裁判はアラビア語のみで行われ、仮に被告がアラビア語を理解できなくても通訳なしで一方的に進められる。また、証人はイスラム教徒の男性がアラビア語で証言しなければ証拠能力を認めない。このため、アラビア語を理解できない外国人労働者には極めて不利な裁判になる。
酒やポルノ類の持込などに対しては、重刑が課せられる。イスラム思想に則り法整備をしており、麻薬、強姦、殺人、同性愛においては死刑となる。また窃盗においては手首切断や、飲酒においては鞭打ち刑などの身体刑を行っている(鞭打ち刑は2020年4月サウジアラビア最高裁により廃止)。裁判についても、被告人が外国人である場合、理解できないアラビア語で公判が進められたりするため、公平でない上、判決を容認しない場合は、弁護士などは資格を剥奪される。これらの法令は西欧各国のメディアにより非難されている。
2005年5月には、スリランカから出稼ぎに来ていたリザナ・ナシカというメイド(事件当時17歳)の与えたミルクが乳児の気管に詰まり、救命措置を取ったにもかかわらず死亡してしまった。これが公判では事故死ではなく殺人であると判定され、死刑が宣告された。スリランカ政府は寛大な処分を求めたにもかかわらず、2013年1月、斬首刑が執行された。「リザナ・ナシカ」も参照
ムハンマドの慣例に従い、9歳女子との結婚を認めるというイスラーム法が存在するため、10歳前後での早婚も公に認められている[23][24]。一例として親の借金のかたに結婚させられる8歳の幼女までも存在し[25]、上記のイスラーム法に定められた年齢になるまで性行為を行わないことを条件に結婚の継続が承認されている[26]。これに関しては批判も少なくないが、サウジの大ムフティーであるアブドルアジズ・アール=アッシャイフが、イスラーム法上10歳の少女でも結婚・性行為の対象とすることができ、批判者は少女への不正義を行っていると逆に批判した[27]。
名誉殺人も存在しているとされ、認められれば罪に問われないことが多い。一例として家族を他の宗教に改宗させようとした外国人とその家族を射殺した男は、名誉殺人と認定され無罪判決が下った。しかしながらサウジの諮問評議会はこれらの問題に対し対策を促しており、幼女との結婚や名誉殺人は一般大衆にも認められていないという点には注意すべきである。また、同性愛の罪で死刑に処せられた者は確認されておらず、斬首もテロリストなどの重罪犯にしか適用されず、窃盗もほぼ全員が5年以下の懲役ですんでいる。最近[いつ?]はハッド刑はなくなってきているともされる。なお、斬首より軽いとされるのが銃殺、その下が一般的な絞首刑である。
2019年末には男女分離政策(レストランなどにおける)の撤廃を宣言した。しかしながら、最近[いつ?]は男女分離撤廃を大衆が自然に遂行している。またディーヤと呼ばれる制度があり、被害者の法定相続人が加害者を許した場合は罪に問われない。これは金銭によって示談になった場合にも適用される。2020年1月1日には、一日五回の礼拝の時間も(実質24時間)仕事や店の営業を許可した。 保守的なサウジアラビアの司法制度であるが、近年になってからはさまざまな司法制度改革が行われている。まず、建国以来、長年にわたって憲法がなかったが、1993年3月1日に公布された統治基本法が実質的な憲法となった。そして長らくシャリーアでは特許や著作権などの欧米では一般的な権利について認めていなかったが、1989年に特許と著作権に関する法律が施行され、1990年には特許を認定する特許局が設置された。サウジアラビア人の特許が初めて認められたのは1996年のことである。特許は15年間有効とされ、さらに5年間の延長が可能である。ただし、サウジアラビアで公式の暦はヒジュラ暦であり、1年がグレゴリオ暦にくらべて11日ほど短いため、期限切れがグレゴリオ暦のそれよりも若干早く来るという特徴がある。 2007年10月の勅令に始まり、さらに2009年2月14日の勅令で大規模な司法制度改革が行われた。今までの最高司法委員会に代わり最高裁判所、控訴裁判所、普通裁判所が設置され、日本や欧米のような三審制の裁判が行えるようになった。続く2009年2月14日の勅令では大規模な人事異動が実施され、初めての女性副大臣が誕生するなどリベラル派人材への大幅入れ替えが実施されている。 国際人権規約(自由権、社会権)に批准しておらず、厳格にシャリーアを執行する姿勢に対して、欧米諸国から批判が多々ある。しかし、批判国に対する石油輸出停止などの経済制裁をたびたび実行しているため[28]、これらの報復を恐れて国交断絶や経済制裁などを発動する先進国は皆無となっている。また中東有数の親米国家であることから、アメリカ合衆国は、アメリカ中央軍の部隊を駐留させて中東の反米諸国を牽制している。 つまり、このように国民を抑圧している独裁体制のサウジアラビアの王政は、イランのイスラム革命や以前のイラクのバアス党による社会主義革命が自国に波及する事を警戒して米軍を駐留させ、アメリカに「所領安堵」してもらっているのである。しかしイスラム世界ではアメリカは「イスラム社会共通の敵」と見做され、また1991年の湾岸戦争以来同国に駐留する米軍の兵士たちが酒を飲んだり肌を露出させたりして民衆の顰蹙を買ってしまい彼らが更に反米化するという悪循環を抱える事となっている。そして同国はイスラム教の聖地であるメッカとマディーナを抱えており、そのような国に「異教徒」であるアメリカ軍が大量に駐留している事もかえってイスラム原理主義を刺激し、アルカーイダ等の過激派組織が国民の共感を得てしまっているという問題もある[29]。 基本統治法は第26条で「王国はイスラム法にのっとり人間の権利を保護するものとする」と明文規定するが、ここに定める“人間の権利”とはイスラム法における権利であって、西洋的な「人権」とは異なる概念である。また、雇用主による外国人就労者に対するパスポートの取り上げ(スポンサー制度)も横行しており、国際労働機関から再三にわたり改善勧告を受けている。近年、スポンサー制度を一括管理する民間機関の設置が議論されているが、本格的な実施には至っていない。 2014年2月には、「社会の安全や国家の安定を損なう」全ての犯罪行為、「国家の名声や立場に背く」行為をテロリズムと判じ、処罰対象にする対テロ法を施行した。これにより捜査当局は“容疑者”の尾行や盗聴、家宅捜索が可能になる。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「当局がすぐに平和的な反体制活動家に対して新法を利用するだろう」と警鐘を鳴らした。 2020年4月、サウジアラビア最高裁は、「世界の人権基準に合わせる」として、むち打ち刑の廃止を宣言した[30]。
司法改革の歴史
人権「イスラームと児童性愛」および「サウジアラビアにおける女性の人権」も参照
国際関係詳細は「サウジアラビアの国際関係(英語版