サル
[Wikipedia|▼Menu]
中国では、『荘子』「斉物論」には「朝三暮四(ちょうさんぼし)」という寓話にサルが登場する。

総じていえば、インド・タイ・中国・日本といった猿が存在する多くのアジアの国では、比較的に猿自体は親しまれ、敬われる(ハヌマーン孫悟空など)一面すらある(神仏の使いとして[注 2])。一方で猿のいないヨーロッパ諸国や韓国では見下す傾向にあり[3](キリスト教圏では人外は神に愛されなかった存在として、憐れまれ、場合によっては過剰な動物愛護に繋がる)、特に韓国では、食事中に猿の話をしようものなら、激しく嫌悪することもあり、一種のタブー(禁句ワード)になっている[4]。地理的に近い日本と韓国だが、猿に対する態度・価値観は文化的に大きく異なり、日本では小馬鹿にする時に猿(前述の「猿知恵」「猿真似」)を用いたとしても、猿自体を嫌悪してのことではないが、韓国の場合、かなり忌み嫌っている[3]

ボーイスカウトは、班編制で行動し各班に動物の名前などを付けることで知られているが、世界的に「サル班」という班名は敬遠される。
人物

サルのつきは、ヒトに比べるとが狭く、顎が前に突き出る。そのような顔つきの人間は、時にサル面といわれる。孫悟空は、仙人に弟子入りする際にこのことを指摘され、その分ほほ袋があるから許してほしいと言っている。日本では豊臣秀吉あだ名がサルであったことが有名である(秀吉に関してはサル面だからではなく、生まれた身分が低かったからサル呼ばわりされたという説もある)。
伝承や事物森狙仙筆(18世紀)日本手話の「さる」手の甲を掻いているところを示す。雪村筆『猿猴捉月図屏風』(メトロポリタン美術館所蔵)

サルはヨーロッパ近辺にはほとんどいないので、伝承等に姿を見せることは少ないが、それ以外の世界では、さまざまな関わりを持つ。

知能が高いことから利口で勇敢な、あるいは狡猾なイメージが付随する。前者の例は孫悟空ハヌマーンが有名である。後者の例としては、さるかに合戦のサルが挙げられる。また、伝承ではサルはヒトのまねをするものとされている。日本語では無闇に他人の真似をすることを「猿真似」と言い、英語でも不恰好な模倣を"ape"と表現する。

サルは酔拳蛇拳などの象形拳や、形意拳の十二形拳にある「猴拳(こうけん)」「猴形拳(こうけいけん)」のモデルにもなっている。なお、通臂というのもサルの妖怪で、両手が肩の中で繋がっており、片方を縮めるともう一方がその分だけ伸ばせる。これを形に取ったのが通臂拳であるとも言われる。

日本では古来サルは日枝神社比叡山)の使い番とされている。狂言にはサルの登場する作品がいくつかあり(『靱猿』など)、狂言師は子供のころにこの『靱猿』のサル役で初舞台を踏むという。また江戸山王祭神田祭では南伝馬町(現京橋一?三丁目)が、烏帽子狩衣姿で御幣を持つ猿の人形を飾った「幣猿の吹貫の山車」を祭礼に出していた。この御幣を持つ猿は山王・神田以外の祭礼の山車にも取り入れられている。

また、仏教の戒律書『摩訶僧祇律』には、身の程知らずな行いを戒める寓話「猿猴捉月」(えんこうそくげつ)が記される。井戸の底に映った月をつかみ取ろうとした見た猿猴(テナガザル)が結局は水に落ちて溺死するという内容で、禅画や水墨画の画題となっている[5]該当項参照)。
馬との関連

サルはウマを守るといわれ厩の守護とすること自体は、伝承としては古くて広範囲に見られ、例えば孫悟空が天界に召されたとき、最初任ぜられた天馬の厩の担当官弼馬温(ピーマーウェン 日本語音ひつぱおん)は同音中国語の避馬瘟というサルはウマを守るものとの伝承がインド北インド地方の古いことわざにも「ウマの病気がサルの頭上に集まる」というものがあるという。)から中国に伝来したことによる[6]。同様の伝承は日本に伝わり、中世の武家屋敷の厩でサルが飼育されていた様子は、男衾三郎絵詞の図像など馬小屋に猿を飼う事例があった。馬小屋についても、本物のサルではなく、サルの頭蓋骨や木造をお守りに飾る例も知られる。これは動物学的には、ウマのような社会性の高い動物の場合、にぎやかしに社会性の高い動物を一緒にすることが有効とのことで、イヌもそれに用いられる例がある。

