シャープペンシル
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これ以前の繰出鉛筆はセルロイド製であり、壊れやすく実用的ではなかったが、早川式繰出鉛筆は美しく丈夫な金属軸であり、やがて輸出用にも人気を得た。翌1916年には更に細い芯を使用可能に改良し、福井商店(現ライオン事務器)の福井庄次郎の助言により「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」と命名された。早川式繰出鉛筆は1.15mm径の芯が使用できた[17][18]ほか、1920年登録の実用新案(登録実用新案第54357号)では、従来根元まで摩耗した残芯の除去が困難であったのを、道具を使わず容易に取り出せるよう改良した点を新規性としている[15]。早川は試作品を含め様々な多機能のものも製作しており、体温計、カレンダー、鋏、方位磁石、時計、ライターなどを組み込んだ[19]。早川式繰出鉛筆を製造していた早川兄弟商会は1923年関東大震災で工場を焼失し、借金弁済のため筆記具事業を取引先に譲渡して解散、早川は翌1924年に早川金属工業研究所(現シャープ)を開業して家電事業へ参入したが、筆記具にちなんだ「シャープ」の名は同社のブランド名や社名として使われるようになった[5]
ノック式発明後

1960年、大日本文具(現在のぺんてる)が0.9mm径ポリマー芯と現代的なノック式シャープペンシル「ぺんてるシャープ」「ぺんてる鉛筆」を開発、1962年には0.7mmおよび0.5mm芯が、1968年には0.3mm芯が開発された[20]。これらの技術革新によって、漢字筆記に適した細芯や本体の低コスト化が実現し、シャープペンシルの一般化が進んだ[15][21][22]。ポリマー芯開発のきっかけは焦げたおにぎりだったという[23][24]

パイロットは振って出るシャープペンシル「2020シリーズ」を1978年に発売し、この「フレフレ機構」は90年代のヒット作「ドクターグリップ」にも採用されている[25]

1980年にはゼブラが1本100円の製品を初めて発売した[26]

2008年に自動で回転する三菱鉛筆クルトガ」が発売され大ヒットすると[27]プラチナ万年筆「オ・レーヌ」、ぺんてる「オレンズ」、ゼブラ「デルガード」など、各社とも芯先にメカニカルな仕組みを組み込んだシャープペンシルを次々と発売した。
構造
ノック式(ラチェット式)分解したところ

表現の道具箱 シャープペン博士のディープ講座【Lesson 1】「芯が出てくる仕組み」(ぺんてる/土橋正、2016年9月2日)

一般的なシャープペンシルには後端に替芯補充口の蓋を兼ねた押す部分(ノックボタン)があり、これを押すことにより、先端より芯が1mm弱程度繰り出される。この蓋を取ると、消しゴム、さらに芯を入れるパイプ(芯タンク)がある。消しゴムは芯タンクの栓の役目も兼ねている。

芯タンクと連なる内部機構の先端には、芯を固定するためのチャックと、チャックの開閉タイミングをコントロールするためのチャックリングがあり、外装先端の口金内部にはチャック開放時に芯を止めるためのパッキン(芯戻り止め)が付いている。これらがノック動作中に連動することで芯を繰り出すことができる。[28][29][30][31]
ノックを押すと、内部機構が前進する。チャックに固定された芯も前進する。

一定距離まで進むと、チャックリングが外れ、チャックが開放される。芯は芯戻り止めで保持される。

ノックを離すと、ばねで内部機構が後退する。

一定距離まで戻ると、チャックリングが嵌り、チャックが閉鎖して、芯が固定される。

一般的なノックボタンは後端にあり、筆記時には持ち替えて操作するが、持ち替えずに操作できるよう改良したものもある。軸の側面にノックボタンがあるサイドノック式や、振ることでノック同様の操作ができる振り子式、軸を握り浅く曲げることでノック同様の操作ができる中折れ式(ボディノック式)などがある (後述)。
回転式(スクリュー式・繰り出し式)

軸の後端などにあるノブを回転操作して芯を繰り出す。芯を後部から押し出す構造を持った単動式や、芯の固定部を設けて出し入れできる複動式がある。1960年代以前に主流であった方式[15]ヤード・オ・レッドのように伝統を受け継ぐかたちでこの機構を使い続けている会社もある。この機構の場合、部品の一部を交換すれば同じペンで太さの異なる芯を使用することが可能である。

複動式である早川式繰出鉛筆の内部構造を例に取ると、螺旋状のスリットを持つ案内筒と、軸方向にスリットを持つ回転筒が組み合わされており、ノブで回転筒を回転させると、両スリットが重なって見える穴が前後に移動する構造になっている。この穴に芯の固定部の突起が嵌められているため、芯が前後に繰り出される[15]
芯ホルダー(ドロップ式)

ノックボタンで芯を固定するチャックが開放され、手動で芯の露出長さを調整するもの。多くは太芯用(2.0mmなど)であり、よく製図に用いられる。芯の先端は芯研器で形を整えて使用する[32][10][30][33]。詳細は「芯ホルダー」を参照
シャープペンシルの芯
芯の硬さ

芯の硬さは鉛筆と同様に、ヨーロッパや日本ではHやBなど、北米では数字で表される。

ヨーロッパ式は日本では日本産業規格(JIS)で定められており、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H、8H、9Hに準拠するものである。メーカーによってはHBのラインナップを拡充し、Bに近いソフトHB(こいめHB)、Fに近いハードHB(かためHB)といった硬さの商品を発売している。

なお鉛筆の硬度幅もJIS規格上は同等(6Bから9H)[34]であるが、鉛筆では規格を超えて10Bから10Hまで一般に市販されている[35]
芯の太さ

直径はそのシャープペンシル本体に合ったものを使用しなければならない。芯の直径はJISでは0.3mm(0.35mm)、0.5mm、0.7mm、0.9mm(1.0mm)、2.0mmが定義されており、これらは製図にも適する公比√2の等比数列(ISO 128-20およびJIS Z 8312に定義の線幅)に近く構成されている。その他には0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.92mm、1.1mm、1.18mm、1.3mm、1.4mm等がある。0.1mmは、ぺんてるが参考出品をしたことがある[36][37]

日本では0.5mmが、アメリカでは0.5mmや0.7mmが一般的に使われる[11][17]
芯の長さ

多くの場合、芯の長さは60mmである。また、太い芯の場合は90mm、110mm、130mmなどがあるが、粘土芯だと50mm[38]しか実用化されていない。

芯の長さは60mm、残芯は15mmと見積もったとする。残芯を除外した場合1mm出して5m書けるとすると、芯1本で約225m筆記できる[39]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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