サイバー戦争(サイバーせんそう、英語: cyberwarfare)とは、インターネット及びコンピュータ上で行われる戦争行為のことである。クラッカー等の集団や、国家によって組織されたサイバー軍および情報機関により、敵対する国家、企業、集団、個人等を攻撃する。攻撃の内容は軍事・行政や民間の経済・インフラストラクチャーにおける情報システムの機能停止や不正操作、情報の窃取など幅広く、サイバー犯罪とも関わっている。
かつてはサイエンス・フィクションにおける架空の事象であったが、技術の進歩により現実のものとなっている[1]。サイバー戦争。ウイルス「シャムーン(Shamoon)」。2012年。『IT決済システム無くしてガソリン無し』と書かれている。 企業間の技術革新競争、国家の利権や領土問題の国民感情が、サイバー戦争の原因になることが多い。主に想定される「敵」やその他の第三者が管理するサーバー及びコンピュータを目標とする。「敵」の場合には侵入、諜報、企業のイントラネットに不正アクセスして技術情報や意思決定等のデータを収集、サービスの停止、もしくは破壊が行われる。「第三者」の場合には他のコンピュータを攻撃する為の踏み台として侵入、乗っ取り、バックドアの設置、攻撃拠点としてのプログラム、ウイルス、ワームの設置を行う。 広義には、利益誘導、世論形成、煽動を目的とするインターネットを使用したプロパガンダを含む[1]。 これらの活動に備え、平時から自国への販売が制限されたセキュリティーソフトを不正に入手するなど、調査活動が行われている[2]。 アメリカのサイバーセキュリティ企業ファイア・アイによると、サイバー攻撃は安上がりであるため、60カ国が専門部隊を運用している[3]。陸上自衛隊通信学校の田中達浩元校長は、各国のサイバー部隊の実力トップ5をアメリカ、中国、ロシア、イスラエル、北朝鮮の順と評価している[4]。 ベルギーに置かれた「情報通信局」が北大西洋条約機構 (NATO) とその加盟国に対するサイバー攻撃を監視している。自前のサイバー防衛力が弱い東欧諸国などが攻撃された場合、48時間以内に即応チームを派遣する態勢をとっている[7][8]。 ロシアでは、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のほか、ロシア連邦保安庁(FSB)などがサイバー戦に従事している。また、ロシア政府に近いとされる企業・インターネット・リサーチ・エージェンシーによるSNSを用いた世論操作もおこなわれ、クリミア半島侵略、アメリカ合衆国大統領選挙への干渉、2022年のウクライナ侵攻などが具体例として挙げられる[1]。 イスラエルでは、国防軍参謀本部諜報局(アマン)傘下の8200部隊がサイバー戦の主力となっている。 2011年5月25日、中国国防省の報道官は、定例記者会見において広東省広州軍区のサイバー軍に関する質問を受け、その存在を認めた[9][10]。平時から各国対してに大規模な攻撃や情報収集を行っている[2]。 北朝鮮サイバー軍は約7,000人規模と推測されている[11]。 日本では2014年3月26日、防衛省・自衛隊にサイバー防衛隊が新編された[12]。
概要
各国のサイバー戦争部隊・軍
アメリカ合衆国詳細は「アメリカサイバー軍」を参照
北大西洋条約機構
ロシア詳細は「ハイブリッド戦争」を参照
イスラエル
中華人民共和国詳細は「中国サイバー軍」、「中国人民解放軍#諜報活動・政治工作」、および「en:Cyberwarfare by China
朝鮮民主主義人民共和国
日本
脚注[脚注の使い方]
出典^ a b c 株式会社インプレス (2022年2月28日). “【海外ITトピックス】 ウクライナのサイバー戦争 ロシアの侵攻の裏で
^ a b 日本放送協会. “中国軍関係者指示でソフト不正購入未遂か 元留学生に逮捕状
^ “サイバー攻防・最前線(下)世界60ヵ国に専門部隊 「安い兵器」全面禁止難しく 企業は自衛力強化を
^ “「北朝鮮サイバー攻撃に日本は実力不足 北のハッカーを目指す若者のハングリー精神はすさまじい」と田中達浩・元陸上自衛隊通信学校長
^ “ ⇒米軍、強力な「サイバー戦争部隊」を秘密裏に組織(上)”. WIRED.jp (2005年4月20日). 2010年12月21日閲覧。