一方、モノラル録音された音声は会話と楽器の音が重なり合い、聞き取りづらい部分が多かった。そこで、AIを用いた機械学習プログラム「MAL (Machine Audio Learning)」[注釈 2]を新たに開発した。これはギターの音、ドラムの音、メンバーそれぞれの声などをAIに学習させ、特定の人の声や特定の楽器の音だけを取り出すシステムである[8]。これにより会話と楽器の音を分離することに成功した[6][注釈 3]。 いわゆる「ルーフトップ・コンサート」から50年にあたる2019年1月30日に「ゲット・バック・セッション」の未公開映像と音声を素材とした新作映画の製作が発表された[12][13]。この時点ではタイトルも公開日も未定であった。合わせて映画『レット・イット・ビー』のレストア版も公開予定であることが明かされた[14][注釈 4]。 2020年3月11日には配給権をウォルト・ディズニー・スタジオが獲得したこと、タイトルが『ザ・ビートルズ: Get Back』であること、9月4日にアメリカとカナダで先行上映されることが発表された[17][18]。 しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行の影響で、ディズニーは年内の公開は難しいと判断し、6月12日に1年延期することを発表した。この時点で劇場公開日は2021年8月27日に設定された[19]。12月21日には約5分間にわたる先行特別映像が公開された[20]。 ところが2021年6月17日になって突如、公開形態と公開日の変更が発表された。これまで告知されていた劇場での公開から定額制動画配信サービスDisney+による全3部・合計6時間に及ぶ動画配信へ変更と、11月25日からの配信が告知された[3][4]。 配信開始に先立ち、11月16日にロンドンのシネ・ワールド・エンパイア・シアター
公開までの紆余曲折
公開
11月25日に予定通りPart 1(第1部)の配信が始まった。翌26日にはPart 2(第2部)が、27日にはPart 3(第3部)の配信が始まったが、実際は合計7時間50分におよぶものになった。これはジャクソンが将来のソフト化に備えてボーナス映像として用意していたことにディズニー側が難色を示したため、急遽本編に追加したのが要因であった[22]。 2022年9月3日、第74回プライムタイム・クリエイティブ・アーツ・エミー賞の授賞式が行われ、ジャクソンは、マッカートニー、スター、オノ、ハリスン、プロデューサーのオルセン、クライドと共に「連続ドキュメンタリー / ノンフィクション番組部門」を受賞した。ジャクソンは「ドキュメンタリー / ノンフィクション番組の優秀監督賞」も受賞し、さらに『ザ・ビートルズ:Get Back』は「映像編集賞 ノンフィクション部門」「音響編集賞 ノンフィクション部門(シングルまたはマルチカメラ)」「音響賞 ノンフィクション / リアリティ番組部門(シングルまたはマルチカメラ)」も受賞した[23][24]。 2022年1月5日になって『ザ・ビートルズ: Get Back』内で公開されていた「ルーフトップ・コンサート」の全編を含む約65分にまとめられ映像『ザ・ビートルズ: Get Back (Rooftop Performance)』を劇場公開することが発表された[22]。 2022年1月30日にロンドンと全米のIMAXシアターで1日限定上映されると、その後世界各国でも期間限定で公開された[注釈 6]。
受賞
ザ・ビートルズ: Get Back (Rooftop Performance)
脚注[脚注の使い方]
注釈^ この時点では未公開映像を用いたNG集のようなものが考えられていた[6]。
^ ビートルズのパーソナル・アシスタントでこの映画にもたびたび登場するマル・エヴァンズに因み、映画『2001年宇宙の旅』に登場するのAI「HAL」を模して名付けられている[11][8]。