現在の生物学では、独立した種(species)と見なされるためには、その種の中の個体に遺伝的多様性があり、個体が互いに交配して子孫を残すことができている一定規模の集団でなければならない。このため野生で自生している特定の種類のサクラがあったとしても、それが即ち独立した野生種とみなされるわけではない[8]。また種間雑種であったり、種の下位分類の変種(variety)や品種(form)であったり、全く異なる分類体系となる野生種から選抜・開発された栽培品種(cultivar)は、独立した種の数に含めない[9]。 サクラ類をサクラ属(Cerasus、ケラスス)に分類するか、スモモ属(Prunus
サクラ属(狭義のサクラ属)とスモモ属(広義のサクラ属)
スモモ属(Prunus
)は約400の野生の種(species)からなるが、主に果実の特徴から5から7の亜属に分類される。サクラ亜属 subg. Cerasus はその一つである。サクラ亜属は節に分かれ、それらは非公式な8群に分かれる[要出典]このうちサクラ亜属には100の野生の種(species)がある。
サクラ節 sect. Cargentiella (sect. Pseudocerasus)
ヤマザクラ群 - ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ など
エドヒガン群 - エドヒガン など
マメザクラ群 - マメザクラ など
チョウジザクラ群 - チョウジザクラ など
カンヒザクラ群 - カンヒザクラ など
サトザクラグループ(雑種からなる群)
ミザクラ節 sect. Cerasus
ミザクラ群 - セイヨウミザクラ など
ミヤマザクラ節 sect. Phyllomahaleb
ミヤマザクラ群 - ミヤマザクラ など
ロボペタルム節 sect. Lobopetalum
カラミザクラ群 - カラミザクラ など
サクラ属であり、やはり名前に「サクラ」と付くイヌザクラ、ウワミズザクラなどはウワミズザクラ亜属 subg. Padus(もしくはウワミズザクラ属 Padus)であり、サクラ亜属ではない。
かつてはニワザクラ、ユスラウメなどを含むユスラウメ節 sect. Microcerasus もサクラ亜属とされたが、Krussmann (1978) によりニワウメ亜属 subg. Lithocerasus に分離された。分子系統からは、ニワウメ亜属はサクラ亜属とは別系統であり、しかもスモモ亜属/モモ亜属 Prunus/Amygdalus alliance 内に分散した多系統という結果が出ている[11]。ただし、サクラ亜属をサクラ節 sect. Cerasus(通常のサクラ亜属)とニワウメ節 sect. Lithocerasus(ニワウメ亜属とウワミズザクラ亜属?)に分ける資料もある[12]。 日本に自生するサクラのうち、現在の生物学上で独立した野生種(species)と認められるのは次の11種、もしくはカンヒザクラを除いた10種である。このうちクマノザクラは2018年に発見された種で、オオシマザクラ以来約100年ぶりに発見されたサクラの基本野生種である[13][14]。日本人は歴史的にこれらの野生種とその種間雑種からサトザクラ群に代表される少なくとも200品種以上(分類によっては600品種以上[15][16][17]、または800品種[18])の栽培品種などを生み出して花見に利用してきたのである[19]。Cerasus での学名のほかに Prunus に分類にした場合に Cerasus と別の学名がある場合はその一部の主なものを P. の略表記で記載した[20][21]。 サクラはそれぞれの野生種の中で交雑を行っているが、種の枠を飛び越えて種間でも交雑することがあり、そこから有用な個体が生まれて栽培品種として見出されて花見に利用されてきた。ここでは日本で見られる代表的な種間雑種の学名と、その種間雑種を日本語で便宜的に一言で表す場合の代表和名を記す。この代表和名はその種間雑種の中で最も認知されているサクラの名前がつけられていることが多い。なお遺伝子研究が未熟であったころからサクラには学名がつけられてきているが、現在の基準からみると、その学名は必ずしも遺伝的に正確であったわけではないため、ひとつの種類のサクラに複数の学名がつけられていることがあり、混同に注意する必要がある。またその存在は確認されているが正式に発表されていない学名と和名も記載する。なお2種間による主な交雑ではなくオオシマザクラを母体として複雑な種間雑種により作出された栽培品種は狭義のサトザクラに分類され、雑種を表す × で表記されず、栽培品種群の Cerasus Sato-zakura Group(Cerasus serrulata、Cerasus lannesiana)で表される。なおここでは Prunus ではなく Cerasus で表記し、さらに略語の C. で表記した[22]。
日本に自生する野生種
オオシマザクラ (Cerasus speciosa, P. lannesiana var. speciosa) - 日本固有種
ヤマザクラ (Cerasus jamasakura) - 日本固有種
オオヤマザクラ (Cerasus sargentii)
カスミザクラ (Cerasus laveilleana, P. verecunda)
エドヒガン (Cerasus spachiana, Cerasus itosakura, P. pendula f.ascendens, P. subhirtella var. ascendens)
マメザクラ (Cerasus incisa) - 日本固有種
タカネザクラ (Cerasus nipponica)
チョウジザクラ (Cerasus apetala) - 日本固有種
ミヤマザクラ (Cerasus maximowiczii)
クマノザクラ (Cerasus kumanoensis) - 日本固有種
カンヒザクラ (Cerasus campanulata) - 人為的に持ち込まれて野生化した疑義あり
種間雑種
Cerasus Sato-zakura Group = サトザクラ(オオシマザクラを中心とした複雑な種間雑種により生まれた栽培品種)
C. × yedoensis = エドヒガン × オオシマザクラ、代表和名:ソメイヨシノ
C. × sacra = エドヒガン × ヤマザクラ、代表和名:モチヅキザクラ
C. × kashioensis = エドヒガン × カスミザクラ、代表和名:カシオザクラ
C. × nudiflora = エドヒガン × オオヤマザクラ、代表和名:サイシュウザクラ(王桜)(韓国済州島のサクラだが日本に標本があるため掲載。)
C. × occultans = ヤマザクラ × オオシマザクラ、代表和名:カズサザクラ(存在するが、種間雑種として正式に発表されていない学名および和名)
ヤマザクラ × カスミザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)
ヤマザクラ × オオヤマザクラ(種間雑種として存在するが、正式に発表されていない)