シドニー・ポワチエ
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邦題「招かれざる客」)」があるが、簡単に言えば、ポワチエが各作品で演じる黒人男性たちは、進歩的な白人なら「夕食の席に招きたい」と思わせるような、非の打ちどころのない理想的な黒人だった[9]

1950年代からの公民権運動の高まりの中、「白人にとって理想的な黒人」を演じ続けたポワチエだが、1965年、ついにワッツ暴動によって、今まで白人から暴力を受け続けてきた黒人が、白人に対して暴力をふるう時代がやってきた。こうしたポワチエの演じる黒人像は、時代に合わないものとなっていく[10]

1964年(昭和39年)10月、『野のユリ』の公開のため来日。
功績夜の大捜査線』(1967年)

しかし、こういった制限の中であっても、黒人スター俳優として、それまでのハリウッド映画における黒人俳優の地位を向上させたポワチエの功績は大きい。1967年『招かれざる客』、『夜の大捜査線』『いつも心に太陽を』と社会的かつ人種差別問題を真正面から提起する題材に挑み、多くの支持を獲得した。こうして黒人俳優という道を開拓したのである。

公民権運動が公民権法の制定という形で一段落を見せると、ハリウッドの白人資本は、白人映画の脇役扱いしかされない黒人スターに不満を持っていた黒人観客向けに「ブラックスプロイテーション」を濫作するようになった。これらは黒人がヒーローを演じ、白人は悪人か脇役として扱われるもので、ポワチエの時代とはまったく別次元のものだった。そしてこれらは黒人たちの圧倒的な人気を得るようになるのである。次第にポワチエの演じる黒人は古いものとなり、スクリーンでの活躍は激減していく。ハリウッド白人資本下での黒人俳優の扱われ方が変わるとともに、ポワチエの役割は終わったのである。

1970年代以降はポール・ニューマンらとプロダクションを設立し、監督業にも挑んでいる。その後、ポワチエの拓いた黒人スターの道を継承して多くの演技派の黒人俳優が台頭、スクリーンでは違和感なく黒人ヒーローが活躍するようになった。2001年に贈られたアカデミー名誉賞は、こうしたポワチエの功績に対するアメリカ白人映画界の敬意を象徴している。

2009年には大統領自由勲章を受章した。彼以外の受章者にはアメリカ初の女性最高裁判事サンドラ・デイ・オコナーや理論物理学者のスティーブン・ホーキングデズモンド・ツツ元大主教など人種や性別、身体障害などでハンディを負ったマイノリティの人々が選ばれており、授章者であるバラク・オバマ大統領は「人の気力は、人種や性別、身体の強弱で制限されるものではない」と賞賛しており、社会的ハンディを克服した偉人の一人に数えられている。
晩年

近年の主な代表作は1988年の主演作『リトル・ニキータ』や『影なき男』でのタフガイ刑事、豪華スターが結集した1997年『ジャッカル』でのFBI副長官役、2001年に主演したTV作品『希望の大地』での知的で温厚なレンガ職人などが名高い。1990年代後半から2000年代以降はTVドラマでの活躍を軸に演技を披露、更なる新境地を開いている。中でも南アフリカアパルトヘイト時代の終焉を描いた1997年の大型TVドラマ『マンデラとデクラーク』で、主人公ネルソン・マンデラを演じた。また1998年主演作『デビッド&リサ?心の扉?』では、心に傷を持つ少年と少女を優しくかげながら見守るミラー医師役で抑制のきいた演技をみせた。

一方で、娘のシドニー・ターミア・ポワチエとは、製作・主演の異色スリラー『フリー・オブ・エデン』で父娘共演を果たしている。2010年代以後も、数多くのTV作品に精力的に出演を続けている。

1997年から10年間、バハマ駐日特命全権大使に任命された経験もあり(非常勤のため、日本への赴任はしていない)[11]、人望を買われて政界への進出を請われたが、本人は拒んだともいわれる。

2012年ごろに転倒事故で頭を打った[12]

2022年1月6日、米ロサンゼルスの自宅で死去した[13]
私生活

1950年に結婚、4人の娘がいるが1965年に離婚。

1976年には女優のジョアンナ・シムカスと再婚し二女がいる。そのうちのシドニー・ターミア・ポワチエは女優。
主な出演作品

公開年邦題原題役名備考
1950復讐鬼

No Way Outルーサー・ブルックス
1951泣け!愛する祖国よ
Cry, the Beloved CountryMsimangu
1955暴力教室
Blackboard Jungleグレゴリー・W・ミラー
1957暴力波止場
Edge of the cityトミー・テイラー
黒い牙
Something of ValueKimani Wa Karanja
南部の反逆者
Band of Angelsラウル
1958手錠のままの脱獄
The Defiant Onesノア・カレン英国アカデミー賞 外国男優賞 受賞
ベルリン国際映画祭 銀熊賞 (男優賞) 受賞
1959ボギーとベス
Porgy and Bessボギー
ヴァージン・アイランド
Virgin Islandマーカス
1960戦う若者たち
All the Young Menエディ
1961レーズン・イン・ザ・サン
A Raisin in the Sunウォルター・リー・ヤンガー
パリの旅愁
Paris Bluesエディ・クック
1963野のユリ
Lilies of the Fieldホーマー・スミスアカデミー主演男優賞 受賞
ゴールデングローブ賞 受賞
ベルリン国際映画祭 銀熊賞 (男優賞) 受賞
長い船団
The Long Shipsエル・マンスー


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