頭部とブロー
噴気孔
ブロー
フルークアップの様子。
頭骨と成人男性の比較。
陰茎の標本[注 4](英語版)。
鯨類の骨格標本の大きさの比較。手前から順にハンドウイルカ、シロナガスクジラ、オウギハクジラ。
生態採餌の光景親子(オーラフスビーク)藻が付着した個体(サンタクルス島)
最長寿命は118年と推定されている[5]が、2010年にデンマークに座礁したナガスクジラが140歳だと判明している[33]。
繁殖期や子育ての期間を除き一般的には単独行動か小集団で行動し、母と子の絆以外に明確な社会構造はない。
濾過摂食性であり、オキアミを主食としている個体が多い。主にオキアミ・カイアシ類などのプランクトンを食べる[6]。カリフォルニア湾では浮遊性のカニ類も食べる[5]。主にプランクトン、いわし等の小魚を食べるが、時にはアジなどの中型魚も食べる。食性はオキアミにほぼ特化しており、上あごにある「鯨ひげ」でこしとって採食する。成体では一日に4t程度のオキアミを捕食すると思われていたが、最近の研究で一日平均16t程度のオキアミを捕食することが分かった。[34]また、オキアミの食べ方にもいろいろあり、一例としては、海面近くに生息するオキアミを食べるのに一端水中に潜り威嚇するように泳いで、オキアミが身を守るために集団で寄り添ったところを一気に食べる。また、最近の研究で、まれなケースとしてイワシを捕食した例が確認されている。イワシはオキアミに比べ泳ぐのが速く縦横に移動するため、それを追いかけ上下逆向きで泳ぐなどの複雑な挙動を繰り返す。
繁殖様式は胎生。冬季に交尾を行う(南半球では7 - 8月)[6]。妊娠期間は10 - 11か月[6]。冬季に低緯度地方で出産を行う[5][6]。1回に1頭の幼獣を産む[5]。体長約7?11メートルの子どもを通常1頭出産する。まれに双子が生まれることもある。出産間隔は2 - 3年[6]。授乳期間は6 - 8か月[6]。生後8 - 10年で性成熟する[6]。
急角度で水面から飛び出し着水する「ブリーチング(英語版)」を行う頻度は、ヒゲクジラ類の中では比較的に低い。「ポーポイジング」の延長で頭部を海面に露出させたり、ヘッドスラップに近い動作を見せることはあっても[35]、他の大型鯨類と同様のブリーチングを行うことは稀である[36][37]。
また、採餌時や潜水時の姿勢や泳ぎ方などから、多くの個体は(人間の範疇で解釈すれば)「左利き」であると推測されている[38]。