シュロの種子は多くでき、鳥によって運ばれるためにかなり広い範囲を移動することが可能である。このため、通常シュロが生えていない場所にシュロの芽や子ジュロが生えている光景をよく目にすることができる。このように、人が故意に植えたわけでないのに芽を出し成長しているシュロのことを俗にノラジュロ又はノジュロという。ノラジュロは人家や公園、森林、墓地などの至る所に発生し、多くは群生する。現在深刻な問題は発生していないが、ノラジュロが増えることによる環境への問題が心配されている。このことからノラジュロを害樹として指定し積極的に駆除する自治体も存在する。しかし、成長した株は一見小さいように見えても地中深く根を張り幹を太らせているので、駆除には手間を要する。
通常、シュロは寒さに弱く小さな株は越冬が出来ないと言われてきたが、近年の温暖化による影響で冬が越せる確率が上昇し、子ジュロの生存率が上がったことにより東北地方でもノラジュロの群れを見ることが出来るようになっている。
利用シュロ皮(シュロの樹皮)
庭園で装飾樹としてよく用いられる。繊維や材を採るために栽培が盛んで、日本各地に植えられているが、和歌山県が最も多く植えられているという[1]。日本人にとってシュロはソテツと並んで異国情緒を感じさせる植栽として愛好され、寺や庭園に植えられたと考えられている[5]。庭園用にはトウジュロが用いられてきたが、ワジュロは実用に栽培されることが多く、両種は似ているので混じって使われている[6]。
シュロ皮を煮沸し、亜硫酸ガスで燻蒸した後、天日で干したものは「晒葉」と呼ばれ、繊維をとるのに用いられる。シュロ皮の繊維は、腐りにくく伸縮性に富むため、縄(棕櫚縄)や敷物(マット)、タワシ、篩の底の材料などの加工品とされる[1]。又、シュロの皮を用いて作られた化粧品も発売されている。葉ももっぱら敷物や箒(棕櫚箒)などに使われる[1]。繊維は菰(こも)の材料にもなる[7]。
樹皮の繊維層は厚くシュロ縄として古くから利用されている[7]。棕櫚縄は園芸用には極めて重要で、水に強くて腐りにくく、細くても切れにくいので重宝がられている[1]。タワシやマットに使われるのも、水に強くて水はけがよい性質によるものである[1]。
ウレタンフォームの普及以前は、金属ばねなどとの組み合わせで、乗り物用を含む椅子やベッドのクッション材としても一般的であった。
また、材は仏教寺院の梵鐘をつく撞木に使われたり、床柱に利用され、寺に植えられることも多かった[1]。 シュロは日本の温帯地域で古来より親しまれた唯一のヤシ科植物であったため、明治以降、海外の著作に見られる本来はシュロとは異なるヤシ科植物を「シュロ」と翻訳していることが、しばしば認められる。特にキリスト教圏で聖書に多く記述されるナツメヤシがシュロと翻訳されることが多かった。例えば『ヨハネによる福音書』12章13節において、エルサレムに入城するイエス・キリストを迎える人々が持っていたものは、新共同訳聖書では「なつめやしの枝」になっているが、口語訳聖書では「しゅろの枝」と翻訳し、この日を「棕櫚の主日」と呼ぶ。現在、棕櫚の主日ないし「棕櫚の日曜日」は、復活祭の1週間前の日曜日が該当する[8]。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィキメディア・コモンズには、ワジュロ 西洋絵画において、シュロ(実際はナツメヤシなど)は勝利および殉教を象徴する図像として描かれる。元来、戦争に勝利した軍隊が凱旋行進の際に持ち歩く姿が描かれていたが、初期キリスト教会はこれを死に対する信仰の勝利と読み替え、殉教者を意味する持物としてとりいれ、定着した。 「棕櫚の花」は夏の季語である。
文化
翻訳語としてのシュロ
西洋絵画
家紋』に「しゆろの丸は富士大宮司」とあり、富士氏の分かれともいわれる米津氏もシュロを用いている。
季語
出典^ a b c d e f g h i j k l 辻井達一 1995, p. 286.