熟語の「意馬心猿」とは、曹洞宗の経典「参同契」に由来し、人間の煩悩を猿と馬に喩えた仏語。人の欲求は疾駆する馬のように止めがたく、意識は猿のようにそわそわ騒ぎ立てる意。心の中の猿と馬を制御することを祈願して描かれた、繋がれた猿と馬の図は仏画の題材であり、橋本関雪の作品などが著名。

古代中国「項羽と劉邦」中では人々は秘かに愚かな行動をとる項羽ら楚人に対して「楚人沐猴而冠(楚の国の人は猿が冠を被ったようなもので心がいやしく学が無い)」と罵り、宮廷内でそれを口にした大臣韓生が項羽の逆鱗にふれ、煮殺されたという話もある。
利用

野生動物の中ではあまりにも人間に似ていることから、これを狩ったり喰ったりすることを食のタブーとする地域もある。しかし、食用になっている例もあり、中国やヨーロッパでサルを食べていた記録が見られ、日本でも古くから食用とされていた。天武天皇4年(675年)に出された肉食の禁止令では、牛馬鶏犬とサルを食べることを禁じている。また江戸時代末期に来日したイギリスの植物学者ロバート・フォーチュンは江戸の店先でサルが食用として売られている状況を記録している。第二次大戦後、サルの数が急に減少したのは、戦後の食糧難の時期に食用になったためと言われている。また、熊の胆嚢熊胆として利用するように、サルの胆も薬用とされた。他に、毛皮としての利用もあり、室町時代勘合貿易では中国側が猿皮1万張を送っている(詳細は、「毛皮#利用の歴史」の日本を参照)。狂言の『靱猿』では猿回しの猿を武士が靫を飾る毛皮にと言って要求する。

ペットとして飼育されることもあるが、たいていの場合、大人になると気が荒くなり、一般的には飼育が困難である。しかも、知能が高いため、いたずらが巧妙を極め、逃げ出すこと、室内を破壊することが多いという。しかし、サルをペットとする歴史その物は古く、古代中国ではテナガザルを飼うのは王侯の楽しみであったと言う。なお、現在でも、オランウータンやゴールデンライオンタマリンなどが絶滅危惧に追いやられている主な原因がペット目的の捕獲である。

目的を持って飼育する例は多く、東南アジアではココヤシの実を取ってこさせるためにブタオザルが飼育されるなどの例もある。日本ではニホンザルによる猿回しは伝統芸能である。チンパンジーの芸はサーカスなどで見られる。アメリカ合衆国では身体障害者介護フサオマキザルを訓練して利用する試みもある。特殊な例では、前記のようにサルには馬を守る性質があると言われたことから、かつての猿回し師は馬医者をも兼ねていたという。

動物実験では人間に最も近い動物として古くから多用されてきた。主にマカク猿を用いることが多い。しかし、近年では動物実験への使用への反対意見も多くなっている。@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .mod-gallery{width:100%!important}}.mw-parser-output .mod-gallery{display:table}.mw-parser-output .mod-gallery-default{background:transparent;margin-top:.3em}.mw-parser-output .mod-gallery-center{margin-left:auto;margin-right:auto}.mw-parser-output .mod-gallery-left{float:left;margin-right:1em}.mw-parser-output .mod-gallery-right{float:right}.mw-parser-output .mod-gallery-none{float:none}.mw-parser-output .mod-gallery-collapsible{width:100%}.mw-parser-output .mod-gallery .title,.mw-parser-output .mod-gallery .main,.mw-parser-output .mod-gallery .footer{display:table-row}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div{display:table-cell;text-align:center;font-weight:bold}.mw-parser-output .mod-gallery .main>div{display:table-cell}.mw-parser-output .mod-gallery .gallery{line-height:1.35em}.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div{display:table-cell;text-align:right;font-size:80%;line-height:1em}.mw-parser-output .mod-gallery .title>div *,.mw-parser-output .mod-gallery .footer>div *{overflow:visible}.mw-parser-output .mod-gallery .gallerybox img{background:none!important}.mw-parser-output .mod-gallery .bordered-images .thumb img{outline:solid #eaecf0 1px;border:none}.mw-parser-output .mod-gallery .whitebg .thumb{background:#fff!important}

大町エネルギー博物館にて(2018年7月撮影)

同左(2018年7月撮影)

同左(2018年7月撮影)

脚注[脚注の使い方]
注釈^ メガネザルは分類学上の地位が不安定だが、それとは関係なくmonkeyには含めない。
^ 一例として、武術の陰流では、夢の中に神が猿の姿で現れ、剣術を教えたといった伝説。

出典^ a b ファン・フーリク, R. H. (1992), 中国のテナガザル, 東京: 博品社, pp. 39–93, .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-938706-04-3 


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:33 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef