1980年代になると、1970年代に商業デビューしキャリアを重ねていた新井素子・神林長平・夢枕獏らが活躍した。一方で、田中芳樹は当時の和製スペースオペラの代表格であった『銀河英雄伝説』シリーズ本編を1987年に完結させ、その後は伝奇小説などに活動の軸足を移していった。
ビジュアル分野でのSFは引きつづき繁栄し、『風の谷のナウシカ』や『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』が公開され、サンライズが『機動戦士ガンダム』の商業的大成功を経て『装甲騎兵ボトムズ』というハードSF的な作品を製作した。SF企画スタジオのスタジオぬえも『超時空要塞マクロス』でSFアニメに参画した。日本SF大会DAICON III、DAICON IVでのオープニングアニメでファンの注目を集めたDAICON FILMは後にガイナックスを設立し、商業アニメに進出する。日本SF作家クラブは1980年、小説以外の作品も対象とする日本SF大賞を設けた。
1983年には筒井康隆作の『時をかける少女』が映画化され大ヒットした。
やがて1980年代後半から1990年代前半にかけて、『SFアドベンチャー』(1979-92年)や第三期『奇想天外』(1987-90年)など、SF雑誌の休廃刊が相次いだ。また、唯一のSF専門誌となった『S-Fマガジン』は、新人賞であるハヤカワ・SFコンテストを1992年に休止した。 1990年代に入ると、ライトノベルや角川ホラー文庫(1993年-)などの新興レーベルや、日本ファンタジーノベル大賞(1989年-)や日本ホラー小説大賞(1994年-)などの文学賞が、SF作品・作家の実質的供給源としての役割を果たしはじめた。ライトノベル系レーベルには野尻抱介・山本弘・嵩峰龍二・笹本祐一らが登場し、SFやスペースオペラの要素が濃い作品を発表した。日本ファンタジーノベル大賞や日本ホラー小説大賞からは酒見賢一・鈴木光司・瀬名秀明・北野勇作・高野史緒ら、SF作家やSF的要素を含む作品を書く作家たちがデビューした。 1990年代後半になると、ライトノベル系のレーベルや新人賞から古橋秀之(1996年デビュー)や上遠野浩平(1998年デビュー)が登場して人気を博し、大西科学や三雲岳斗らライトノベル系レーベルと一般レーベルの両方で活躍する作家たちの先鞭をつけた。笹本祐一や野尻抱介などライトノベル系レーベルで作品を発表していた作家が、一般レーベルで本格的SFを書きはじめるようにもなった。1996年には早川書房のハヤカワ文庫から、森岡浩之が『星界の紋章』を発表した。 また、笙野頼子や久間十義のように、純文学とSFの融合を志向する流れ(批評家ラリィ・マキャフリィは、ウィリアム・ギブスンの言葉を借り、そうした兆候をアヴァン・ポップと呼んだ)も日本において新たに生まれてきた。 小説以外の分野に目を向けると、1990年代半ばにガイナックスの『新世紀エヴァンゲリオン』が、『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』以来の大ヒットとなり、一般の若者に衝撃を与えるとともに共感を呼んだ。
1990年代