検査法は主に以下が用いられる。 初期感染時と再賦活時が感染活動期であり、基本的に一般健常人においては安静での経過観察となる。免疫低下状態(後天性免疫不全症候群・免疫抑制剤での治療中等)・臓器移植後(造血幹細胞移植後・腎移植後等)・悪性腫瘍(白血病等)等の基礎疾患のある患者に対して、抗ウイルス薬での保険治療適応とされている。また、先天性感染感染児に対する抗ウイルス薬投与は難聴の改善効果が認められている。
抗体検査
CMV-IgG:既感染者で陽性を示す。日本では成人の90%以上が陽性とされるが、陽性率は低下している。
CMV-IgM:初期感染・再賦活時に上昇を示す
抗原検査
C7-HRP:CMVpp65抗原をペルオキシダーゼ標識ヒトモノクローナル抗体で染色し、鏡検下に細胞質が栓塞された好中球数を検索し評価していく。陽性細胞数/好中球10万個
C10/C11:CMVp65抗原のモノクローナル抗体とアルカリホスファターゼ標識2次抗体で染色し、鏡検下に細胞質が栓塞された好中球数を検索し評価していく
ウイルス検査
CMV-DNA:PCR法にてウイルス量を直接測定する
治療
ガンシクロビル Ganciclovir (GCV):デノシンR
点滴製剤
バルガンシクロビル Valganciclovir (VGCV):バリキサR
経口内服錠剤
ホスカルネット Foscarnet:ホスカビルR
点滴製剤
レテルモビル
経口内服錠剤 点滴製剤
シドフォビル
2022年現在、有効なワクチンは実現していないが[14]、モデルナがRNAワクチン「mRNA-1647」を研究している[27][28]。 健常CMVキャリアにおけるCMV特異的細胞傷害性CD8+T細胞の比率は中央値で10%と予想以上に高く、40%に達することもある[29]。また、加齢に伴ってこの比率が上昇する[30][31]。どの様な機構によるのかは未だ不明であるが、加齢に伴ってこのCMV特異的T細胞の少クローン性の増大 (memory inflation) を生じると、ナイーブT細胞が減少しCMV以外の感染症に対する防御能の低下をきたす[32][33]。一方、長寿の家系ではこの様な現象が見られない[34]。これらの事実からCMVに対するT細胞反応の増大が、免疫の老化(疲弊)と密接に関連し、その重要な指標と考えられている[35][36]。 この疲弊した細胞傷害性CD8+T細胞は、T細胞抑制性のCD28スーパーファミリー受容体のPD-1 (programmed death-1) 受容体を発現しているという特徴がある。CD8+T細胞は、リガンドであるPD-L1によるPD-1の活性化によってその機能が抑制される。PD-1/PD-L1の相互作用を阻害すると抗ウイルスCD8+T細胞の働きが回復しウイルスの量が減るので、CMVはこの経路の継続的な活性化を行うことにより、免疫によるウイルスの除去能を低下させている[5]。 CMVそのものは同じヘルペスウイルス科のEBウイルスのように悪性腫瘍を引き起こす腫瘍ウイルス(癌ウイルス)とは一般的には考えられていない[37]。しかしCMVは悪性腫瘍を引き起こすというよりはむしろ、CMVが腫瘍細胞に感染し、腫瘍細胞に腫瘍免疫や抗癌剤に対する抵抗性を獲得させ悪性度を高める(oncomodulation:オンコモデュレーション)可能性があることが、近年の研究にて明らかとなっている[37]。このCMVによる腫瘍細胞のoncomodulationは1996年にドイツの研究者らが提起している[38]。UL76ウイルス蛋白は、染色体の変異 (chromosomal aberrations) を誘導する。IE1ウイルス蛋白は、テロメラーゼ活性 (telomerase activity) を上げる。IE1・IE2・pUL36・pUL37・pUL38ウイルス蛋白は、アポトーシスを阻害するウイルス蛋白(anti-apoptotic proteins)で、腫瘍細胞の不死化を亢進させる。IE1・pUL16・pUL18・pUS11・pp65・pp71ウイルス蛋白は、免疫機構からの逃避 (immune escape) に関わり、腫瘍免疫への抵抗性を上げる。IE1・IE2・US28 ウイルス蛋白は、癌遺伝子として働くと推察される蛋白 (putative oncogenes)。IE1・IE2・US28・pUL97・pp65ウイルス蛋白は、癌抑制遺伝子のカウンター蛋白質 (viral counter proteins against tumor suppresors) であり、発癌の抑制を阻害する。
免疫の老化(疲弊)
oncomodulation