分類内容循環動態
血液分布異常性ショック敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、神経原性ショックCVP低い
循環血液量減少性ショック出血性ショック、体液喪失(脱水、熱傷)CVP低い
心原性ショック(心筋性)心筋梗塞、心筋症、心筋炎などCVP高い
心原性ショック(機械性)僧帽弁閉鎖不全、心室瘤、心室中隔欠損、大動脈弁狭窄症CVP高い
心原性ショック(不整脈)各種不整脈CVP高い
閉塞性ショック心タンポナーデ、収縮性心膜炎、広範囲肺塞栓、緊張性気胸CVP高い
血圧の低下ではなく循環動態に基づく病態は以下のようにまとめることができる。CVPは中心静脈圧、PAWPは肺動脈楔入圧、SVRは全身血管抵抗、COは心拍出量、ScvO2は中心静脈血酸素飽和度、SvO2は混合静脈血酸素飽和度である。
病態分類原因となる疾患、病態CVPPAWPSVRCOScvO2またはSvO2 クリニカルアプローチとしては意識、呼吸、脈拍、血圧、体温、尿量という順に調べていくべきである。病歴とバイタルサインで大抵の場合はショックを想定することができる。ショックと診断した後はショックの原因を考えていく。まず、皮膚が温かいかを調べ、ウォームショックとコールドショックを分類する。ウォームショックであれば、アナフィラキシーショック、神経原性ショック、敗血症性ショックである。コールドショックである場合は、出血があるかどうか調べる。大量出血があれば出血性ショックを疑う。出血が認められなかったら頸静脈の怒張をみる。頸静脈の怒張がみられれば心原性ショック、なければ脱水によるショックである。 特に緊急を要する病態は5H・5Tとして暗記し、「痛み刺激にも反応せずかつバイタルサインが不安定である」症例にはいち早くこれらの除外診断を行う。 失血、脱水が原因なので外科的な止血、急速輸液、輸血を行いバイタルサインが安定化するようにつとめる。 心収縮力低下が原因なのでカテコールアミン投与、利尿薬投与、ジギタリス投与、IABP、PCPS、インペラを考慮する。安定化したら原因除去につとめる。例えば心筋梗塞による心原性ショックであればPTCAを考慮する。 感染が原因であるので、感染のコントロールや輸液が治療となる。循環虚脱がおこるとコールドショックに変化する。その場合はカテコールアミン(ノルアドレナリン)の投与を考慮する。 迷走神経の緊張亢進が原因である。これにより循環虚脱までおこるとコールドショックとなる。治療は輸液、アトロピン投与、カテコールアミン投与である。 日本国内で医療用医薬品として製造販売が承認されているアナフィラキシーショック治療薬の有効成分としては、以下のものがある。市販製品の投与経路は、いずれも静脈内、点滴静脈内、あるいは筋肉内注射である。 喘息重積発作と治療は似ている。アドレナリンの筋肉注射(商品名エピペン)が有効。アドレナリン(ボスミン0.3mg)筋注(皮下注では血管が収縮するので作用が遅くなる。経静脈投与では心室細動を引き起こすことがある。)はβ2作用で肥満細胞の脱顆粒を抑制する働きがある。アドレナリンは10分ほどで効果が出るはずなので、反応がなければ2?3回繰り返すことが必要な場合もある。また、高血圧でβブロッカー(まれにαブロッカーやACE阻害薬でも)を服用している患者ではアドレナリンが効かないことがあるので、この場合はグルカゴン1?5mgが効果があり使用される(交感神経を介さず、cAMPを増やすことで効果が出る)。ステロイドや抗ヒスタミン薬は4時間くらい効果がでるのにかかるので救急では使えないので注意が必要であるが、遷延性や二峰性の後半の反応を予防するためにステロイドを用いることはある。また、鯖を食べた場合にアナフィラキシーのような症状を示す場合もあるが、鯖の場合はヒスタミンを含んでおり肥満細胞を介するものではないので、抗ヒスタミン薬やステロイドで充分である。
心原性ショック急性心筋梗塞、弁膜症、
不整脈、心筋症↑↑↑↓↓↓↓↓
循環血液量減少性ショック急性出血、脱水↓↓↑↓↓↓↓↓↓
血液分布異常性ショック敗血症多彩多彩↓↑↓
アナフィラキシー↓↓↓↓↓↓→ or ↓
神経原性ショック↓↓↓↓→ or ↓
閉塞性ショック緊張性気胸、心タンポナーデ、
肺塞栓症↑↑or↓↑↓↓↓↓
コールドショック
出血性ショック
熱傷性ショック
心原性ショック
ウォームショック
神経原性ショック脊髄損傷のために交感神経が遮断されることによって起こる毛細血管の拡張。このほか、精神的な動揺から自律神経のバランスが狂い血圧の低下した状態も含まれる。これは、興奮して気絶するなどの現象としてみられる。
