2012年、砂漠の中にザータリ難民キャンプが設置されると、1年のうちに11万人を超える町が形成された。初期段階はテントであった住居も、またたくまにコンテナに置き換えられ最低限度の居住性は確保された。国連難民高等弁務官事務所が管理にあたるが、1日当たりのキャンプ運営費は約100万ドルに上った[7]。
2016年2月、ロンドンで行われた「シリア危機に関する支援会合」の開催を前に、ヨルダンのアブドゥッラー2世国王はインタビューに応じ、国家予算の約4分の1が難民支援に使われている現状をアピール。難民急増がヨルダンの福祉サービスやインフラ、経済への大きな負担になっているとし、早かれ遅かれ「ダムは決壊する」と国際社会に警告した。この時点で63万5000人の難民がヨルダンで生活しており、さらに内戦前から居住していた100万人が加わる状態にあった[8]。 2015年、レバノンは隣国から移動する難民に対してビザ制度を導入して抑制をかける動きを見せた。ただし、レバノンからの移動は国境検問所を通過せずとも可能であり実効性は乏しい。2015年の時点で110万人を超える難民が押し寄せているが、未登録のままレバノンへ流入した者も多く実数の把握は困難なものになっている。政治的、宗教的対立が続くレバノンでは、難民に対して機動的な施策を採ることは困難な中、大量の難民が限られた国内リソースを圧迫。治安の悪化も加わりレバノン国民の不満も高まった[9]。 2017年にUNHCRが行った調査では、過去3箇月に何らかの形で支援を受けたと答えたシリア難民は3分の2を超え改善の兆しは見えるようになった。しかし、難民の生活は厳しく一人当たり1日2.87米ドル以下で暮らす家庭は58 %と半数以上であり、増加傾向を示している[10]。対応するレバノン政府の財政危機は深刻であり、難民の支援までには手が回らない状況になっている。2020年3月7日、レバノン政府は外貨建て国債の支払い延期を決めてデフォルト状態に陥り[11]、難民への支援は厳しい状況に置かれている。 2018年6月までに81人のシリア人が日本政府に難民申請を行っている。これに対して日本側は、難民の地位に関する条約の「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがある」との定義の部分を厳格に審査し、迫害の証拠がないとして多くの申請を却下。認定された者は15人に留まっている。ただし多くの者には人道配慮から在留特別許可が出ており、日本での生活が認められている[12]。
レバノンとシリア難民
日本とシリア難民
脚注[脚注の使い方]^ “シリア難民、400万人 避難民と合わせ人口の半数超に
^ “荒廃と悲惨、シリア内戦10年目に突入
^ “シリア難民の現状や生活は?内戦による被害や私たちができる支援を考えよう