サウンド・システム
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1948年から1962年に連邦移民法によって移民が制限されるまで、イギリスに移住するジャマイカ人は年平均3万人を下らなかった。この大量移民時代はサウンドシステムという文化が世界に知れ渡るきっかけともなった。1964年、ジャマイカをはじめとするカリブ系移民によって始められたノッティング・ヒルカーニバルは現在も続く世界最大のサウンド・システム・イベントに成長し、毎年多くの観光客を集めている。

また、1967年にジャマイカからアメリカ合衆国ニューヨークに移民したクール・ハークは、当地で自身のサウンド・システム、ハーキュローズを立ち上げ、ヒップホップ音楽誕生に大きく貢献した。

ジャマイカ系移民が少ない国や地域でもサウンド・システムは徐々に浸透していった。日本で初めて活動したサウンド・システムは1984年ランキンタクシーが立ち上げたタクシー・ハイ・ファイである。
ラバダブポーランドのサウンド・システム、ラブ・パルスによるラバダブスタイル

サウンド・システムにはディージェイがいて、歌を抜いた曲(ヴァージョン)に合わせて自由に即興でトースティングをしていた。これが発展して、多くのディージェイが一堂に会して、セレクターのかけるヴァージョンに即興でトーストし、次々にマイクを渡していく1980年代に隆盛を極めたショーの形式を「ラバダブ・スタイル (rub-a-dub style) 」または「パート・ツー・スタイル (part 2 style)」 と呼ぶ。サウンドの選曲よりもむしろディージェイに注目が集まる形式だ。またそのようなショーを売り物にするサウンド・システムのことを「ラバダブ・セット」と呼ぶ。通常ショーの前半は新人のディージェイが出てきて、最後は人気ディージェイが出てくる。このラバダブによって、ディージェイのトーストの技術も発展し、現在のダンスホール・レゲエの隆盛に大きく寄与している。この時代のラバダブ・セットとしてはキング・スターガフ、キラマンジャロ (Killamanjaro)、キング・ジャミーズ等が有名。
ジョグリン

これに対して、90年代前半以降流行したサウンド・システムが2台のターンテーブルを巧みに操り次々とレコードをかけるショーの形式を、「ジョグリン (jugglin)」と呼ぶ。また、そのようなサウンドを「ジョグリン・サウンド」または「ソウル・セット」という。ジョグリン1990年代中葉以降ではもっとも頻繁に行われているショー形式で、純粋に踊ることを目的とした、ダンスホール本来の味を出したショーと言える。1990年代を代表するジョグリン・サウンドとしてはストーン・ラブ (Stone Love) 、レナッサンス (Renaissance) 等がある。
現在[いつ?]パソコンを使い選曲するフランスのサウンド、パイレートダブ

2000年代以降、優れた音響設備を備えたクラブが増え、また、そうした屋内施設での興行が一般化したために、サウンド・クルーがスピーカーを保有する理由はなくなってきている。そのため、スピーカーセットを保有していないクルーも「サウンド・システム」と呼ばれる傾向がある。しかし、歴史と一定の経済力のあるサウンド・システムは、巨大なウーハーを常に持ち運んでいるし、常にダブ・プレートを発注し続けている。

しかしながら、従来のターンテーブルとレコードを使用しての形式にも変化が表れている。以前のように市販の曲やダブ・プレートをターンテーブルでかける、というスタイルが依然として残っているものの、音響機器の発達により、2000年代以降はCDやスクラッチ・ライブなどのパソコンから曲を直接プレイするという方式が採用されるようになった。
サウンド・クラッシュ

サウンド・システムのもっとも特徴的なショー形式が「サウンド・クラッシュ (sound clash) 」(または単にクラッシュ)である。これはサウンド・システム同士が、決まった時間で交互にそれぞれの持っているレコードやダブ・プレートを、例えば1ラウンド30分で4ラウンドといったルールのもとでかけ、勝敗を決めるものである。記録に残る最初のサウンド・クラッシュは1952年に行われたトム・ザ・グレート・セバスチャン対カウント・ニック・ザ・チャンプであるが[2]、当初は相手サウンドのケーブルを切る、スピーカーを倒すなど直接的暴力に繋がることもしばしばあったため、徐々に下記のようなルールが整備されていった。

1995年にジャマイカのポートモアにて行われたニューヨークのキング・アディーズ (King Addies) 対ジャマイカのキラマンジャロのクラッシュは一万人を動員した。当時最も勢いと実力のあったサウンド・システム同士のこの伝説のクラッシュ以降、クラッシュは主にダブ・プレートのみでの勝負というのが暗黙のルールとなった。これ以降、多数の「クラッシュ・サウンド」、すなわちサウンド・クラッシュを戦うことに重点を置いたサウンド・システムが世界中に存在している。サウンド・システムにとってサウンド・クラッシュは、実力を測るための最も分かり易い指標であり、ビッグ・サウンドになるためにはクラッシュで勝つことが一番の近道となっている。1990年代後半以降は「ワールドクラッシュ」などのサウンドクラッシュの世界大会が開かれるようになり、日本のマイティ・クラウンやドイツのセンチネル、カナダのレベル・トーンら、ジャマイカ以外のサウンドが度々優勝した。このように日本やヨーロッパのサウンドが活躍する一方で、メトロメディア、ブラックキャットなどジャマイカのサウンド・システム達も活躍し続けている。
ルール

サウンドクラッシュとはダブプレートやMCの発言を用いて敵のサウンドを攻撃し合い、どちらのサウンドが盛り上がったかを観客が判定するものである。一方的な展開になった場合を除き、最終的に「チューン・フィ・チューン (tune fi tune) 」または「ダブ・フィ・ダブ (dub fi dub) 」と呼ばれる、1曲ごとに交互にかける延長戦に入り、勝敗を決める事が多い。1990年代中盤までは1ラウンドの時間も長く、チューンフィチューンを制したサウンドが勝者となる場合が多かったが、ワールドクラッシュが人気を集めて以降は、「バイアス (bias、えこひいき)」による判定を防ぐために各ラウンド毎にどのサウンドが勝ったかをその都度決めて、最終的に獲得したラウンド数で勝者を決める形式で行われるようになった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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