脊椎動物の色覚は、網膜の中にどのタイプの錐体細胞を持つかによって決まる。魚類、両生類、爬虫類、鳥類には4タイプの錐体細胞(4色型色覚)を持つものが多い。よってこれらの生物は長波長域から短波長域である近紫外線までを認識できるものと考えられている。一方ほとんどの哺乳類は錐体細胞を2タイプ(2色型色覚)しか持たない。爬虫類の祖先から枝分かれした哺乳類の祖先は当初は4タイプ全ての錐体細胞を持っていたと思われるが、2億2500万年前には、最初の真の哺乳類と言われるアデロバシレウスが出現した。これら初期の哺乳類は(恐竜などの爬虫類との競争を避けたことで)主に夜行性であったため、色覚は生存に必須ではなかった。結果、4タイプのうち2タイプの錐体細胞を失い、青を中心に感知するS錐体と赤を中心に感知するL錐体の2錐体のみを保有するに至った。これは赤と緑を十分に区別できないいわゆる「赤緑色盲」の状態である。この色覚が哺乳類の子孫に遺伝的に受け継がれることとなった[21]。
ヒトを含む旧世界の霊長類(狭鼻猿類)の祖先は、約3000万年前、X染色体にL錐体から変異した緑を中心に感知する新たなタイプの錐体(M錐体)視物質の遺伝子が出現し、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスのみが3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなりX染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚はビタミンCを豊富に含む色鮮やかな果実等の発見に有利だったと考えられる[19][21]。
時代を下ってヒトの色覚の研究成果により、ヒトが属する狭鼻猿類のマカク類に色盲がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトの祖先が狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる[21]。色盲の出現頻度は狭鼻猿類のカニクイザルで0.4%、チンパンジーで1.7%である[19]。広鼻猿類でもヨザルは1色型色覚であり、ホエザルは狭鼻猿類と同様に3色型色覚を再獲得している[19][22] とされている。他方、ホエザルは一様な3色型色覚ではなく、高度な色覚多型であるとの指摘もある[23]。これらのヨザル、ホエザルを除き残りの新世界ザル(広鼻下目)はヘテロ接合体のX染色体を2本持つメスのみが3色型色覚を有し、オスは全て色盲である。これは狭鼻下目のようなX染色体上での相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こさなかったためである[19]。ヒトは上記のような初期の哺乳類と霊長目狭鼻下目の祖先のX染色体の遺伝子変異を受け継いでいるため、L錐体のみを保持したX染色体に関連する赤緑色盲が伴性劣性遺伝をする。男性ではX染色体の赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいると色盲が発現し、女性では2本のX染色体とも赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいる場合に赤緑色盲が発現する[24]。なお、日本人では男性の4.50%、女性の0.165%が先天赤緑色覚異常で、白人男性では約8%が先天赤緑色覚異常であるとされる(詳細は「色覚異常」を参照のこと。)。
狭鼻猿類と広鼻猿類の分岐からさらに時代を下って、ヒト上科とオナガザル上科が分岐したのは、2,800万年から2,400万年前頃であると推定されている[25][26]。この際に、尿酸オキシダーゼ活性が消失したものと推定される[27]。尿酸オキシダーゼ活性の消失の意味付けは、尿酸が抗酸化物質として部分的にビタミンCの代用となるためである[28]。しかし、ヒトを含むヒト上科では、尿酸オキシダーゼ活性の消失により難溶性物質である尿酸をより無害なアラントインに分解できなくなっているため尿酸が体内で析出する痛風に罹患することがある。
その後の人類への進化については人類の進化を参照のこと。 第二次世界大戦後、今西錦司らが宮崎県の幸島(こうじま)および高崎山で野生ニホンザル群の餌付けに成功して以来、日本の霊長類研究は飛躍的な発展を遂げた。今西らのニホンザルの文化的行動についての研究は世界中から注目され、その後の霊長類研究の方向性に重大な指針を与えた。 その後もニホンザルにとどまらず、伊谷純一郎など多くの日本人が、ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの類人猿をはじめ、東南アジアからインドにかけてのオナガザル、南米における新世界ザルなど、ほとんどすべてのサルを網羅したフィールドワークを行い、先導的な研究を続けている。 日本のサル学は生態学的研究だけでなく、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}社会学[独自研究?]、生理学、遺伝学、形態学、運動学など多岐に渡り、主に京都大学や大阪大学において今日も活発な研究がなされている。
人間との関係
日本の霊長類研究
出典[脚注の使い方]^ I, II and III (valid from 31 July 2021)