ザビ家
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少年時代には不良仲間の頭目として治安部隊に鉄拳を見舞う姿も見られるが[20][21]、その行動は弱者の味方としての彼なりの正義感によるものであった。『THE ORIGIN』での性格は父デギンに最も近く描かれており、戦争に大きな犠牲を払うことに悔恨し、無用な殺生を好まない。身内に寄せる愛情は深く、ひとたび事が起こると短気を発する激情家といった側面が極めて相似している。

初期設定での名前は「ドルス・ザビ」で、「女性に弱い」との記述も見られるが[22]、「ガンボーイ・アプローチ」と題されたさらに古い企画メモでは「ドズル・ザビ」であった[23]。軍服の肩のトゲは威嚇用であるとも、従来のロボットアニメの“典型的な力押しタイプの悪役デザイン”の名残であるとも言われ、初期のラフ・デザインの段階から施されている。

アニメ版では、彼の戦死を聞いたデギンは「ドズルにしてもっともな事であるよ」と述べるにとどまっているが、『THE ORIGIN』では、ガルマが士官学校の生徒達と蜂起した「暁の蜂起事件」の際、ジオン士官学校校長だったドズルは後に妻となるゼナ・ミア候補生に足止めされて身動きが取れずに終わり、事件後デギンから「役立たず」と罵られ、ガルマ達の責任を全て負う形で辞任させられている。しかし彼の戦死後、デギンはわずかに残っていた戦意を削がれ落涙、ただちに連邦との停戦を決意する(上記の通り、アニメ版とは描写が逆)。

座乗艦はグワジン級戦艦グワラン(小説版ではガンドワ)。ルウム戦役時にはムサイ級軽巡洋艦ファルメルに座乗したとも言われる(『THE ORIGIN』ではムサイ改型艦隊指揮艦ワルキューレに座乗)。ただし劇中でグワランはソロモン攻防戦で出撃するものの、ドズルは座乗していない。またテレビ版第11話および劇場版Iで、ガルマの葬儀に出席するためにズム・シティに帰還する際は通常型のムサイに座乗している。

ルウム戦役後は、サイド1の空域に建設された宇宙要塞ソロモンに駐留する。ザビ家には父のデギンを始め、ギレンやキシリアといった政治力に長けた人物が多いが、ドズルは政治に関与せず、純粋な武人として振舞う。指揮官としての統率力・指揮能力も十分にあり、部下の信望も篤い。また愛妻家としても知られており、妻のゼナとの間に娘ミネバをもうけ、ザビ家の直系として一年戦争後も彼の血脈だけは続いている。

当初はモビルスーツを軽視していたものの、一週間戦争の戦果によりそれを認めるようになる(『THE ORIGIN』ではこの通説と異なり、開戦前からモビルスーツの開発を主導している)。以後は司令官としてだけに留まらず、モビルスーツを操り前線に出向くこともあった。これはポーズに過ぎないが、前線兵士の士気高揚に大きな効果を上げたという。小説版では、ルウム戦役で戦場視察を名目に実戦に飛び出したことが記されている。この時には幕僚が慌てて三戦隊を差し向けたというが、戦果は記録されていない。なおメカニックデザイン企画『モビルスーツバリエーション(MSV)』では専用のザクが、続編の『MSV-R』ではリック・ドムが設定された。

母ナルスの面影を強く残す弟ガルマを溺愛しており、彼の能力を高く評価し、ドズル自身をも使いこなすような将軍になれと言う程、その成長を楽しみにしていた[注 4]。そのため、ガルマの戦死後には彼を守りきれなかったとしてシャアを左遷した。なお彼自身はシャアの処刑を主張していたが、デギンの裁定で左遷となった経緯がある。

宇宙世紀0079年12月24日、ティアンム提督指揮下の連邦軍によるソロモン攻略戦が開始。新兵器ソーラ・システムにより甚大な被害を受け、劣勢に追い込まれる。もはやソロモンを支えきれないと判断したドズルは、妻子を脱出させた後にソロモンの放棄を命令し、自らは試作モビルアーマー「ビグ・ザム」に搭乗して出撃。残存兵力が撤退する時間を稼ぐため、連邦艦隊の中心部へ特攻をかけた。この時、ドズルは一般兵用のノーマルスーツで出撃しているが、テレビ版制作時に安彦良和はドズル用ノーマルスーツの案を持っていたものの[要出典]、過労で入院していたため実現しなかった。『THE ORIGIN』(漫画)では、軍服と同様に肩にスパイクのついた専用ノーマルスーツを着用している。

