シルバー仮面
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さらに裏番組には、原作者の許可が得られず制作中止となった『長くつ下のピッピ』のピンチヒッターとして円谷プロダクションの特撮番組『ミラーマン』が放送されることになり、TBSは前番組『ガッツジュン』を予定より1週早く打ち切り、初回放映が12月5日から11月28日に繰り上げられた[15]

このため、第1話は異例の短期間での制作を余儀なくされた。そんな中、劇中クライマックスのチグリス星人の炎上シーンが先行撮影されたが、着込んだ着ぐるみに火薬を仕込んで撮影した際に火が内部へ燃え移り、着ぐるみの半分以上が燃えて溶けてしまった[16][17][注釈 3]。この結果、チグリス星人の着ぐるみは使い物にならなくなってしまい、焼け残りが死骸の描写に使われたものの、その後のチグリス星人の描写は顔のアップだけで処理し[16][20]、春日兄妹がスペクトルグラスでチグリス星人の正体を見破るシーンも暗いものとなってしまった。第1話の画面の暗さは、これをごまかすために仕方なく採られた処置だった。

第1話の試写会では、冒頭の暗さなどに関係者の多くが懸念を抱いたという[21][22][2]

一方、監督の実相寺や春日光三役の篠田三郎は試写会では好評であったと証言しており[23][24]、宣弘社大阪支社に在籍していた佐多直文も、スポンサーの武田薬品から特にクレームはなかったと述べており[25]、宣弘社営業部に在籍していた渡辺邦彦は、多くの関係者が作品に難色を示す中で、宣弘社営業部長の大本勝義だけが「画期的だ」と絶賛して放送に至ったと述べている[26]

この第1話はタイトルが出るまで実に6分強ものプロローグが入るという異例の構成になっており、その後も予告編のテロップミスなどが生じてしまっている。しかし、実相寺は異例づくめの第1話の映像に対して強いこだわりを持ち、本放送時にTBSの調整室に出向き、放映画像の輝度を明るく調整しないよう指示していた[要出典]。一方、あまりにも暗すぎた映像となったため、実相寺本人が輝度を明るくするよう調整指示して放映した、という逆の証言もある[27]

実相寺は第1話・第2話を監督した後は制作に参加していないが、その理由についてはTBSが若手スタッフを育てようという方針であったことと、ウルトラシリーズと異なり連続性のあるストーリーであったことから途中復帰が難しかったことを挙げており、自身から降板を希望したわけではないとしている[23]。擬斗の高倉英二も実相寺の降板は本人の意志ではなく、視聴率が取れなかったことによるプロデューサーらの判断であったと推測している[28]
『ミラーマン』との視聴率競争

本作品は、放映開始時から裏番組として同じ特撮ヒーロー番組である円谷プロダクションの『ミラーマン』(フジテレビ)との視聴率競争が意図されていた作品である[注釈 4]。『ミラーマン』の放送は急遽決定したものであったが、結果として円谷プロと同社を離れたスタッフによる同門対決となった[30][注釈 5]。奇しくも主役の春日光二を演じた柴俊夫は、『ミラーマン』のパイロット版でも主役を演じており[33]、『ミラーマン』の主演の石田信之も『シルバー仮面』の主役へのオファーがあったと述べている[34]。「ミラーマン#『シルバー仮面』との視聴率競争」も参照

『ミラーマン』に先行した第1話は14.6%の視聴率を獲得したものの、『ミラーマン』の放送開始日である第2話からは、20%台を記録する同作に対して本作品は1桁台となり、視聴率は常に苦戦を強いられた[35][36]。また、重いドラマ作りに加え、等身大で暗躍する宇宙人に代表される怪奇要素やストーリーの暗さ、異色の演出描写が、ターゲット層である児童層からの支持を受けにくいものとなってしまったことが視聴率的苦戦の一因とされている[37]。第9話「見知らぬ町に追われて」の回は予告編からショッキングな映像を中心に構成し、結果的に全26話の中で最低の視聴率3.8%を記録している。

こうして、高いストーリー性を持ち込んだ本作品のドラマ作りは視聴率的な苦戦を呼んだため、第11話から大胆な軌道修正が行われた[38][37]。TBSおよび宣弘社は第3話・第4話の視聴率を見て、第6話の制作と並行して路線変更に乗り出した[36]
巨大化ヒーローへの設定変更

かくして等身大ヒーロー番組だった『シルバー仮面』は、第11話から『シルバー仮面ジャイアント』と改題され、巨大化ヒーロー番組として設定の多くが修正・変更されることとなる[注釈 6]。第11話から第13話は、宣弘社作品常連の田村正蔵が監督を務めた[40][注釈 7]

それまでの基本設定だった春日兄妹の放浪と設計図探しは、第10話で春日博士がすでに完成させていた光子ロケットのエンジンが発見され、設計図をめぐる秘密は春日博士が兄妹たちに与えた試練だったという形で終了する。そして、主人公のシルバー仮面は第11話で大破した光子ロケットのエネルギーを浴びて巨大化し、以後は巨大ヒーローとして活躍する。また、ドラマ面では、人間ドラマの部分が希薄になることを恐れた橋本洋二の意向[41]で、岸田森演ずる春日兄妹の理解者・津山博士を登場させ、春日兄妹は博士の研究所に勤務し、光子ロケットの開発および侵略宇宙人との戦いを続けることになる。巨大化したあとでも、人類の宇宙開発への批判をおこなった話(第18話、第19話など)もあり、SF色の濃いハードなドラマづくりが行われた。津山博士の娘・リカは、退場した春日はるかに近い位置づけとなり、ひとみと光三の持つ保護者的なキャラクターは後半も活かされ続けた。

オープニングも変更が加えられ、アバンタイトルの映像が春日光二の変身シーンに、主題歌の歌詞が1番から3番に、スタッフとキャストのテロップが横書きから縦書きになった。

この「ジャイアント編」は、当時の「怪獣・変身ブーム」の追い風もあって視聴率も上昇[注釈 8]。第2話から10話の平均視聴率が6.0%だったのに対し、第11話から第26話の平均視聴率は8.8%である。第16話から第18話まで3週連続で10%超えを果たした。また、テコ入れ初回の第11話から『ミラーマン』の視聴率を常時20%割れの状態に追い込んだ[35][注釈 9]

「ジャイアント編」以降、美術の池谷仙克と大木淳を除くコダイグループのほとんどの人員が本作品から離れており、演出面は宣弘社がサポートすることとなった[42][43]。池谷は、ジャイアント編では本編班と特撮班の2班体制となり、円谷プロダクション時代のノウハウを活かせたので楽になったと述べている[16]。等身大時代は毎回シルバー仮面と宇宙人とが等身大で格闘するためのセットを組んでいたため予算や時間で苦労していたという[16][44][注釈 10]。一方で、池谷は等身大時代の方が思い入れが強かったことも語っている[42]

特撮シーンには、映画『怪獣総進撃』の未使用カットなどが流用されている[46]
評価

番組は当初予定されていた全26話で終了。再放送の機会も少なく、長年にわたって幻のヒーロー的に扱われた向きもある。

製作の宣弘社でも、社内では「大人の鑑賞に耐える作品だ」という声はあったものの、社長である小林利雄は「これがカッコいいのか?」と不安であったと述懐している[21]。実際、本作品をバンコクに輸出した際、第1話を見た視聴者から「画面が暗すぎる」とクレームが殺到するなど放送当時の評価は高いものではなかった[47][注釈 11]


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