サルコイドーシス
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また、ミクロアンギオパチーが共存している場合もある。
ミクロアンギオパチー
当初のミクロアンギオパチーは、眼底における細動脈の狭小化、白鞘化、静脈周囲炎、細動脈拡張などの変化に付けられた名称であった。その後、全身の微小血管変化に用いられるようになった経緯を有する。ミクロアンギオパチーには、類上皮細胞やマクロファージから分泌される内皮細胞増殖因子の関与も疑われる。病理学的には電子顕微鏡像で骨格筋、網膜血管、気管支粘膜、心筋、あるいは皮膚等における、毛細血管や細静脈に内皮細胞のの濃縮、変性、基底膜の多層化を特徴とする。
肉芽腫の転帰
サルコイドーシスの肉芽腫は多くの場合、自然消退するものの、中には硝子化、線維化へと進展する物が有る。消退の過程においては類上皮細胞が消失し、巨細胞が線維化の中に残る場合が多い。
脳サルコイドーシス

脳サルコイドーシスの病理所見は硬膜や軟髄膜の肥厚、視床下部、下垂体茎あるいは脳神経周囲にも病変が認められる。非乾酪性肉芽腫性病変であり、肉芽腫性炎症が髄軟膜、脳室、近接する脳実質、脊髄などに認められる。非乾酪性であるが、中心部に線維化を認めることがあり、限局性に壊死を認めることもある。また小血管にも肉芽腫が認められる。通常は類上皮細胞と多核巨細胞が認められる。多核巨細胞はCD68陽性で、細胞体の周囲に核が偏在するラングハンス型の場合もある。サルコイドーシスに特徴的とされるアステロイド小体またはシャウマン小体は必ずしも特異的ではない。真菌や結核が認められないことを組織学的あるいは培養で確認することも重要である。神経系以外のサルコイドーシスが確定していても中枢神経系に同一の病変があるとは限らない[7]

クリプトコッカス髄膜炎結核性髄膜炎など他疾患に注意が必要である。
脊髄サルコイドーシス

脊髄サルコイドーシスでは脊髄は急性、亜急性期には浮腫により腫大するが、慢性期には脳実質の破壊によって萎縮を示すようになる。病変はくも膜と脊髄実質内、神経根に認められる。これらの部位は活動期にはリンパ球・マクロファージを主体とする炎症細胞浸潤が強く、髄膜・脊髄・神経根炎の所見を示す。病変は髄膜から血管周囲腔に沿って脊髄実質内に広がっていく傾向がある。髄膜および脊髄実質内に巨細胞を伴う非乾酪性上皮肉芽腫病変を認め、炎症の陳旧化した場所では硝子化、線維化した小結節もみられる。ときに血管病変からの二次的循環障害によると思われる脊髄実質の壊死も認められる。また髄外に肉芽腫を形成することもある[8][9]
末梢神経サルコイドーシス

サルコイドニューロパチーでは神経上膜を中心に肉芽腫と壊死性血管炎の所見に加え、血管炎ニューロパチーで見られるような、急性軸索変性像と神経束ごとの有髄神経線維密度の偏りが報告されている[10]
筋サルコイドーシス

サルコイドミオパチーにおける類上皮細胞肉芽腫は他臓器と同様で、中心部に活性化されたCD4陽性T細胞、類上皮細胞やマクロファージなどのCD68陽性細胞、ラングハンス巨細胞が多数集簇して存在し、周辺部にCD8陽性T細胞やB細胞が見られるのが特徴である[4][11][12]。類上皮細胞はリンパ球に比べるとやや扁平で大きく、核はクロマチンに乏しい。CD68陽性細胞はカルパインやカテプシンB、ユビキチン・プロテアソームなどのタンパク分解酵素を強く発現する。これは全身の肉芽腫性病変に共通した所見である[11]。肉芽腫は筋周膜や筋内鞘の小血管に形成され、周囲の筋線維を破壊しながら進展して形成していく。増大した肉芽腫では、周辺部から中心部に向けて線維化が進展し、硝子化病変となる。そして高度の線維化を残して自然消滅する。この肉芽腫の形成、消退、線維化のサイクルはearly、premature、mature、healingの各ステージに分けられ、症例や病変部位により種々のステージの肉芽腫が観察される[11][12]

