サクソフォン
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ヴィンテージ楽器を演奏するために、連結式のG♯の利点を惜しむ奏者もいるが、フロントFキイとスタック連結G♯キイは、本格的な奏者によって決定的に重要な機能とみなされている[6]
管の形状と音色

サクソフォーンは大小さまざまな楽器があるが、それぞれの楽器はほとんど相似な形状をしている。サクソフォーンの管は、マウスピースに近い方からベルに近い方に向かって、ほぼ一定の割合で太さが増しており、全体として円錐状になっている。このためサクソフォーンは整数倍の倍音を出すことができ、開管楽器に分類される。一方、構造上サクソフォーンにもっとも近い楽器であるクラリネットは、管の太さがほぼ一定の円柱状であるため偶数倍の倍音がほとんど発生せず、閉管楽器に分類される。

この開管楽器である事を奏法に応用する例として、オーバートーンとアルティッシモ(フラジオレット)が挙げられる(弦楽器のフラジオレットとは原理が異なる)。喉の開き、口腔内、アンブシュア、通常とは異なる運指を総合的に変化させ、リードの振動を通常の状態より多くする事で倍音を発生し、通常運指の音域よりも更に高音を出す事を可能にしている奏法である。20世紀後半までは主にジャズ系の奏者がアドリブの中で多用する奏法であったが、21世紀に入ってからはクラシック奏者も演奏の幅を広げる為に利用しており、またそのような現代曲も多数書かれている。

ソプラニーノおよびソプラノは一般にほぼまっすぐの直管(ストレート)である。一方、アルトからコントラバスまでは管の長さが長いため、一般には何回か管が曲げられた曲管(カーブド)の形状をしている。管の折り返し部分はその形状からU字管と呼ばれる。カーブド・ソプラノと呼ばれる曲管のソプラノやストレート・アルト、テナーと呼ばれる直管のアルト、テナーも存在するが、生産本数はそれほど多くない。管が直管であるか曲管であるかは音色にも大きな影響を与える。
材質

サクソフォンの最初期の頃から、ボディーやキイカップは複雑な形状にも対応できるように、真鍮の板材から作られていた。機械的なキイ装置は、他の形態の真鍮材から手工具で作られた、または機械加工された部品から組み立てられる。キング(英語版)は1930年代に純銀製のネックとベルを持つサクソフォーンを発表し、1960年代初頭にもこの「シルバーソニック」スキームを継続した。ヤナギサワは1980年代にこのスキームを復活させ、後に純銀製の楽器を全面的に導入した[7]カイルヴェルトP・モーリアは一部のサクソフォーンモデルのボディーのために洋銀(フルートにより一般的に使われる銅-ニッケル-亜鉛合金)を使用してきた[8]。視覚的ならびに音色への効果のため、銅含量の高い真鍮がより一般的な「イエローブラス」や「カートリッジ(弾薬筒)ブラス」の代わりに使われることもある。ヤナギサワの902および992シリーズのサクソフォーンは、真鍮製の901および991モデルに比べて、よりヴィンテージ感のある暗い音色を実現するために、銅含量の高いのリン青銅を使用している[9]。様々なブランドから高銅含量合金製サクソフォーンが販売されている。

1920年以降、ほとんどのサクソフォーンはスタックキイを操作する交換可能なキイボタンを持つ。これらは大抵は樹脂製あるいは真珠母製のいずれかである。一部のサクソフォーンは、アワビ、石、または木製のキイボタンを持つ。一部の高級モデルでは、他のキイの凸型キイタッチを形成するために高価なキイボタン素材を使用している。キイ装置のヒンジが旋回する軸およびスクリューピン、ならびにキイを休止位置に保持する針ばねおよび重ね板ばねは大抵ブルーイング(英語版)処理された鋼製あるいはステンレス鋼製である。フェルトコルク、および様々な合成素材の緩衝材が、キイの動きからの摩擦を低減し、機械的ノイズを最小化するため、有益なパッドシーリング、イントネーション(英語版)、スピード、「感覚」のためキイ装置の動作を最適化するために使用される。洋銀はその機械的耐久性からヒンジに使用されることがあるものの、こういった部品のための最も一般的な素材は真鍮のままである。銅含量の高いボディーを持つサクソフォーンも、そららの合金と比較して真鍮の機械的特性がより適しているため、真鍮製のキイ装置を持つ。
表面の仕上げ

最終的な組み立ての前に、メーカーは通常、ホーンの表面に仕上げを施す。最も一般的な仕上げは、透明なあるいは着色されたアクリルラッカーを薄く塗ったものである。黒色や白色のラッカー仕上げもある。ラッカーは真鍮を酸化から保護するために働き、その輝きを維持する。銀めっきまたは金めっきは一部のモデルで高級オプションとして提供されている。一部の銀めっきサクソフォーンもラッカー塗装される。サクソフォーンの金めっきは、金を定着させるために銀による下地めっきが必要なため、高価な処理である[10]ニッケルめっきは低予算モデルのサクソフォーンのボディーに使われており、ラッカーよりも耐久性の高い仕上げが求められる時(ほとんどは教育用モデルのサクソフォーン)に一般的に使用される。鏡面仕上げが一般的だが、艶消し仕上げのもの、アンラッカー仕上げなどバリエーションが存在する。近年、母材の化学的表面処理がラッカーやめっきに代わるものとして使用されるようになってきている。一部のサクソフォーン奏者、小売店、修理技術者は、ラッカーやめっきの種類(またはラッカーの有無[11])が楽器の音色に影響を与える要因になるのではないか(メッキやラッカーの性質で管体の振動が変化し、音色などが変わる)と主張している。管体とキー・シャフトなどのパーツ群を別色にメッキする事により、より装飾としての見栄えを高める事を狙った楽器も販売されている。
マウスピースとリード詳細は「マウスピース (楽器)」、「リード (楽器)」、「リードカッター」、および「リガチャー (楽器)」を参照テナーサクソフォーンのマウスピース、リガチャー、リード、およびキャップ

サクソフォーンはクラリネットのものと似たシングルリードマウスピースを使用する。それぞれのサイズのサクソフォーンは異なるサイズのリードとマウスピースを使用する。

ほとんどのサクソフォーン奏者はダンチクから作られたリードを使用するが、20世紀半ばからは繊維強化プラスチックやその他の複合材から作られたリードも作られている。サクソフォーンのリードはクラリネットのリードとはわずかに違ったプロポーションで、同じ長さに対して幅が広い。リードは様々なブランド、スタイル、および強度のものが市販されている。サクソフォーン奏者は、強さ(硬さ)や素材の異なるリードを使って、どの強さやカットが自分のマウスピースやアンブシュア、生理、演奏スタイルに合っているかを実験する。

マウスピースの設計は音色に重大な影響を与える[12]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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