アナフィラキシーショック
エンドトキシンショック
診断
Hypovolemia:脱水
Hypoxia:低酸素血症
Hypothermia:低体温症
Hyper/Hypo kalaemia / glycemia:高・低カリウム血症、高・低血糖
H+ (acidosis):アシドーシス
Tension pneumothorax:緊張性気胸
Tamponade (cardiac):心タンポナーデ
Thrombosis (massive pulmonary embolism):肺梗塞
Thrombosis (MI):心筋梗塞
Tablet (inToxication):薬物中毒・アナフィラキシーショック
治療
循環血液量減少性ショック
心原性ショック
敗血症性ショック
神経原性ショック
アナフィラキシーショック
(合成)副腎皮質ホルモン(またはステロイド)剤
デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム
プレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム
メチルプレドニゾロンコハク酸エステル
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム
ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム
投与経路 : 静脈内または点滴静脈内投与
効能効果 : アナフィラキシーショック
薬効薬理 : 抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用、糖質代謝作用など
アナフィラキシー補助治療剤または血圧上昇剤
アドレナリン
投与経路 : 筋肉内注射
効能効果 : 蜂毒
薬効薬理 : 交感神経のα、β受容体に作用する。強心作用、末梢抵抗増大に伴う血圧上昇作用、気管支拡張による呼吸量増加作用、肥満細胞からの炎症メディエーター遊離阻害による粘膜充血抑制作用などを有する。
ノルアドレナリン
投与経路 : 点滴静脈内投与
効能効果 : 各種疾患もしくは状態に伴う急性低血圧又はショック時の補助治療(心筋梗塞によるショック、敗血症によるショック、アナフィラキシー性ショック、循環血液量低下を伴う急性低血圧ないしショック、全身麻酔時の急性低血圧など)
薬効薬理 : 交感神経のα受容体に作用して血圧上昇をもたらす。
その他の治療
副腎不全に対するステロイド療法
敗血症性ショックに伴う副腎不全では低用量のステロイド療法がおこなわれることがある。ハイドロコルチゾンで200?300mg/dayの投与が輸液負荷や昇圧剤の投与で血圧が改善されない場合に用いられることがある。SSCG2008ではステロイド投与は弱く推奨されているが適応の判断にACTH負荷試験は信頼できる試験ではないとしている。
蛋白分解酵素阻害薬
好中球プロテアーゼの中で最も強力な蛋白分解酵素が好中球エラスターゼである。好中球エラスターゼ阻害薬であるシベレスタット(エラスポール)が蛋白分解酵素阻害薬
抗サイトカイン療法
重症感染症や外科的生体侵襲を契機に、主に複数の炎症性のサイトカインが体内で過剰に産出された状態をサイトカインストームという。このサイトカインをターゲットとした薬剤が開発されてきたが臨床試験で有効性が明らかになったものはリコンビナントヒト活性化プロテインC(rhAPC)のみである。SSCG2008では重要敗血症でAPACHEスコア25点以上の場合やARDSなど2つ以上の臓器不全を合併した場合はリコンビナントヒト活性化プロテインCの使用が推奨されている。原理的には血液浄化療法にてサイトカインの除去が可能であるが比較試験による検証が不十分である。病因物質や病因関連物質を除去して病態をそのものを改善させるために血液浄化療法を施行することをnon renal indicationという。non renal indicationではCHDFを行う場合やサイトカインを吸着するPMMA膜を用いる方法がある。
エンドトキシン吸着療法
エンドトキシンを吸着するポリミキシンBを用いた方法である。血流を直接カラムに灌流させることで解毒する。
経皮的心肺補助法(PCPS)
経皮的心肺補助法(PCPS)とは遠心ポンプと膜型人工肺を用いた閉鎖回路の人工心肺で流量補助を目的とした補助循環法である。