サバイバル
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一般的には成人男子で1日1リットル以上(健康に、身体活動するためには2リットル以上)の水を必要とするので、生き残るためにはそのような量を目安に、日々、水を確保する必要がある。
山岳遭難の場合

山岳遭難の場合は、持参した水が尽きれば、山中で水を探すことになる。通常、登山者の場合、700ml?1L程度の容量の水筒をリュック(アタック・ザック)の中に持参していたり、あるいは500ml程度のペットボトルを水筒がわりにして、1?2本程度持ち歩いている、ということが一般的である。そして登山ガイドブックや山の地図などにいわゆる「水場」と表記されている場所(湧き水ポイントや山小屋の水道など)で随時水を入れてては移動を続ける、ということを繰り返している。ところが遭難したとたんに、通常の水補給ができなくなることになる。

たとえば軽度の滑落事故を起こし脚を骨折してしまった場合などは、とたんに水場に歩いてゆくことができなくなる。持っている水筒の中の水で水分補給をすることになるが、残量が500mlほどあっても、普段の感覚で飲んでしまっては半日もすれば水が尽きてしまうことになる。つまり、歩けない場合は特に用心して、普段より相当に少なめに飲まなければならない。残量が少なければ「口を湿らせる」という程度に留め、救助が到着するまで、ともかく渇きに苦しまずに生き延びることを第一に考える。

「単に道を見失った」ような遭難の場合は、まだ歩けるので(日本なら水が比較的豊富なので)付近に沢があれば沢の水を水筒に汲んで大切に使う。沢が見当たらない場合でも(日本くらい水が豊富な国ならば、の話ではあるが)、山の斜面を注意深く観察すると、岩肌の苔などから「水のしずく」がポタ...ポタ...と垂れ落ちているような場所はそれなりにあるので、そうした「しずく」を時間をかけて水筒で集めることで飲み水を確保することが一応できる。夏山の場合、高山の場合ならば「残雪」があちこちに残っていることもあるので、もしそれが見つかったらそれを溶かして飲むという方法もある。

冬山遭難時の場合は、水分を得ようとしてをむやみに口にしてはいけない。体を冷やしてしまい、下痢によって脱水症状を起こす他、身体は体温を保とうと勝手に余計にカロリーを消耗し、かえって死亡率が高くなる。燃料があれば弱火で暖めて溶かして飲む(燃料の残量にも注意が必要)。もし黒いもの(たとえば黒いビニールなど)を持っているなら、天気がよければ、直射日光の当たる場所に「黒いもの」を置いて(その上にカップを置き、雪や氷を入れて)溶かすことができることもある。燃料も無く、黒いものも無い場合は、しかたないので口で少量だけ溶かして飲むか、手足で暖めるなどして溶かして飲む(ただし凍傷に注意)。やむなく雪や氷を口にする場合は、極力少しずつにする。

歩ける場合は沢を探して水を汲む方法がある。

山の水の例

海洋遭難の場合

海難事故の場合は大きな困難に直面する。海洋で遭難し救命いかだ(ラフト)や救命艇に逃げ込んだ場合、規則上は一応、少しの水は装備されている、ということになっている。その量は「(ラフトの)定員ひとりあたり3リットル[5]」である。したがって、普段の感覚で水を飲んでしまうと、ラフトの水はわずか3日(あるいは不用心な飲み方をすると、わずか1.5日程度)で尽きてしまう。したがって、海難事故でラフトに逃げ込んだ場合は、用心して水は少なめに飲んだほうがよいということになる。

なお、たとえ真水が切れたたとしても、海水は飲んではならない。飲むと、身体は塩分を尿として体外に排泄しようとし、飲んだ海水の量よりも更に多くの水を必要とするためである。かえって強烈な「渇き」に襲われる。体内の塩分濃度が高まると露骨に「気持ちが悪く」なる。「水分を摂取しなければ必ず死に至る」と主観的には思えるような極限状況でもまた「1日数百ミリリットルに限ってなら海水を飲んで良い、と言って欲しい」と言っても、飲んで数十分もすると体内の塩分濃度が増し、本人もすぐに自覚できるほど異常な体調になり、結局、死を早めてしまう。大洋での海洋遭難でラフトに逃げ込んだ時のサバイバルは、「水」についても、本当に過酷なものとなる。眼の前に大海原が広がっていて、つまり大量の水が触れられる位置にあり、無限にあるかのように感じられるのに、その水をまったく飲むことができないからである[6]。精神的に非常にキツいのである。なお、ヨットレースで仲間とともに遭難しラフトで仲間が次々と死んでゆく状態を記録した佐野三治の『たった一人の生還』(当記事の末尾でも紹介)にもそのあたりの過酷さは書かれている。