またサルコイドミオパチーでは臨床病型に筋病理学の相違点が知られている。腫瘤型では筋周膜や筋内鞘などの間質の血管周囲を中心に肉芽腫が形成され、様々なステージの肉芽腫が認められる。筋線維内に炎症細胞が浸潤し、また筋束内の肉芽腫の増大とともに肉芽腫に接する筋線維が圧排されることで、筋線維の崩壊にいたる。病変の一部で筋鞘膜蛋白により周囲を囲まれた肉芽腫がみられることがあり、肉芽腫が筋線維内に形成されていることが示唆される[11]。また血管壁に浸潤して肉芽腫性血管炎を認めることもある。病変部位から離れた筋束の筋線維は正常である。

一方、ミオパチー型では、限局性の肉芽腫病変が多巣性にびまん性に形成され散在するが、時に見られないこともある。筋線維の著明な消失から筋束の基本構築の崩壊が認められる。残存する筋線維は高度の大小不同を認め、筋線維の壊死や再生、小角化線維、小円形線維が認められる。肉芽腫性病変から離れた筋束の筋線維でも変化が認められる。その他、縁取り空胞や赤色ぼろ線維、分葉線維、cytoplasmic bodyなどを有する線維が散見される[13][11]。また筋周膜や筋内鞘の高度線維化と脂肪置換を認め、血管周囲の炎症細胞浸潤や肉芽腫性血管炎がみられる。

腫瘤型とミオパチー型は筋病理像が大きく異なる。腫瘤型がミオパチー型に進展する症例は殆どなく、腫瘤型では腫瘤が全身性に形成されても筋力低下がみられない。一方、ミオパチー型では四肢対称性に筋力低下を認めることから、ミオパチー型の高度のびまん性筋崩壊には腫瘤型と異なり、種々の自己免疫機序や内分泌因子、液性因子などの二次的な機序の関与も示唆される[13][11]。実際、ミオパチー型においてTh2免疫応答を基盤としたM2分化型マクロファージが慢性型に関与することが報告されている[14]
自然経過

サルコイドーシスの臨床所見、自然経過、予後は極めて多彩である。サルコイドーシスの症例の多く(28?70%)は、自然治癒するとされている。その場合は、2年以内に病変が消失する。予後不良因子としてはlupus pernio、慢性ブドウ膜炎、40歳以降での発症、慢性高カルシウム血症、腎臓の石灰化病変、黒色人種、進行性肺サルコイドーシス、鼻粘膜病変、嚢胞性骨病変、神経サルコイドーシス、心筋病変、慢性呼吸不全とされている。1?5%が本症のサルコイドーシスの病変で死亡する。典型的な死因は、進行性の呼吸不全、中枢神経系や心臓病変による。日本においてはサルコイドーシスによる死亡の77%が心筋病変によるのに対して、アメリカ合衆国では心筋病変よりも肺病変による死亡の方が多い。
症状

心サルコイドーシスによって発生した
不整脈は、致死的な場合がある。

肺での両側肺門リンパ節腫脹 (英語: bilateral hilar lymphadenopathy;BHL) は、サルコイドーシスで特徴的とされる。を症状として訴える。

眼症状として、ブドウ膜炎を合併する場合がある。目のかすみ症状を訴え、飛蚊症、視力低下・眼圧上昇を来す事がある。

皮膚症状として、結節性紅斑などを認める場合がある。

検査

サルコイドーシスの診断で重要な点として、サルコイドーシスの組織学的確認をする事、臓器病変の広がりとその程度を評価する事、病態が安定しているか進行性かを評価する事、治療が患者に利益を与えるかを評価する事の4点が挙げられる。なお、サルコイドーシスの診断のために、以下のような検査を実施する場合がある。
胸部X線

