主な感染経路は、
体液、分泌物との接触。 - 非性的接触、性的接触。
胎内感染 - 新生児に先天性の感染症を生じる。
輸血、臓器移植 - 白血球内に感染したサイトメガロウイルスが感染し、2 - 4週間後に発熱、まれに肝炎を発症することもある[18]。また、免疫抑制療法中に生じた腸炎や大腸穿孔[19]が報告されている。
臨床像
分類
先天性感染
先天性サイトメガロウイルス (CMV) 感染症
感染歴を有しないCMV抗体が陰性の妊婦のうち、1% - 2%が妊娠中に初感染をし、感染妊婦の約40%が胎児感染に至る。胎児感染例の20%は症候性であるが、80%は無症候性の先天性感染である[14]。症候性の感染児は新生児の約0.1%とされ[14]、妊婦が妊娠初期にサイトメガロウイルスに初感染すると、胎児に移行感染し、流産、死産、新生児の死亡 (30%)[20]の原因となることがあるほか、難聴[21]、小頭症、頭蓋内石灰化等をきたすことが多い。先天性巨細胞封入体症とも呼ばれる。TORCH症候群の1つ。なお、無症候性の先天性感染児のうち何らかの障害を発症するのは10% - 15%とされている[22]。ウイルス培養によりトキソプラズマ症、風疹、梅毒などの他の先天性感染症と鑑別の必要がある。
後天性感染
主症状は、発熱、肝機能異常、頚部リンパ節腫脹、肝脾腫などで、急性熱性疾患としてはCMV肝炎、伝染性単核球増加症と似た非定型リンパ球増加症。 検査法は主に以下が用いられる。 初期感染時と再賦活時が感染活動期であり、基本的に一般健常人においては安静での経過観察となる。免疫低下状態(後天性免疫不全症候群・免疫抑制剤での治療中等)・臓器移植後(造血幹細胞移植後・腎移植後等)・悪性腫瘍(白血病等)等の基礎疾患のある患者に対して、抗ウイルス薬での保険治療適応とされている。また、先天性感染感染児に対する抗ウイルス薬投与は難聴の改善効果が認められている。 2022年現在、有効なワクチンは実現していないが[14]、モデルナがRNAワクチン「mRNA-1647」を研究している[27][28]。 健常CMVキャリアにおけるCMV特異的細胞傷害性CD8+T細胞の比率は中央値で10%と予想以上に高く、40%に達することもある[29]。また、加齢に伴ってこの比率が上昇する[30][31]。どの様な機構によるのかは未だ不明であるが、加齢に伴ってこのCMV特異的T細胞の少クローン性の増大 (memory inflation) を生じると、ナイーブT細胞が減少しCMV以外の感染症に対する防御能の低下をきたす[32][33]。
サイトメガロウイルス網膜炎
網膜出血等を生じる[23][24]。
サイトメガロウイルス肺炎
化学療法後や後天性免疫不全症候群などの免疫力が低下している状態に引き起こる[25]。後天性免疫不全症候群患者の主要死因である。
サイトメガロウイルス髄膜炎
化学療法後や後天性免疫不全症候群などの免疫力が低下している状態に引き起こる。
サイトメガロウイルス腸炎
潰瘍性大腸炎等のステロイド治療中に起こる[26]。
検査
抗体検査
CMV-IgG:既感染者で陽性を示す。日本では成人の90%以上が陽性とされるが、陽性率は低下している。
CMV-IgM:初期感染・再賦活時に上昇を示す
抗原検査
C7-HRP:CMVpp65抗原をペルオキシダーゼ標識ヒトモノクローナル抗体で染色し、鏡検下に細胞質が栓塞された好中球数を検索し評価していく。陽性細胞数/好中球10万個
C10/C11:CMVp65抗原のモノクローナル抗体とアルカリホスファターゼ標識2次抗体で染色し、鏡検下に細胞質が栓塞された好中球数を検索し評価していく
ウイルス検査
CMV-DNA:PCR法にてウイルス量を直接測定する
治療
ガンシクロビル Ganciclovir (GCV):デノシンR
点滴製剤
バルガンシクロビル Valganciclovir (VGCV):バリキサR
経口内服錠剤
ホスカルネット Foscarnet:ホスカビルR
点滴製剤
レテルモビル
経口内服錠剤 点滴製剤
シドフォビル
耐性ウイルスの場合に投与。現在日本では未承認
ワクチン
免疫の老化(疲弊)