シアン化カリウム
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@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}体内でチオシアン酸代謝され、30 - 60mg-CN/hであれば、肝臓で解毒できるとされる。慢性中毒を起こす最小中毒量(TDL0)14mg/kg、許容濃度 5 mg-CN/m3。長期又は反復曝露による甲状腺腎臓肝臓脾臓中枢神経系の障害のおそれがある(参考: ラット経口 LD50 5 - 10mg/kg)[要出典]。

胃酸により生じたシアン化水素が呼吸によってから血液中に入り、重要臓器を細胞内低酸素により壊死させることで個体死に至るとされる。初期症状は頭痛・眩暈・頻呼吸・頻脈であり、重症例では固定散瞳・意識障害・昏睡・痙攣・無呼吸・徐脈・血圧低下・チアノーゼといった中枢神経症状と循環器系症状が早期から出現するとされる[3]。致死量を超えている場合、適切な治療をしなければ15分以内に死亡する。死因は静脈血が明赤色(一酸化炭素中毒と同じ)などから判断できる。これは、シアン化カリウムは水溶液中で電離してカリウムイオンとシアン化物イオンとなるが、このシアン化物イオンは一酸化炭素と同様にヘム鉄配位結合して酸素との結合を阻害することにより、呼吸による酸素の供給ができなくなるためである[要出典]。

また、皮膚から吸収することによっても中毒を起こす。さらには細菌以上の動物ミトコンドリアシトクロム酸化酵素 (COX) 複合体と結合・封鎖し、電子伝達系を阻害することでATP生産量を低下させ細胞死を引き起こすとされる。この点で植物ミトコンドリアはシアン耐性経路であるAOX酵素 (alternative oxidase) を備えるため耐性を持つ[要出典]。

水生生物への毒性が非常に強く、水質の環境基準では検出されないこと(定量限界0.1mg/L未満)、一律排水基準では1mg/Lとされている。分析法としてはJIS K0102に吸光光度法とイオン電極法が規定されているが、いずれも蒸留操作が必須で熟練と操作時間を要する。そのほか、自動分析装置が各社にて開発されている[要出典]。
治療法

塩類の摂取による中毒は、シアン化水素ガスの吸入によるものに対し進行が遅く、救命できる可能性が高い。ただし、口同士が触れる人工呼吸は厳禁である[4]

拮抗剤としては、亜硝酸アミル、亜硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム(米国ではこれらのキット)があるが、国内では亜硝酸ナトリウムの製品はなく、院内調製となる[2]。亜硝酸はメトヘモグロビンを形成させ、これにCNを結合させることにより、cytochrome oxidaseへの結合と競合させ、チオ硫酸はCNと結合して尿中に排泄可能なチオシアン酸を形成させることにより、CNの排泄を促進させる[2]

シアン化物#シアン化合物の解毒剤も参照のこと。
廃棄処理

シアン含有廃液の処理法としては、高濃度では電気分解法や燃焼法、中・低濃度ではアルカリ塩素法のほか、オートクレーブによる熱加水分解法、鉄・亜鉛塩による沈殿法(紺青法・亜鉛白法)などがあり、一般的にはアルカリ塩素法が広く用いられる。
アルカリ塩素法
一次反応:水酸化ナトリウム次亜塩素酸ナトリウムによりpH10-10.5、ORP+300-350mVとし、シアン酸ナトリウム塩化ナトリウムに分解する。 CN − + ClO − ⟶ CNO − + Cl − {\displaystyle {\ce {{CN^{-}}+{ClO^{-}}->{CNO^{-}}+Cl^{-}}}} 二次反応:塩酸によりpH7.5 - 8.5、ORP+600mV超とし、二酸化炭素窒素アンモニウムイオン塩化ナトリウムに分解する。 CNO − + H 2 O + H + ⟶ CO 2 + NH 4 + {\displaystyle {\ce {{CNO^{-}}+{H2O}+{H^{+}}->{CO2}+NH4^{+}}}} 共存金属イオンによってはシアノ錯体形成により効率が低下する(銅・亜鉛は容易、ニッケル・銀は困難、鉄・コバルト・金は不可)
紺青法・亜鉛白法
鉄や亜鉛イオンを加え、シアン化物イオンと難溶性のシアノ錯体を形成、沈殿分離させる。薬品・設備ともに安価だが、沈殿したシアノ錯体含有スラッジの処分が問題となる(漏洩防止の緊急処置用としては有効)
太陽光分解
少量の鉄シアノ錯体溶液などは、ほうろう引きの浅いバットに入れ、数日間直射光に晒すと分解して水酸化鉄になる。塩化鉄溶液を滴下して紺青が生じなければ、分解終了。
その他

摂取して胃酸と反応するとアーモンドまたはオレンジ臭、アンズ臭、臭を発するという。ここでいうアーモンド臭とは、収穫前のアーモンドの臭いであるが、遺伝的に半数の人は感知できない[4]。また、シアン化カリウムは、空気より軽く高い揮発性を有するため、効果的濃度以上であれば高い殺傷力を有するが、それ以下では効果がない[4]

青酸カリによる中毒死体の特徴として、鮮紅色の死斑が見られるほか、主な病変として流動血、肝腎細胞の混濁腫脹、漿膜下の出血斑、粘膜下の充血や出血、肺肝脾腎の鬱血といった共通病変が見られる[5]

前述の通り、青酸カリは昆虫標本の作製などに用いられ、薬局や文房具店で比較的容易に入手できたため、その威力が分かると青酸カリ自殺が流行した[6]。昭和11年1月10日付けの読売新聞には「昨年十一月浅草の校長毒殺事件が起って以来といふもの猫も杓子も『自殺は青酸加里……』といふことに相場がきまってしまった」と書かれたという。
法規制

シアン化カリウムは様々な法規制下に置かれている。

毒物及び劇物指定令で無機シアン化合物として毒物に指定されており、毒物及び劇物取締法に基づいた購入時の身元確認や販売記録の保管、鍵がかかる倉庫などでの保管や在庫量の記録が求められている[7]。しかし、ずさんな管理による紛失流出が相次いでおり、2006年(平成18年)には、東京大学の研究室で3,000人分の致死量に相当する、青酸カリ500グラム入りのビンが紛失した[8]

その他、船舶安全法航空法海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)、大気汚染防止法水質汚濁防止法土壌汚染対策法化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)、特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法)、労働安全衛生法などの法規制がある[9]
脚注[脚注の使い方]^ Bernard Martel. Chemical Risk Analysis: A Practical Handbook. Kogan, 2004, page 361. ISBN 1903996651.
^ a b c d “ ⇒その13 青酸化合物”. 一般社団法人日本中毒学会 (2018年10月3日). 2020年5月10日閲覧。


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