「エンジェルダスト」は、首領(メイヨール)こと海原神(かいばら・しん)が率いる犯罪組織「ユニオン・テオーペ」が組織の傭兵に投与するために開発した麻薬で、原作では展開上きわめて重要な役割を果たす。しかし、アニメ版ではこれらの設定が完全に省略されており、エンジェルダスト絡みの原作は全てアニメの脚本から外されていた。
2023年の劇場版「AD」公開前後に初めて明らかにされたのは、これまで、制作側がテレビアニメ版で麻薬の話題を出すことを自主規制していたという点である。
ただし、「AD」はアニメ版の「最終章」と位置づけられており[注釈 7]、『シティーハンター』というアニメ作品を前に進めるために、思い切ってこれらの要素をストーリーに入れ込むことを決めたという[3]。
「海原神」をアニメ版に登場させた経緯について「AD」総監督のこだまは、原作者の北条と会話をするたびに、北条が「海原神」の名前を出していたため、もし次回作があるなら海原を登場させることや、獠の過去にも触れざるを得ないと考えたと述べている[3]。
原作者の北条は、アニメ制作側のこの判断について「原作で海原が登場することで物語が終盤へと向け動き出すし、TVシリーズでは海原やエンジェルダストの設定を省く形で制作されていたので、今このタイミングで原作の物語に寄せるのもありじゃないかなと思いました。」と述べている[4]。 主題歌陣は、当時アニメーションとあまり縁のなかったEPIC・ソニー(当時)にサントラを依頼した。特に、『1』前期の小比類巻かほるとTMは両方ともオリコンでトップ10入り(オリコン最高位は小比類巻が8位、TMが9位)を果たした。オープニング・エンディングを別々のアーティストが担当し、それが両方ともトップ10入りしたのは当時のアニメ界では初めてのことであった。OVAや映画では、ビクター音楽産業(当時)がサントラを担当した。 全シリーズに共通しているのは、「本編のラストシーンからエンディングテーマ曲のイントロがフェードインしてきて、そのままCMを間に挟まずにエンディングテーマ曲に突入する」というスタイルである。これは当時のテレビアニメの定番である「本編が終わると一旦CMが入ってエンディングテーマになる」スタイルを覆す、画期的なことだった。諏訪道彦はこの方式を「聖母たちのララバイ方式[注釈 8]」と呼んでおり、本作はこれをテレビアニメで初めて採用した作品である[7]。また、当時のテレビアニメはモノラル放送が通常であった中、本作はオープニングテーマとエンディングテーマのみステレオ放送に切り替えるという試みがなされていた[注釈 9]。 TVアニメ第1シリーズのエンディングテーマとして用いられたTMの「Get Wild」は、上記の通り、当時としては画期的な演出を用いて流されたこともあり、本作を象徴する代表曲として、その後のTVシリーズでもしばしば挿入曲として用いられ、SP2・3や21世紀の映画エンディングテーマになっているほか、TM NETWORKの代表曲にもなった(楽曲としての詳細な解説は「Get Wild」の項目を参照)。後の作品への影響としては、野崎圭一が『機動戦士ガンダムSEED』のエンディングテーマとして用いられたSee-Sawの「あんなに一緒だったのに」の演出にあたって、本作の「Get Wild」のスタイルを意識したと語っている[8]。 本作のメインスタッフは、東京ムービー新社の『新ルパン三世』班(監督のこだま兼嗣、演出の港野洋介、キャラクターデザインの神村幸子、作画監督の北原健雄など)が数多く参加した。『アリオン』『機動戦士ガンダムΖΖ』での実績を買われ、キャラクターデザインとして内定していた神村が夫であるこだまをサンライズ側に紹介したことで、彼が本作品の監督を務めることとなった。なお、第3話「愛よ消えないで! 明日へのテンカウント」は、こだまが現場に入る前にパイロット版として製作されており、高橋良輔が監修を行っている[9]。 東京ムービー新社時代のこだまの師匠格にあたる北原は、この頃すでにアニメーターとして20年以上のキャリアがあるにもかかわらず、この作品がサンライズ作品初参加であった。これまでに『元祖天才バカボン』『新ルパン三世』といった、総話数100話以上の作品の作画監督を手掛けてきた北原は、本作品では総作画監督としてその経験と実力を存分に発揮し、作画面で大いに貢献した。なお、この実績が評価されたことにより、『機動戦士ガンダムF91』での作画監督を当時のサンライズ社長であった山浦栄二から直々に依頼された[10]。同じくこだまの師匠格である港野は、『無敵超人ザンボット3』第1話Bパートの原画以来、数年ぶりのサンライズ作品への参加となった。本作品ではこだま監督の助監督的な位置付けと言えるポジションで活躍。槇村香、野上冴子、美樹といった重要なキャラクターが初登場するエピソードの絵コンテ、演出、構成を担当したり、最終回の前後編(または前中後編)における構成と演出をこだまと分担しながら担当している。 各話については、サンライズの『蒼き流星SPTレイズナー』班、脚本の星山博之、外池省二、平野靖士、演出の今西隆志、加瀬充子、主力作画スタジオはアニメアールから作画監督の谷口守泰、原画の吉田徹、逢坂浩司、沖浦啓之、小森高博、木村貴宏。
音楽について
制作スタッフ