サルコイドーシスの胸郭内病変は肺門、縦隔のリンパ節病変と肺野病変に大別できる。胸部X線の所見に基づき病期分類があり予後と関連する。両側肺門リンパ節腫脹(BHL)が診断を強く示唆する特徴的な所見である。健康診断などで胸部X線撮影を行った結果、偶然発見される場合もある。BHL以外の胸部X線検査所見としては上肺野優位の粒状影や斑状影を中心としたびまん性肺野陰影、中枢部気管支血管周囲束の不整肥厚、進行期にみられる上肺野優位の収縮を伴う線維化病変がある。胸部X線検査でサルコイドーシスのリンパ節石灰化を認識できることは稀である。胸部X線撮影で観察された両側肺門リンパ節腫脹(BHL)と、肺野病変の有無によって5つのstageが存在する。ACCESSでは各病気の頻度としては、I期39.7%、II期36.7%、III期9.8%、IV期5.4%と報告されている。ステロイド系抗炎症薬の投与を行えば、短期的には病変の消失や縮小には寄与するものの、長期的な有効性は明らかになっていない。II期、III期において自覚症状、呼吸症状が認められる場合に、ステロイド系抗炎症薬の使用が検討される。

胸部X線像病期内容
stage 0正常な胸部X線像
stage I両側肺門リンパ節腫大
stage II両側肺門リンパ節腫大+肺陰影
stage III肺陰影のみ(両側肺門リンパ節腫大なし)
stage IV肺線維

胸部X線写真の所見で、サルコイドーシスの予後を、ある程度予測できる。stage Iの場合は胸部X線写真所見は通常、自然に改善ないし安定化する。肺門リンパ節腫大の持続は、活動性病変が続いている事を意味するわけではないため、経過観察が行われる。自然寛解は16?39%の症例で発症後6?12ヶ月の間で認められている。自然寛解の85%以上は、発症後2年以内に起こる。自然寛解した症例ないし、安定化した症例で、後に再燃が認められた症例は、わずかに2?8%程度である。2年以内に自然消退しない場合は、慢性ないし持続性の経過をとる可能性が高まる。よって肺サルコイドーシスの長期観察は、発症後2年間に最も集中的に行われるべきである。stage Iでは6ヶ月毎、stage II?IVでは3?6ヶ月とより頻回の評価が必要である。治療を行った場合は、治療後最低3年間は追跡をする。また持続性のstage II?IVでは、少なくとも数年ごとに無期限に追跡をするべきとされている。重症の肺外病変がある場合も、長期の追跡が必要である。
胸部CT

サルコイドーシスの胸部CT所見としては小粒状影・気管支血管周囲間質の肥厚像、リンパ路に沿った粒状影が特徴的とされている。時に見られる所見として結節影、塊状影、均等影が知られている。非典型的な所見としては胸水、定型的な蜂巣肺を伴う線維化病変がある。ここではリンパ節病変、肺野病変、上腹部の異常所見に分類して述べる。サルコイドーシスの90%で胸部画像で異常所見が認められる[15]。神経サルコイドーシスに限っても60?70%で胸部画像に異常が認められる[16]
リンパ節病変

BHLが特徴的なリンパ節病変である。サルコイドーシスは両側性が原則であり、片側性の場合は肺がんを疑う。サルコイドーシスのリンパ節も慢性期は石灰化を伴うことが少なくない。しかし結核感染後などに見られる均一で非常に高吸収を呈するリンパ節は稀でありある。
肺野病変

サルコイドーシスの肺野病変は病期や罹患期間により違いがあるが基本的には肉芽腫による微細粒状影と線維化により構成される。


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