サトイモ
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着蕾したでは、その中心にではなくサヤ状の器官が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い仏炎苞を伸長させてくる。花は仏炎苞内で肉穂花序を形成する。

サトイモの食用になる芋は、茎が変形したもので塊茎といわれる部分である[3]。種芋から芽を出して成長するにつれ、葉柄の基部が肥大して親イモとなり、その親芋の周りを囲むように芽があり子イモを生じ、さらに子イモには孫イモがついて増えていくユニークな育ち方をする[16][17][14][3]。主に子イモを食べるもの、親イモを食べるもの、親イモと子イモの両方を食べる品種がある[18]

サトイモの栽培品種2倍体 (2n=28) および、3倍体 (2n=42) である[19][20][21]。着果はほとんど見られないが、2倍体品種ではよく着果する。種子ウラシマソウなどと比較してかなり小さい。
歴史

原産地はインド中国[22]、またはマレー半島[16]などの熱帯アジアと言われているが[18]、インド東部からインドシナ半島にかけてとの説が有力視されている[7]。少なくとも、紀元前3000年ごろにはインドで栽培されていたとみられている[7]

日本への伝播ははっきりしていないが、イネの渡来よりも早い縄文時代後期と考えられている[7][23]。なお、鳥栖自生芋(佐賀県鳥栖市)のほかに、藪芋、ドンガラ、弘法芋(長野県青木村)と呼ばれる野生化したサトイモが、本州各地にあることが報告されている[24]。このうち、青木村の弘法芋群生地は県指定天然記念物となっている[25]。伝播経路は不明であるが、黒潮の流れに沿って北上したと考える研究者がいる[26]

日本の食文化とサトイモの関わりは関係が深く、古い時代から月見の宴などの儀礼食に欠かさない食材で使われており、サトイモをの代用にした「餅なし正月」の習俗も日本各地で見られた[7]戦国時代には野戦携行食として、茎葉の皮を剥いて乾燥させた保存食「干し ずいき」「芋がら」が重宝された。
栽培

栽培難度はふつうであるが、暑さに強い高温性の根菜で、乾燥を大変嫌う性質がある[27][9]。種芋の植え付けから収穫までの栽培期間は約6か月で[18]、種芋を一つずつ芽出しして地温が十分暖かくなった春に植え付けて、秋に子イモを収穫する[27][6]。初夏までに2、3回土寄せして、を少しずつ高くしていくことにより、イモが大きく育ち、たくさん付けさせる[6]。土にイモを埋めて貯蔵すると、翌年の種芋に使うことが出来る[6]。夏場の生長期に降雨量が少ないと、最も減収が著しい野菜といわれる[3]。天候に左右されやすく、雨の多い夏に良く育つといわれており[22]、乾燥に弱く高温多湿を好む性質から、夏の生育期に雨が少ない場合は水やりをする[6]。栽培に適した土壌酸度pH 6.0 - 6.5、高温性で発芽適温は15 - 30、栽培適温は20 - 30度とされ[22][18]、より高温の35度くらいまで耐える[9]。夏の暑さでも良く育つがには弱く、秋の初霜で枯死してしまう[3]連作すると腐りやすくなる連作障害が出やすいため、輪作するなどにより、同じ畑での作付けは3 - 5年は空けるようにする[27][22][18][9]
適地

熱帯アジアを中心として重要な主食になっている多様なタロイモ類のうち、最も北方で栽培されている。サトイモは乾燥に弱いことから、近場に水場がある乾燥しにくい場所[27]、つまり水田などのような湿潤な土壌で[9]、日当たり良好で温暖なところが栽培に適する。原産地のような熱帯の気候では多年生だが、冬が低温期になる日本では一年草になる[28]。日本では、一般的にで育てるが、奄美諸島以南では水田のように水を張った湛水で育てている。湛水状態で育てた場合、畑で育てるよりも収穫量が2.5倍になるとの調査がある[29][30]。水田でのサトイモ湛水栽培は病虫害予防や余りに対応した転作で有効であるため、九州本土や本州でも広がりつつある[31]。サトイモは酸性に弱く、最適とされる pH が6 - 6.5と高いことが特徴で、ジャガイモサツマイモとは性質を異にしている[9]

昭和30年代ごろまでは、高知県熊本県五家荘)などでは山間地での焼き畑輪作農業により栽培されていた[32][33]成形図説』より
植付・播種から生長期

毎年繰り返される経済栽培では、サツマイモジャガイモと同様に、専ら親株から分離した種芋を土中に埋める方法(いわゆる植付)によって行われる[15]。種芋は、適切に貯蔵され、品質特有の形をした健全なものを選ぶ[34]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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