ザラスシュトラ
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ザラスシュトラ本来の教えは、イランの神話的聖典『アヴェスター』内の「ガーサー(英語版)(韻文讃歌)」部分の記述が近いと考えられる。しかしガーサーに使われたガーサー語は非常に難解で、現代では『リグ・ヴェーダ』を参考になんとか意味を割り出せる程度にしか解読できていない(そもそもガーサー語は宗教言語であり、ザラスシュトラ自身はソグド語の祖語を母語としていたという説もある)[8]

一神教を最初に提唱したともいわれるが、ガーサーには「アフラ・マズダーとほかのアフラたち」という表現も見られ、唯一神の存在を主張していたわけではない。またセム的一神教と異なり超越的な神が預言者を通じて人類にメッセージを送ることはなく、人間がアフラ・マズダーに呼びかけるために聖呪を用いる構造となっている[9]

また、ガーサーは本来呪文に過ぎず、後代の編集によって一定の世界観が作り出されていると推定されている[10]

ザラスシュトラはアフラ神群とマズダー(叡智)を結び付け、アフラ・マズダーとして唯一の崇拝対象とした。また、アフラ・マズダーは宇宙に秩序をもたらそうと努力していると説き、これが後に二元論に発展した。また、アフラ神群の神々を天使とし、ダエーワ神群を悪魔とみなした[11]
ザラスシュトラ伝説

ゾロアスター教の衰退後、ザラスシュトラへの崇敬はイスラム教徒に引き継がれた。ゾロアスター教の教義とは別の隠された「光の叡智」を唱えた神秘的な存在として、大いにイスラム教徒たちの間で尊敬された。この虚構のイメージは東ローマ帝国やルネサンス期の西ヨーロッパに伝わった[12]ラファエロ作『アテナイの学堂』(部分)。天空儀を持っている人物がザラスシュトラ

ルネサンス期、新プラトン主義者にとっては、ゾロアスターはプラトン主義哲学とキリスト教信仰の源流となる人物であるとされた。さらに2世紀の偽書もゾロアスターの著作とされたことで、「バビロニア占星術の大家、プラトン主義哲学の祖、キリスト教の先駆者、マギの魔術の実践者」という荒唐無稽なイメージが付与されることとなった。このようにオカルト化されたゾロアスター像は肥大化し、様々な知識の最高の体現者とみなされ、人智学にも影響を与えた。18世紀、パールシーたちの伝えてきた文献がヨーロッパにもたらされたことで、知識人たちはゾロアスターの叡智が垣間見えると期待したが、そこには古代の呪文しか書かれていなかった。これによりザラスシュトラの実像に迫ることができるようになったが、その後もゾロアスター像は変遷を遂げ、フリードリヒ・ニーチェが自著『ツァラトゥストラはこう語った』に自らの思想を仮託したり、ナチスがアーリア民族の偉人として位置づけるなど、様々な立場から利用された。これらの見方は日本人のザラスシュトラに対するイメージに大きな影響を与えている[13]
親族

ポルシュ・アスパ・スピターマ - 父

ドゥグターウ - 母

ラトゥシュタル - 兄

ラングシュタル - 兄

ワースリガー - 弟

ハンダニシュ - 弟

アーラーストヤ・スピターマ - 伯父(父の兄弟)

マドヨーイモーンハ・スピターマ - 従兄(アーラーストヤの息子)

アルワズ - 第1妻

イサトワーストラ - 長男

フルーニ - 長女

スリティ - 次女

ポルチスター - 三女。宰相ジャーマースパ・フォーグマ(後の教団後継者)と結婚


名称不明の第2妻

- ナワタトナラ - 次男

- ウルチフル - 三男


フウォーウィー - 第3妻。フラシャオシュトラ・フォーグマ(ジャーマースパの兄)の娘

ウフシュヤト・エレタ

ウフシュヤト・ネマフ

サオシュヤント


脚注
注釈
出典^ a b原イラン多神教と嘴形注口土器
^ a b c 青木健『ゾロアスター教』講談社〈講談社選書メチエ〉、2008年3月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4062584085。  38-40ページ。
^ 青木健『新ゾロアスター教史』(刀水書房、2019年)24ページ。
^ 前掲『新ゾロアスター教史』26-29ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』30ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』17-18ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』18-21ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』36ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』36-37ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』37ページ
^ 前掲『新ゾロアスター教史』37-42ページ
^ 青木(2008)p.176-180
^ 青木(2008)p.188-199

参考文献

青木健『ゾロアスター教』講談社選書メチエISBN 4062584085

青木健『ゾロアスター教史』刀水書房〈刀水歴史全書〉

全面新版『新ゾロアスター教史』刀水歴史全書、ISBN 4887084501


関連文献

野田恵剛訳『原典完訳 アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』
国書刊行会、2020年

青木健『ゾロアスター教の興亡』刀水書房

伊藤義教『ゾロアスター研究』岩波書店ISBN 4000012193

伊藤義教『ゾロアスター教論集』平河出版社ISBN 4892033154

岡田明憲『ゾロアスター教 神々への賛歌』平河出版社、ISBN 4892030538

岡田明憲『ゾロアスター教の悪魔払い』平河出版社、ISBN 4892030821

岡田明憲『ゾロアスターの神秘思想』 講談社現代新書

前田耕作『宗祖ゾロアスター』 ちくま新書ちくま学芸文庫ISBN 448008777X

P・R・ハーツ『ゾロアスター教』 奥西峻介訳、青土社〈シリーズ世界の宗教〉

メアリー・ボイス『ゾロアスター教』 山本由美子訳、筑摩書房講談社学術文庫、2010年、ISBN 406291980X


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