シャルル・フーリエ
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フーリエの社会思想は主に、文明諸国民から忘却ないしは軽視されてきた[5]二つの部門、「農業組合」と「情念引力」に関する研究を最重要視している[6]。フーリエは、「産業主義の批判」と「理想的協同体の提案」、「自然的欲望の肯定」について詳細に研究している。当時のヨーロッパは産業革命勃興期であり、国家・政府が産業主義を推奨し、その庇護を受けた産業者(資本家)が賃金労働者をとことんまで搾取するという光景が至るところに存在した。また、そのような「国家」の暴力に対して「革命」の暴力もまた悲惨な光景を生み出していた。革命と称する破壊と暴力によって何か益を生み出すかといえば、(フーリエ自身が体験したように)財を失った多数の貧民や浮浪者、破壊されつくした街を生み出しつつあり、これでは本来の「革命」の目的からすると悪循環であった。

そこでフーリエが提案したのは「アソシアシオン」の創造(フーリエの用語で言えば「ファランジュ」)であった。その協同体は国家の支配を受けず、土地や生産手段は共有とした上で、1800人程度を単位として数百家族がひとつの協同体で共同生活をする。基本的に生活に必要なものは自給自足とする。また、労働活動を集約することで労働時間を短縮する。といった提案であった。このようなファランジュの中心には、その建物だけでも自生自立しうる「ファランステール(英語版)」という集合機能と集住機能をもったパビリオンが設定された。そこまでは後の社会主義共産主義思想に類型が認められるが、フーリエ独自の観点としてさらに「自然的欲望の肯定」と女性の権利の尊重[7]が認められる。
評価

カール・マルクス、あるいはその継承者によって「空想的社会主義」と片付けられ歴史の記憶に忘れ去られようとしていたところで、フランスのシュールレアリスム系の文学者や、20世紀以降の哲学者、思想家によって再発見・再評価された。例を挙げると、思想家ではロラン・バルトヴァルター・ベンヤミンパサージュ論)、ピエール・クロソウスキージル・ドゥルーズ、文学者ではアンドレ・ブルトンオクタビオ・パスなどがフーリエの文章と思想から影響を受け、あるいは賞賛した。

ちなみに、フリードリヒ・エンゲルスは自らの著作などでフーリエを「偉大な批評家」として大きく評価しており、「科学的社会主義」を標榜したマルクス・エンゲルスによってフーリエの思想が「空想的社会主義として片付けられた」という意見は、一部誤解を含むことになる。
邦訳著作

膨大な著作のうち、現在、日本において邦訳出版されているシャルル・フーリエの著作は以下の作品である。

『産業の新世界』、福島知己訳、作品社、2022年

『愛の新世界』、
福島知己訳、作品社2006年、増補新版2013年。

『四運動の理論〈上〉』、巖谷國士訳、現代思潮新社、古典文庫、2002年

『四運動の理論〈下〉』、巖谷國士訳、現代思潮新社、古典文庫、2002年

「産業的協同社会的新世界」、田中正人訳、『世界の名著 <続8>』、中央公論社、1975年。

参考文献

シモーヌ・ドゥブー、『フーリエのユートピア』、
今村仁司監訳、平凡社1993年

ジョナサン・ビーチャー、『シャルル・フーリエ伝―幻視者とその世界』、福島知己訳、作品社2001年

H・ベッカー、『フーリエとブルトンドイツにおけるシュルレアリスム研究序説』、酒井昌美訳、啓文社1993年

石井洋二郎、『科学から空想へ』、藤原書店2009年

ジャン・ルフラン、『十九世紀フランス哲学』、川口茂雄監訳、長谷川琢哉・根無一行訳、白水社文庫クセジュ、2014年

カール・J. ガーネリ、『共同体主義―フーリエ主義とアメリカ』、宇賀博訳、恒星社厚生閣1989年

ロラン・バルト、『サド、フーリエ、ロヨラ』、篠田浩一郎訳、みすず書房、1990年、新版2002年。

脚注^ シャルル・フーリエ、『四運動の理論〈上〉』、巖谷國士訳、現代思潮新社、古典文庫、2002年、11頁。
^ 同上、同頁
^ シャルル・フーリエ、『四運動の理論〈下〉』、巖谷國士訳、現代思潮新社、古典文庫、2002年、155頁。
^ シャルル・フーリエ、『四運動の理論〈上〉』、巖谷國士訳、現代思潮新社2002年、62頁。
^ シャルル・フーリエ、『四運動の理論〈上〉』、巖谷國士訳、現代思潮新社、古典文庫、2002年、13頁。
^ 同上、同頁。
^ シャルル・フーリエ、『愛の新世界』、なおフーリエは「フェミニスム」という言葉を史上初めて用いた人物とされている。

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