サウジアラビア
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金融センターとしても整備されており著名な投資家も多いが、2010年9月、英国のシンクタンクのZ/Yenグループによると、首都リヤドは世界第69位の金融センターと評価されており、中東ではドバイカタールバーレーンと比較するとまだ出遅れている[61]

製造業などは小規模なものしか存在していない。巡礼者や業務渡航以外の一般観光客を受け入れていなかったことから観光業は低調であり、メッカの巡礼者を相手にするだけであった。こうした状況を打開するために、ムハンマド・ビン・サルマーンが中心となり、一般向けの観光ビザの解禁による観光産業、外国資本受け入れによるIT産業、半導体製造など新たな産業を育成する改革プラン「ビジョン2030」を打ち出すなどしているが、法整備の遅れなどにより天然資源開発関連以外の分野においては外国資本導入が進んでいない[62]
水資源

サウジアラビアの水資源は、古くはオアシスなどの湧水と井戸からの取水に頼ってきた。聖地メッカではザムザムの泉と呼ばれる湧水を頼りに定住生活が営まれてきた。1932年に300メートル以上の深井戸の掘削に成功すると化石水の採取により水の供給量は大幅に増加し農業生産を支えている。汲み上げられる地下水は、アラビア半島が湿潤だった1万年以上前に降った雨水が地下の帯水層に閉じこめられた化石水であり、今後補給されることはほぼない。このため各地の井戸では水位の低下が深刻化し、現在のペースで水を使い続ければ、地下水資源は2040年までに枯渇すると予測されている。

サウジアラビアは世界最大の海水淡水化プラント稼働国である。その多くは省エネの逆浸透法 (RO:Reverse Osmosis) 海水淡水化プラントであり自力で建設し自国に逆浸透膜 (RO膜) 工場をつくるなど特にサウジ政府は力を入れている。その88%は農業用水で残りは工業用水と飲料水に使われている。20余りの主要都市に人口の80%が集中し、都市部ではオアシスや地下水の水源だけでは全く不足するため、海水淡水化プラントからの供給無しには生活できない。アシュベールにある世界最大のプラントは毎日100万トンを生産しており、国全体では年間で12億2千万立方メートルの水を海水淡水化によって得ている。プラントの多くは1970?1980年代に建設されており、2000年ごろから多くのプラントが老朽化を迎え始め、メンテナンスと建て替えのために多くの事業が日本を始めとする海外へ発注されている。

主要都市では下水を再処理して都市周辺の農業用水に回すための浄化施設がある。海水淡水化プラントから供給される水は1リットルあたり2リヤルのコストがかかり、さらに内陸部へ送水するのに1 - 2リヤルのコストがかかるため、大変に高価な水である。しかし、水道代は10トン1リヤルほどで、一般家庭の水道代が1か月4リヤルを超えることはあまりない。送水設備とコストの関係から主要都市部以外への送水はあまり活発ではなく、地方では古来からの井戸とオアシスの水源に頼っている。地方の内陸都市などではダムをつくり雨水をためてそれを使っており、リヤドの真ん中を通るワディ・ハニーファもダムなどによって川と化している。海水淡水化プラント自体は、サウジ国内で15から20箇所ほどあるとされる。

リヤドなど内陸部でも毎年冬場になると数日は雨が降る[63]。ただ、砂漠気候であるため、降雨はわずかな期間に集中、数日経てば再び乾燥するため水資源としての価値はない。近年になってからは降雨量は増加傾向にあり、雨が降ると都市の低地が水没するようになっている。もともと砂漠であるため都市部には排水路などの水害対策の設備が全くなく、毎年水害によって数十人の死者が出ている。膨大な地下水のくみ上げと淡水化プラントによって総雨量を超えるほどの水が使用されていることが原因ではないかと言われており、実際にここ20年あまりでサウジアラビアの気候が穏やかになってきている。
国民

国籍

サウジアラビア国籍  69%
外国籍  31%
詳細は「サウジアラビアの人口統計
(英語版)」を参照
民族サウジアラビアの人口密度分布図

広大なアラビア半島には古来から続く無数の部族勢力が跋扈しており、サウード家による長年の中央集権化政策・部族解体政策にもかかわらずサウジアラビア人という民族意識の形成には至っていない[要出典]。部族社会が定住民だけでなく遊牧民から形成されていること、各地に点在する少数派宗教なども状況を難しくしている。サウード家自身、中央集権化政策が頓挫するたびに部族間・宗教間のパワーバランスを権力保持に利用している[要出典]。しかしながら、アラビア半島諸国の統一とオスマンへの反逆をワッハーブ運動[注釈 3]の名の下成功させたという点では、サウジ人という意識もあり国民国家とも呼べる。

