その後、増加していき、2023年は前年より減少したものの172人であり世界で第3位となった。更に、2022年には196人が執行され、1993年以降で最も多く執行された年でもあった[8]。罪状による内訳は、最も多いのが殺人のみの105人、次いでテロ関連の犯罪が25人、殺人を伴う薬物関連の犯罪が10人であり、全執行者の約87%がこの3つの犯罪により執行された。なお、死刑にする犯罪は意図的な殺人を伴う「最も重大な犯罪」に当たらない罪で執行された者は、殺人既遂とテロ関連の犯罪で執行された者を除いた場合、17人であった。
そして全体の約22%(38人)がサウジアラビア以外の国籍者であった。そしてイスラーム刑法でみた場合、68人がキサース(被害者と同等の苦痛を受ける報復刑)、52人がタージール(裁判官の裁量で決まる刑罰)、50人がハッド刑(特定の罪に関してイスラーム刑法で定められた刑罰)、残る 2 人は種類が不明であった[9]。
2015年以降は前述の2020年と2021年を除いて100人以上執行されている。
サウジアラビアの王族でも例外はなく、実際にファイサル・ビン・ムサーイド王子が叔父のファイサル・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール・サウード国王を射殺し、大逆罪で処刑された事例がある。 サウジアラビアでは、中国の死刑と同様、人命を奪わない犯罪に対しても死刑が適用される場合が多い。
死刑が適用される犯罪
殺人
サウジアラビアにはディーヤと呼ばれる制度があり、被害者の法定相続人が加害者を免責した場合は減刑される。これは金銭によって示談が成立した場合にも適用される。
名誉殺人の場合は罪に問われない。
麻薬の密売
同性愛
建前上では重罪としているが、実運用においては罰金刑や鞭打ち刑が科されるだけで処刑されることは稀である。
サウジにおける同性愛についてはen:LGBT rights in Saudi Arabia
不倫と婚前性交渉(ズィナーの罪)
ただし、通常、男性は「女が誘惑した」などと言い逃れをし、司法も多くの場合それを認めるので、実際には、男性は死刑にならず、女性のみが死刑になることも少なくない。
強姦
ただし、相手の女性が異教徒であれば、刑罰は減免される。また、婚外セックス(ズィナー)同様、『女が誘惑した』と言い逃れをすることで、死刑を逃れる事例が少なくない。また、女性が証人の用意ができず、逆に、偽証罪で罰せられることもある。また、夫婦の間での性交渉は合法とされている。
飲酒
飲酒による死刑執行例は稀であるが、ほとんどの場合は鞭打ちの刑に科せられる。飲酒以外のアルコールも同様の見方。
売春
国王に対する冒涜
イスラム教(特にワッハーブ派)に対する冒涜
神や預言者(ムハンマド)を冒涜するような言論、出版物の作成、所持
他の宗教を信仰すること(1993年の基本統治法施行以降は緩和された)
ワッハーブ派の信者を他の宗派や宗教へ勧誘する行為
魔術を使うこと
偶像崇拝と見なされる収集物の購入
サウジアラビアでの判例
1980年1月9日 - アル=ハラム・モスク占拠事件の首謀者であるジュハイマーン・アル=ウタイビー(en:Juhayman al-Otaibi)と67人の仲間が同日中に4ヶ所の処刑場で公開処刑された。
1992年 - イスラム教シーア派の信者であったサディク・アブド・アルカリム・マル・アラーはシーア派の経典をサウジアラビアに密輸し、改宗を拒否したために死刑を宣告され、1992年9月3日にアルカティーフで公開処刑された。
1997年5月 - 強盗傷害罪でフィリピン人のルエル・ジャンダとアーネル・ベルトランの2名が斬首刑になる[10]。
1999年 - 妹を他の宗教に改宗させようとした外国人と妹を射殺した男性が名誉殺人として無罪となった。
2002年 - 姦通罪で裁かれた外国人労働者は、強姦であったと訴えたが採用されず、死刑とされた。一方、加害者には鞭打ち刑の判決が出された。
2005年5月 - 魔術を使用したとされる霊媒師の女性が死刑となった。
2008年6月 - 2005年5月、スリランカ人のメイド、リザナ・ナシカ(事件当時実際は17歳だったが、22歳と詐称[11])が赤ん坊にミルクを与えた際に気管に詰まらせる事件が発生。ナシカは救命措置を取ったが赤ん坊は死亡した。この事件は過失致死ではなく殺人とされたことや、ナシカの年齢が「22歳」であったとみなされ、死刑判決が下りることとなった。いったん死刑の執行は停止されたが、2013年1月9日に斬首刑が執行されたと発表した[12][13]。
2011年6月18日 - 2010年1月、インドネシアへの帰省を雇用主に求め、認められないばかりか暴行をされ反撃し殺害したインドネシア人家政婦が2011年6月18日に斬首刑により執行された。この事件により、後述するように、インドネシア政府は自国民がサウジアラビアへ出稼ぎに行くことをサウジアラビア政府がインドネシア人労働者の人権保護に関する覚書に署名する日まで禁止する措置を8月1日から実施することを決めている[13]。
2011年12月12日 - アミナ・ビントゥ・アブドゥルハリム・ナサル(サウジアラビア出身の死刑執行当時は60代女性)は、魔術を用いて病気を治すことができると称し、お金を騙し取った容疑で2009年4月に逮捕され、2011年12月12日にジャウフ州で斬首刑により執行された[14][15]。
2016年1月2日 - 爆弾などの攻撃による関与した過激派が死刑を執行された。シーア派指導者ニムル・バキル・アル・ニムルを含み、47人であった[16]。イラン政府から強く非難され、サウジアラビア大使館も放火される事件も起きた。
2019年4月23日 - レバノン・ベイルート(CNN)テロ関連の罪で37人が一斉に死刑される。この内の1人は執行後、遺体を磔にしている。そして、執行された者の内11人がイランでのスパイ行為であった。また、捜査段階で拷問が行われいると指摘されている[17][16]。
2022年3月12日 - 過激派勢力やアルカイダなどの関連の罪で、81人に死刑を言い渡された。イエメン人7人とシリア人が1人が含まれていた[18]。
執行方法リヤドにある公開処刑が行われる広場
公開処刑と非公開処刑が行われており、非公開の死刑数を知る手段がないため、統計に表れているのは公開処刑された人数のみといわれている。公開処刑されるのは主に「不道徳な行為を行った者」とされているが、「不道徳な行為」の基準についてははっきりしていない。
死刑執行はモスクの近くにある、「首切り広場」と呼ばれる白いタイルが敷き詰められた場所で金曜日の礼拝の後で執行される。殺人など被害者遺族がいる場合には遺族が処刑場へ呼ばれる。
イスラム法の制度ディーヤに基づき、最後の最後まで死刑囚を許すかどうか死刑執行人が遺族に問い続け、このとき遺族が許せば場合は減刑され、死刑執行が中止される。