なお飲料水が無くなってしまった状態では、雨は「命を救ってくれるもの」であり、ラフトの屋根(テント部分)に降った雨を(容器などに)集めて飲むことができる。雨水は飲むことができるのである[7]

なお尿血液も海水同様に塩分濃度が高いので、生き延びようと思うなら飲んではならない[8]
乾燥地帯の場合

(日本国外の話だが)たとえば乾燥地帯の広大な土地で(たとえば独りで冒険をしていて)、携行している水が尽きた場合に水を見つける方法についても解説する。

まず周囲の数キロメートル程度の地形をよく観察し、比較的高い場所(たとえば岡や山の状態になっている場所)と、反対に比較的低い場所(たとえば窪地や谷状になっている場所)を見分ける。それができたら低い場所へ移動し、「水が流れた痕跡」を探す。たとえ乾燥地帯であっても、まれに雨が降る時期には地表を雨が流れるからである。もし「水が流れた痕跡」があったら、その痕跡を、低い方向へとたどる。

低い場所にたどり着いたら、そこから先はいくつかのパターンがあるが、ひとつは小動物が生息している地帯なら(乾燥地帯でもしばしば動物が生息している)、地面をじっくりと観察し、動物の「足跡」が見えた場合は、それを低いほうへと辿ってゆくと動物の「水場」になっている場所が見つかることがある。もし運良く動物の水場を見つけられたら、その水をコップでもペットボトルでもよいので汲んで(もし金属製コップやコッヘルがあればそれに入れ、火も起こして)一度沸騰させてから飲む(動物の水場の水をもらう場合は、感染症には気をつける必要があり、基本的に煮沸してから飲む。もし湯をわかす道具が無い場合でやむをえずそのまま飲む場合には、感染症になるかならないかは一種の「賭け」になってしまうのでリスクがあることは自覚しなければならない)。動物の足跡が全く無い地帯であっても、一番低い場所にたどり着くと、小さな「水溜り」が見つかることもある。見つかったら、もし念のため沸騰させたければ沸騰させてから飲めばよい。

もうひとつのパターンは、「水の流れた痕跡」を辿って最も低いだろうと思われる場所までたどりついても、「動物の水場」も「水溜り」も見つからないパターンである。その場合は、その低い場所の地面の色を注意深くじっくりと観察する。土地(地面)にはわずかに水が含まれており、水の割合で地面の色が微妙に、かすかに異なっており、水分が比較的多い地面は色が比較的濃いことが多い。土に含まれる水分が比較的多そうな場所が色で判別したら、そこで地面を掘る。もし小さなスコップを持参していればそれで掘ればよいが通常はそういうものは持っていないものであるので、もし金属製コップ(やコッヘル)があればそれで掘る。コップ類も無ければ、素手で掘る。かなり大変な作業ではあるが、頑張って50?60センチほど掘ると、明らかに土の色が濃く、黒っぽくなってくる。これは土が含む水分が増えている証拠である。掘る作業を続けていると、(深さは決まっておらず、運が良いと60センチほどかも知れず、運が悪いと1メートルや1.5メートルほどになってしまうかも知れないが)やがて掘った穴の中に、直径数センチほどの大きさの、とても小さな「水溜り」が出現するようになる。そうなったら布類(たとえば自分のシャツのすそ、端でよい)を掘った穴の底のわずかな水にひたし、濡れた布を「しゃぶる」。「布を水にひたして、しゃぶる」を何度も何度も繰り返すと水分が補給できる。掘った穴の水の場合は、通常比較的きれいなので、沸騰させずに飲んで良い。

なお、蒸留という手法、一種の「装置」を組立てる高度なテクニックだが、浅い穴を掘って、中央に水を蓄えるコップなどの小さな容器を置き、その周囲に海水や泥水等の飲用に適さない水を入れ、穴に光を通す薄いビニールで覆ってしまい、そのビニールシートの中心(コップの真上)に小石を置いて、中心部が最も低くなるようにしておく、という方法もある。穴の中は太陽熱などで水が蒸発して湿度が高くなり、ビニールの表面で大気によって冷やされ、水滴となってコップに溜まる。この方法で、草木の汁や朝露などを蒸留する事も一応は可能である。

