シティーハンター_(アニメ)
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さらにアニメ版のオリジナルキャラクターのデザインも全て北条本人が行っており、シナリオ・絵コンテのチェックも北条本人が行っている。この手法は、本作のアニメ版映画が2019年に再起動した後も継続している。
原作とアニメ版の相違点

アニメ版の内容の大半は、原作と違って1つのエピソードを1話完結か前編・後編と構成したものである。原作がオムニバス形式であるため、アニメオリジナルのエピソードも多く、全140話中75話がオリジナル作品となっている。そのため、「獠と香が敵対する」といった独創性のあるエピソードも生まれた。

原作をベースにした話も、単発キャラクターの設定や話の結末が原作と異なる時が度々あった。さらに、野上冴子、野上麗香、麻生かすみ、海坊主などの準レギュラー格のキャラクターが原作では登場しなかった話にも登場することがあり、原作より出番が増えている。海坊主はアニメの方で、原作よりも先に準レギュラーキャラクターになっている。


放送時間帯は子供も見ることが想定されたため、アニメ版で実際に獠が「
もっこり」させているシーンはなく、セリフとして登場するに過ぎない。そのため、もっこりが核となる場面などは設定が変更されたり違う場面に変更されたりしている。アニメ化に際しこの点で苦心したことは、本作の監督を長年にわたり務めているこだま兼嗣が後に文庫版の解説で語っている[2][注釈 3]


初期および後期のエピソードの一部[注釈 4]、『獠と恐るべき似た者姉妹!!』(原作第31巻に収録)以降の連載作品はアニメ化されておらず、特に原作では後半ストーリーの主軸となる「ユニオン・テオーペ」およびその関連人物は原則登場しない(理由については「#アニメ版における「エンジェルダスト」「ユニオン・テオーペ」「海原神」の扱い」を参照。)。


原作連載終了後に放送されたテレビスペシャル版は、いずれもアニメオリジナルの内容である。


原作者の北条は「獠の飛行機恐怖症」という設定を早い時期から考えていたが[注釈 5]、アニメ制作側との意思疎通が不十分であったことから、『1』第2話や第16話では獠がセスナ機に乗っている場面が放送されており、依頼人が旅立つ際は空港で飛行機を見送るエンディングシーンも頻繁に登場した[注釈 6]

監督のこだま兼嗣は原作文庫版1巻のあとがきで、このことを「原作を裏切るような大きなミス」と述べ、深く反省している。原作者の北条は「獠の飛行機恐怖症の話は、TVシリーズが終わるまで、原作では描かないようにします」と述べ、アニメ版への配慮から、『2』が終了するまでは原作で描かれなかった。さらに、獠が恐怖心を持っているのは飛行機の中でも特にジェット機だという設定を原作で追加した。このことから、こだまはアニメ制作側のミスを原作でフォローした作者の北条に感謝している。



原作では獠は喫煙者だが、アニメでは喫煙している描写はない。


『1』では放送当時提供スポンサーだった浅田飴の新商品「固形浅田飴パッション(箱)」がアニメの随所に登場している。現在のアニメ制作では資金調達のために必須となっている「プロダクトプレイスメント」の先駆けである。

アニメ版における「エンジェルダスト」「ユニオン・テオーペ」「海原神」の扱い

「エンジェルダスト」は、首領(メイヨール)こと海原神(かいばら・しん)が率いる犯罪組織「ユニオン・テオーペ」が組織の傭兵に投与するために開発した麻薬で、原作では展開上きわめて重要な役割を果たす。しかし、アニメ版ではこれらの設定が完全に省略されており、エンジェルダスト絡みの原作は全てアニメの脚本から外されていた。

2023年の劇場版「AD」公開前後に初めて明らかにされたのは、これまで、制作側がテレビアニメ版で麻薬の話題を出すことを自主規制していたという点である。

ただし、「AD」はアニメ版の「最終章」と位置づけられており[注釈 7]、『シティーハンター』というアニメ作品を前に進めるために、思い切ってこれらの要素をストーリーに入れ込むことを決めたという[3]

「海原神」をアニメ版に登場させた経緯について「AD」総監督のこだまは、原作者の北条と会話をするたびに、北条が「海原神」の名前を出していたため、もし次回作があるなら海原を登場させることや、獠の過去にも触れざるを得ないと考えたと述べている[3]

