住宅市場の落ち込みとそれに続いた金融市場の危機によって経済全般がリスクに晒され、これは世界中の中央銀行による政策金利の引き下げや政府による景気刺激策の発動を呼んだ主たる要因となった。この危機が世界の証券市場に及ぼした影響は劇的である。2008年1月1日から10月11日にかけて、米国企業の株主は8兆ドルの損失を蒙り、時価総額は20兆ドルから12兆ドルに減少した。他国での損失は平均約40%である[15]。証券市場における損失と住宅価格の下落は、経済の牽引役である消費を一層押し下げる圧力となる[16]。先進国と発展途上国の指導者は、この危機への対抗戦略を見出すために2008年11月と2009年3月に会合を持った[17]。危機を生んだ根本原因の多くは未だ解決されていない。様々な解決策(en)が政府、中央銀行、経済学者、および実業家から提案されてきた[18][19][20]。
住宅ローン市場米国で差し押さえ対象となった住宅の四半期当り件数(2007年?2009年)
サブプライム層の借り手は典型的には信用履歴と弁済能力に問題がある。サブプライムローンはプライム層顧客へのローンに比べて債務不履行に陥るリスクが高い[21]。もし借り手が期限までに弁済を履行できなければ、貸し手(銀行その他の金融企業)は物件の所有権を得ることができ、この手続きを差し押さえと呼ぶ。
米国におけるサブプライム住宅ローンの残高は、2007年3月現在、1兆3千億ドルだったと推計されており[22]、抵当物件数で750万件を超えるサブプライム住宅ローンが組まれていた[23]。2004年から2006年ではサブプライム住宅ローンが全体に占めるシェアは18%?21%であり、対して2001年から2003年と2007年では10%未満だった[24][25]。2007年の第3四半期では、サブプライム層向け変動金利型住宅ローンは米国の住宅ローン中で6.8%を占めるに過ぎなかったが、この四半期中に生じた差し押さえ件数では43%を占めた[26]。2007年10月において、サブプライム層向け変動金利型住宅ローンのおおよそ16%は弁済が90日以上滞納されているかまたは差し押さえ手続きが始まっており、これは2005年における同比率のおおむね3倍に相当した[27]。2008年1月には、この滞納比率は21%に上昇しており[28]、2008年5月には25%だった[29]。
米国の世帯が負った4人家族向けまでの住宅購入用ローンの総額は、2006年末には9兆9千億ドルであり、2008年半ばでは10兆6千億ドルだった[30]。2007年において、貸し手は130万件近い物件について差し押さえ手続きを開始したが、これは2006年に比べて79%増だった[31]。これは2008年には230万件すなわち対2007年比で77%増に及び[32]、更に2009年には280万件、対2008年比で21%増になった[33]。
2008年8月現在、米国の住宅ローン全てのうち9.2%が滞納または差し押さえ状態にあった[34]。2009年9月現在、この比率は14.4%に上昇していた[35]。2007年8月から2008年10月の間に、米国全体で936,439件の住宅が差し押さえ手続きを完了した[36]。差し押さえは件数と申請比率の両方で一部の州に集中している[37]。2008年に発生した差し押さえ申請件数の74%が10州に集中しており、上位2州(カリフォルニアとフロリダ)だけで41%を構成した。