概ねサウジの住人は、サウジ国民という意識の前に「どの部族の出身か」(部族対立)、「どの地方の出身か」(地方対立)、「どの宗派を信じるか」(宗派対立)、「どの階級に属するか」(階級対立)で、自らを認識しているという[要出典]。

統計局が発表した、2010年の人口統計は27,136,977人で、サウジアラビア国籍が18,707,576人と全体の69%に過ぎず、外国人が8,429,401人となっており、総人口の31%が外国人労働者である。最も多い外国人はインド人とパキスタン人でそれぞれ130万?150万人に達する。次いで、エジプト人、イエメン人、バングラデシュ人、フィリピン人、ヨルダン人、インドネシア人、スリランカ人、スーダン人などが多くなっている。労働省によると、登録されている家庭内労働者120万人のうち、女性48万人がメイド(アラビア語:?????)として登録されている。
言語

言語は公用語が古典アラビア語で、日常生活での共通口語は、サウジアラビアの現代口語アラビア語変種である。

アラビア語ヒジャーズ方言 (約600万人) - アラビア半島の紅海沿岸の地方

アラビア語ナジュド方言 (約800万人) - アラビア半島の中央部にある高原地帯

アラビア語湾岸方言 (約20万人) - ペルシャ湾岸

外国人労働者の母語として、いくつかの言語が話されている。

タガログ語 (約70万人)

ロヒンギャ語 (約40万人)

ウルドゥー語 (約38万人)

アラビア語エジプト方言 (約30万人)

宗教メッカカアバ神殿メディナのナバウィモスク

宗教構成(サウジアラビア)

イスラム教スンナ派  85%
イスラム教シーア派  15%
「サウジアラビアの宗教(英語版)」を参照

宗教はイスラム教スンナ派国教である。このため、国民が他の宗教を信仰することは禁じられており、サウジアラビア国籍の取得の際にもイスラム教への改宗が義務付けられている。西部にイスラム教の聖地であるメッカがあるため、世界各地から巡礼者が訪れることもあってイスラム世界においての影響力は最も大きい。

このため、サウジアラビア国民はイスラム教徒が100%であると公表されているが、これは他の宗派や宗教の存在を公式に認めていないという建前上の見解によるものである。実際には国内に多数のシーア派は住んでおり、財団法人中東経済研究所の調査によると、シーア派はイランと地理的に近い東部州に多く東部州の人口の42.5%を占めており、サウジ全土では6.4%になると推定されている。また、イエメンに近い南部のアブハーなどもシーア派(イスマーイール派ザイド派)が多いとみられる。アメリカ合衆国中央情報局による統計では、スンナ派が85?90%、シーア派が10?15%と推計されている[64]

多数のシーア派の居住する東部地方は、アハサーと呼ばれていた土地で、サウジアラビアに征服され併合された土地である。初代国王アブドルアジーズは東部州を併合するのに際しシーア派住民による一定の自治を認めたが、時代と共に自治権を奪われ名目上は存在しないことにされてしまったという経緯がある。このため、長年にわたりシーア派の宗教機関は非合法な存在とされてきた。湾岸戦争以降は、反体制運動を行っていたシーア派を容認、和解した。

湾岸戦争以降は、他の宗派を容認する方向へ方針転換を行い、法律上もシーア派以外にも他宗教の存在を公式に認めている。近年では、他宗教の信仰も限定的ながら解禁されてきている[要出典]。しかし、これは建前上のものとされ、地方では他宗派への差別的政策が未だ執られている。また、他宗教の容認は国政の一層のイスラーム化を求めるイスラム原理主義への改革運動の激化を引き起こし、サウジアラビア人によるイスラーム主義武装闘争派のテロを引き起こした。このため、各個人や集団による私的なジハードを禁止するために、国王の勅令がなければ禁止とする法令が出された。

国民の4%はキリスト教徒だとも言われているが、内務省の統計では外国人居住者(数十万人のアメリカ軍関係者と外国人)もキリスト教徒に含まれている。近年では宗教指導者たちが示す宗教的見解と民衆の生活の乖離が進み、国民が宗教的な指導に従わなくなってきており、宗教指導者がハラーム(禁忌)であるとファトワー(宗教見解)を出したものの、多くの民衆が禁忌に従わず利用を継続することが珍しくなくなった。代表的なものとしてポケモンバレンタインデークリスマスなどがある。

民衆が宗教指導者の言うことを聞かなくなった結果、宗教指導者が今まで以上に原理主義的で過激な発言を繰り返したり、宗教警察である勧善懲悪委員会による取り締まりを過激化させる傾向にある。


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