ビグ・ザムはティアンムの乗る旗艦マゼラン級タイタンを含む連邦軍の艦船やモビルスーツを多数撃破するが、スレッガー・ロウの操縦するGファイター(劇場版ではコア・ブースター)とアムロ・レイの操縦するガンダムの連携により接近戦に持ち込まれる。この捨て身の攻撃でスレッガーは戦死するが、ビグ・ザムはガンダムのビームサーベルで撃破され、ドズルは戦死する。その直前、ドズルは動作しなくなったビグ・ザムの機外に出て仁王立ちになり、「たかがモビルスーツ一機にこの大戦の趨勢を決められてたまるか、やらせはせん」と叫びながら単身ノーマルスーツ姿で無反動ライフルをガンダムに向けて連射しているが、アムロはドズルの背後に立ち昇る悪鬼のような人間の情念を目の当たりにして戦慄している(劇場版ではもっと抽象的な黒い霧のような存在に描き直されている)。

小説版でもテレビ版と同様にビグ・ザムで出撃し、ガンダムとの戦闘後に戦死しているが、いくつかテレビ版と大きな相違がある。まず戦場がソロモンではなくコレヒドール宙域(ソロモンとア・バオア・クーの中間点)であること、次いでスレッガーは戦死せず一年戦争を生き延びていること、死に際に彼の脳裏に浮かんだ妻の名がゼナではなく「ナルス」となっている[注 5]ことなどである。ペガサス隊の猛攻によってドズル艦隊は壊滅し、ドズル自身もビグ・ザムで発進したがアムロ隊のGM一機をガンドワとの波状攻撃でかろうじて撃破したのみで、直後にアムロのG-3ガンダムに撃墜される。

ドズルは策略家であるギレンやキシリアとは異なり、ザビ家の中ではもっぱら現場第一主義である。戦略的視野に欠けた司令官として批判されることもあるが[注 6]、基本的に有能な指揮官であり、前線の兵士のこともきちんと考えており、部下にも敬愛されている。また、連邦軍の戦力や兵器を過小評価したこともない。「戦いは数だよ」という発言や、『THE ORIGIN』における士官学校校長としての訓示などにその一端がうかがえる。機を見るに敏なところもあり、陥落を予見し妻子を逃がすのみならず、早々に放棄を決定し多くの将兵を逃がしている。『THE ORIGIN』では、ザビ家の政敵ラル家の惣領ランバ・ラルの手腕を高く評価し、黒い三連星と共に抜擢。モビルワーカー(後のMS)開発に従事させる経緯が詳細に描かれている。ラルと非人道的なブリティッシュ作戦遂行を巡って対立するものの、ガルマ戦死に際して仇討ち部隊指揮官に再抜擢しており、ラルからは男にして貰った恩義があるとされ、ザビ家では例外的な武人として評価されている。更に連邦側の反攻作戦である「V作戦」の危険性にいち早く気づき、地球降下作戦従事のため、マ・クベに引き抜かれるところだったシャアに独立部隊を与えて調査に当たらせるなど先見の明に長ける。

だが、終生一軍人に徹したがゆえにそれぞれの派閥を作る親兄妹から孤立してしまい、ソロモンの危機に際しても、援軍を出したのはギレン一人で、それもビグ・ザム1機のみだった。通信での会議の席で1機で2?3個師団にも相当するはずと豪語するギレンに対し、ドズルは思わず「戦いは数だよ」と不満をぶつけている。キシリアの援軍は到着せず、デギンもソーラ・レイの開発を政治家として嫌がり(「父上はソロモンに落ちろと言うのか」と言っている)、結果としてドズルは孤立無援のままソロモン戦を迎えている(『THE ORIGIN』(漫画)では兵の決死の労を称えつつ、これに「ギレン、キシリアが政治の対立で数万の将兵を見殺しにした」と激怒し、「彼らの内紛がジオンを滅ぼす禍根になる」と自身の死後を予言した言葉を残している)。しかし、そのドズル自身も、弟の仇討ちを理由にキシリアの勢力圏にろくな調整もなくランバ・ラルを送り込みマ・クベとの対立を招く(ラルからも「ザビ家の個人的感情から出た作戦」と断言されている)、キシリアとシャアへの当てつけを目的にコンスコン隊に艦4隻にドム18機(劇場版では艦3隻とドム12機)を与えて送る、盗聴の危険性が大きい直接通信でギレンに怒鳴り込む、「物笑いの種になる」との理由でキシリアへの援軍要請を拒む、キシリア配下のマ・クベによって提案された統合整備計画を開戦まで黙殺するなど、私情を優先した行動が多く見られる。


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