動物の水場の例。

動物の水場の例。

乾燥した地域でも、低い土地へと移動してから地面に穴を掘れば水が出てくる可能性が高い。

自作する蒸留装置の構造図



他の一般的な考慮点

体温が上昇すると、発が起き、大量の水を必要とするので、直射日光を避け日陰に退避したり、身体を動かす量を減らすということも、必要な水の量を減らす効果がある。また食物を取ると消化のために水分を必要とするため、食事の量を抑えると水の消費量も減る。水が乏しい場合には、食事の量にも注意する。
食料

人間はいくら水が豊富に飲めても、それ以外の食物を何も口にしていないと、概ね3週間 - 1ヶ月で死ぬ。
山岳遭難の場合

山岳遭難の場合、いくつかのパターンがあるが、たとえば山中で荒天になり、下山を目指して歩き続けたり、あるいはあらかじめ場所が分かっている(特に予約を入れてある)山小屋にたどり着くために歩き続けたりする場合は、持参した携行食(キャンディー、チョコレート、おにぎりなど)を随時食べて、歩き続けるためのエネルギーを補給する。歩き続けるためには糖質炭水化物)が望ましい。(特に尾根を歩いていて強風に吹かれている状態では体温も低下しがちなので、低体温症を防止し体温をあげるためにも糖質を補給する。)

たとえば滑落などで脚を骨折して歩けなくなり周囲に人もいない場合、さらにいくつかのパターンに分かれる。もしたまたま電波が届く場所で携帯・スマホなどで自力で「救助要請」をできた場合は、自分の現在地を自分で説明できるので、2日?数日程度で救助隊が自分を見つけてくれる可能性は高いので、食料が無いことで死んでしまうことはまず無いが、この場合は、より高い確率で生き延びられ、かつ救助を待つ間、空腹感で悩まされないように工夫する。まず携行食の残量をよく確認する。他に調理して食べる予定だった食料(米・麺類・レトルト食品・缶詰など)がリュックに入っていれば、その残量も確認する。そして、もし3?4日のうちに自分を救助隊に発見してもらえそうなら、食料をその日数で割り、1日あたり食べて良い量を計算する。ただし近づきにくい地形だったり樹木が多かったりすると救助隊が自分をうまく発見できない場合も多いし、天候悪化で救助活動が一時延期になる場合もあるので、発見されるのがさらに数日伸びる可能性も考えたほうがよい。食料の残量が十分にあればあまり問題はなく、残量が少ない場合はよくよく考える必要がある。たとえば手元に残っているのが「キャンディー5個だけ」という状態なら、まずは1日あたりキャンディー1個だけで我慢しておいたほうがよい。もし「おにぎり1個、および、キャンディー5個」ならば、傷みやすいおにぎりのほうを1日目に食べ、2日目以降にキャンディーを1日あたり1個づつ舐める。そして3日目でも救助が来ないようなら、念の為にさらに食料の消費量も減らす。たとえばこの例なら「2日あたりでキャンディー1個」(1日あたりでキャンディー半個)に減らす。(実際、山で遭難してサバイバルに成功した人は、『キャンディーを舐める場合も、1個まるまるは舐めず、少し舐めて口から取り出しビニール包装に戻して、翌日以降も「取り出して、少し舐めて、包装に戻し」を繰り返してしのいだ』というようなケースもある。)

特に食料が問題になる場合は、電波が届かない場所で歩けなくなり、携帯が通じず救助要請が出せなかった場合である。長期戦を覚悟しなければならないからである。(なぜかというと、家族・友人・同僚などがいる人ならば、数日後に遭難の可能性に気づいてくれて捜索願いを出してくれることを期待しつつじっと待つわけだが、たとえ家族・友人・同僚が捜索願いを出してくれても、登山口で「入山届け」を提出しておらずさらに自分が入る山を誰にも伝えていないとそもそもいつまでたっても発見してもらえない可能性が高いのでほぼ間違いなく長期戦になるし、たまたま入山した山を特定してもらえた場合でも登山ルートを推定してもらうのは困難で、運良く実際に自分が辿ったルートを推定してもらえた場合でも、その次に、実際に捜索が開始されるまでにまた日数がかかり、ルートも断定できず具体的な場所が分からないまま捜索隊が山に入っても見つけることは非常に困難なので、発見までに数週間?1ヶ月ほどかかってしまうことはザラにあるからである。)つまり自力で救助要請を出せなかった場合は、相当の長期戦を覚悟しなければならず、この場合に食料の問題がかなり深刻になってくる。できるだけ1日あたりの消費量を抑え、長く生き延びられるようにし、発見してもらえる可能性を残す。
海洋遭難の場合

海洋遭難の場合、イパーブ[9]のスイッチを入れるか、(あるいは自動起動タイプなら)海中に投げ込むことで救援要請をする。


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