原作者の北条は、アニメ制作側のこの判断について「原作で海原が登場することで物語が終盤へと向け動き出すし、TVシリーズでは海原やエンジェルダストの設定を省く形で制作されていたので、今このタイミングで原作の物語に寄せるのもありじゃないかなと思いました。」と述べている[4]
音楽について

主題歌陣は、当時アニメーションとあまり縁のなかったEPIC・ソニー(当時)にサントラを依頼した。特に、『1』前期の小比類巻かほるとTMは両方ともオリコンでトップ10入り(オリコン最高位は小比類巻が8位、TMが9位)を果たした。オープニング・エンディングを別々のアーティストが担当し、それが両方ともトップ10入りしたのは当時のアニメ界では初めてのことであった。OVAや映画では、ビクター音楽産業(当時)がサントラを担当した。

全シリーズに共通しているのは、「本編のラストシーンからエンディングテーマ曲のイントロがフェードインしてきて、そのままCMを間に挟まずにエンディングテーマ曲に突入する」というスタイルである。これは当時のテレビアニメの定番である「本編が終わると一旦CMが入ってエンディングテーマになる」スタイルを覆す、画期的なことだった。諏訪道彦はこの方式を「聖母たちのララバイ方式[注釈 8]」と呼んでおり、本作はこれをテレビアニメで初めて採用した作品である[7]。また、当時のテレビアニメはモノラル放送が通常であった中、本作はオープニングテーマとエンディングテーマのみステレオ放送に切り替えるという試みがなされていた[注釈 9]

TVアニメ第1シリーズのエンディングテーマとして用いられたTMの「Get Wild」は、上記の通り、当時としては画期的な演出を用いて流されたこともあり、本作を象徴する代表曲として、その後のTVシリーズでもしばしば挿入曲として用いられ、SP2・3や21世紀の映画エンディングテーマになっているほか、TM NETWORKの代表曲にもなった(楽曲としての詳細な解説は「Get Wild」の項目を参照)。後の作品への影響としては、野崎圭一が『機動戦士ガンダムSEED』のエンディングテーマとして用いられたSee-Sawの「あんなに一緒だったのに」の演出にあたって、本作の「Get Wild」のスタイルを意識したと語っている[8]
制作スタッフ

本作のメインスタッフは、東京ムービー新社の『新ルパン三世』班(監督のこだま兼嗣、演出の港野洋介、キャラクターデザインの神村幸子、作画監督の北原健雄など)が数多く参加した。『アリオン』『機動戦士ガンダムΖΖ』での実績を買われ、キャラクターデザインとして内定していた神村が夫であるこだまをサンライズ側に紹介したことで、彼が本作品の監督を務めることとなった。なお、第3話「愛よ消えないで! 明日へのテンカウント」は、こだまが現場に入る前にパイロット版として製作されており、高橋良輔が監修を行っている[9]

東京ムービー新社時代のこだまの師匠格にあたる北原は、この頃すでにアニメーターとして20年以上のキャリアがあるにもかかわらず、この作品がサンライズ作品初参加であった。これまでに『元祖天才バカボン』『新ルパン三世』といった、総話数100話以上の作品の作画監督を手掛けてきた北原は、本作品では総作画監督としてその経験と実力を存分に発揮し、作画面で大いに貢献した。なお、この実績が評価されたことにより、『機動戦士ガンダムF91』での作画監督を当時のサンライズ社長であった山浦栄二から直々に依頼された[10]。同じくこだまの師匠格である港野は、『無敵超人ザンボット3』第1話Bパートの原画以来、数年ぶりのサンライズ作品への参加となった。本作品ではこだま監督の助監督的な位置付けと言えるポジションで活躍。槇村香、野上冴子、美樹といった重要なキャラクターが初登場するエピソードの絵コンテ、演出、構成を担当したり、最終回の前後編(または前中後編)における構成と演出をこだまと分担しながら担当している。

各話については、サンライズの『蒼き流星SPTレイズナー』班、脚本の星山博之、外池省二、平野靖士、演出の今西隆志加瀬充子、主力作画スタジオはアニメアールから作画監督の谷口守泰、原画の吉田徹逢坂浩司沖浦啓之小森高博木村貴宏


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