サルコイドーシス
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また、地域別に見ると、北欧や北米、日本では北海道や東北地方など、寒冷地に多く見られる[2]
病態

サルコイドーシスの肉芽腫形成や進展機序にはTh1細胞による免疫応答の関与が考えられている[3]。有機粒子や無機抗原、病原体などの抗原がマクロファージなどの抗原提示細胞で処理され、MHC class2分子を介してT細胞に提示され、CD4陽性のTh1細胞の活性化と増殖が起こる。T細胞やマクロファージからIL-2やIFN-γTNF-α、IL-12、IL-18などのサイトカインケモカインが産出され肉芽腫形成に関与する。肉芽腫は成熟とともにTh2細胞を介して消退し、TGF-βなどにより線維化をきたす[4][5][3]。さらにTh17細胞がサルコイドーシスの肉芽腫形成や線維化の進展に寄与することが示唆されている[6]
病理サルコイドーシスによる非乾酪性の肉芽腫病変。ラングハンス型巨細胞を認める。

サルコイドーシスの病理は多彩だが、リンパ組織や肺に多い肉芽腫性病変、全身性の微小な血管炎(マイクロアンギオパチー)が多いとされている。肉芽腫性病変が肺で発生した場合は、リンパ管に沿うように間質に分布する場合が多いものの、その癒合性、局在部位、臓器特異性によって様々な形態像を見せる。

なお、非乾酪性肉芽腫を形成する異物型巨細胞の細胞質には、星状(: asteroid)小体やシャウマン(: Schaumann)小体が見られる場合があるものの、これは本症に特異的ではなく、例えば、結核ベリリウム症などでも認められる。肉芽腫性の病変の大部分は自然退縮するが、硝子化として残存したり、少数例では繊維化へと進展する。ミクロアンギオパチーは肉芽腫が血管壁を侵襲し、血管壁の構造破壊によって発生すると考えられている。病理学的な検討によると、血管壁での肉芽腫の分布は分節的であり、外膜から中膜にかけての分布が多いとされている。
肉芽腫性血管炎
肉芽腫による血管壁の構成成分の破壊が見られるという病理像を以って定義される。本症では肺、眼、脳、神経などで認められる。病理解剖を行った肺では、弾性型肺動脈から小葉間静脈まで様々な血管で、肉芽腫が認められる。ただし、病理学的には静脈侵襲が目立つ傾向にある。血管での肉芽腫の分布は分節的で、血管外膜から中膜にかけて多く分布する。巨細胞は星状(asteroid)小体やシャウマン(Schaumann)小体など、細胞内封入体を有する場合がある。肉芽腫の中心部は、主にCD4陽性のリンパ球で構成され、辺縁部はCD8陽性細胞で構成される。なお、好中球浸潤やフィブリノイド壊死は認められない。また、ミクロアンギオパチーが共存している場合もある。
ミクロアンギオパチー
当初のミクロアンギオパチーは、眼底における細動脈の狭小化、白鞘化、静脈周囲炎、細動脈拡張などの変化に付けられた名称であった。その後、全身の微小血管変化に用いられるようになった経緯を有する。ミクロアンギオパチーには、類上皮細胞やマクロファージから分泌される内皮細胞増殖因子の関与も疑われる。病理学的には電子顕微鏡像で骨格筋、網膜血管、気管支粘膜、心筋、あるいは皮膚等における、毛細血管や細静脈に内皮細胞のの濃縮、変性、基底膜の多層化を特徴とする。
肉芽腫の転帰
サルコイドーシスの肉芽腫は多くの場合、自然消退するものの、中には硝子化、線維化へと進展する物が有る。消退の過程においては類上皮細胞が消失し、巨細胞が線維化の中に残る場合が多い。
脳サルコイドーシス

脳サルコイドーシスの病理所見は硬膜や軟髄膜の肥厚、視床下部、下垂体茎あるいは脳神経周囲にも病変が認められる。非乾酪性肉芽腫性病変であり、肉芽腫性炎症が髄軟膜、脳室、近接する脳実質、脊髄などに認められる。非乾酪性であるが、中心部に線維化を認めることがあり、限局性に壊死を認めることもある。また小血管にも肉芽腫が認められる。通常は類上皮細胞と多核巨細胞が認められる。多核巨細胞はCD68陽性で、細胞体の周囲に核が偏在するラングハンス型の場合もある。サルコイドーシスに特徴的とされるアステロイド小体またはシャウマン小体は必ずしも特異的ではない。真菌や結核が認められないことを組織学的あるいは培養で確認することも重要である。神経系以外のサルコイドーシスが確定していても中枢神経系に同一の病変があるとは限らない[7]

クリプトコッカス髄膜炎結核性髄膜炎など他疾患に注意が必要である。
脊髄サルコイドーシス

脊髄サルコイドーシスでは脊髄は急性、亜急性期には浮腫により腫大するが、慢性期には脳実質の破壊によって萎縮を示すようになる。病変はくも膜と脊髄実質内、神経根に認められる。これらの部位は活動期にはリンパ球・マクロファージを主体とする炎症細胞浸潤が強く、髄膜・脊髄・神経根炎の所見を示す。病変は髄膜から血管周囲腔に沿って脊髄実質内に広がっていく傾向がある。髄膜および脊髄実質内に巨細胞を伴う非乾酪性上皮肉芽腫病変を認め、炎症の陳旧化した場所では硝子化、線維化した小結節もみられる。ときに血管病変からの二次的循環障害によると思われる脊髄実質の壊死も認められる。また髄外に肉芽腫を形成することもある[8][9]
末梢神経サルコイドーシス

サルコイドニューロパチーでは神経上膜を中心に肉芽腫と壊死性血管炎の所見に加え、血管炎ニューロパチーで見られるような、急性軸索変性像と神経束ごとの有髄神経線維密度の偏りが報告されている[10]
筋サルコイドーシス

サルコイドミオパチーにおける類上皮細胞肉芽腫は他臓器と同様で、中心部に活性化されたCD4陽性T細胞、類上皮細胞やマクロファージなどのCD68陽性細胞、ラングハンス巨細胞が多数集簇して存在し、周辺部にCD8陽性T細胞やB細胞が見られるのが特徴である[4][11][12]。類上皮細胞はリンパ球に比べるとやや扁平で大きく、核はクロマチンに乏しい。CD68陽性細胞はカルパインやカテプシンB、ユビキチン・プロテアソームなどのタンパク分解酵素を強く発現する。これは全身の肉芽腫性病変に共通した所見である[11]。肉芽腫は筋周膜や筋内鞘の小血管に形成され、周囲の筋線維を破壊しながら進展して形成していく。増大した肉芽腫では、周辺部から中心部に向けて線維化が進展し、硝子化病変となる。そして高度の線維化を残して自然消滅する。この肉芽腫の形成、消退、線維化のサイクルはearly、premature、mature、healingの各ステージに分けられ、症例や病変部位により種々のステージの肉芽腫が観察される[11][12]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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