サイエンス・フィクション
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19世紀前半の作家エドガー・アラン・ポーも、SFの開祖の一人である。彼の作品は人間心理の異常性に踏み込んだ怪奇・恐怖小説が多いが、『鋸山奇譚』・『大渦に呑まれて』・『ハンス・プファールの無類の冒険』など、科学知識を応用した作品も見られる。特に『ハンス・プファールの無類の冒険』は、気球による月世界旅行を描いたもので、当時の最新の科学知識を用いた、まさに正統派のSFであった。ヴェルヌやウェルズもポーの影響を受けており、現代SFの発展に功績があったといえる。[17]
創世期のSF

この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2012年7月)

ジュール・ヴェルヌジュール・ヴェルヌ月世界旅行』挿絵(1868)。SFイラストレーションの嚆矢でもある。

ジュール・ヴェルヌは若い頃は大デュマに師事してロマン劇を書いていたが、愛読書のエドガー・アラン・ポーの小説にある科学技術を織りまぜて現実性をより高めるという手法に注目し、1863年に冒険小説『気球に乗って五週間』を発表した。この作品は純粋なSFではないが、ヴェルヌの作風に多大な影響を与えた。

本格的な科学小説としては1865年に書かれた『月世界旅行』(邦題では『月世界探検』とも)が最初といえる。月世界旅行では砲弾に乗って月へ行くという科学的な宇宙旅行が初めて描かれておりSFの嚆矢としての意義は大きい。その後も『海底二万里』や『インド王妃の遺産』など多くの科学小説が書かれた。ヴェルヌの作風は当時正しいとされていた科学知識を活用したものがほとんどで、当時としては現実味と説得力があり、その点が、それまでの(上述されたような)作品群と異なる。科学を賞賛した一方で人間が科学に支配されることについて危機感を抱くという先見の明もあり、『国旗に向かって』(別題:『悪魔の発明』)や『二十世紀のパリ』などの作品で強い警鐘を鳴らしてもいる。
ハーバート・ジョージ・ウェルズH・G・ウェルズ

ヴェルヌの『月世界旅行』の30年後にイギリスでH・G・ウェルズが『タイム・マシン』を書いた。

『タイム・マシン』は、主人公のタイムトラベラー(名前は明かされない)が時間を移動する機械を発明し、西暦80万2701年の世界へ行く物語。人類が二種に分岐した未来の世界では、美しい体つきをしたエロイという人類が、理想郷的な世界で無為に暮らしている。地下にはモーロックというもう一種の不気味な人類がいて、エロイ達を喰って生きている。タイムマシンをモーロック達に持ち去られた主人公は、恋人となったエロイのひとりとともにタイムマシンを探し出し、地下世界から奪い返す。そしてさらに未来へと旅立ち、人類の終焉、生物と地球の終焉を見た後に現代に帰還する。

注目したいのは、ヴェルヌが冒険小説的な科学小説を書いたのに対し、ウェルズはファンタジーをベースにしたSF小説を書いている点である。ヴェルヌは、『海底二万里』などで(当時の)現代世界を描き、ともすれば単なる科学礼賛になりがちであったのに対し、ウェルズは将来の世界を描き、前述した要素を取り入れる事で「現実から外挿される世界を書きながらも現実という束縛を離れる」という現代SFの特徴を最初に取り入れている。しかもユートピアにおけるファンタジーを描きながらも、アンチ・ユートピア的な側面をも描き、文明批判を描いて思想小説的な要素をも取り入れるという離れ業に成功している。ウェルズは、進化論に影響を受けていたが、『タイム・マシン』でエロイが有閑階級の、モーロックが労働者階級の成れの果てであるのは、この思想と無関係ではないだろう。また、この小説が、「生物の終焉」を扱っている事も見逃してはならない。世界、地球、人類等の終焉(終末テーマ)は、後にウェルズ自身の『最終戦争の夢』、ネビル・シュートの『渚にて』、アーサー・C・クラークの『幼年期の終り』等数多くの小説で描かれるテーマであるが、SFの最初期に書かれたこの小説が、すでに生物の終焉を扱っている事は注目に値する。

ウェルズのもう一つの業績は、SF的ギミック(ガジェット)を数多く「発明」した事にある。たとえばウェルズ以前に書かれた時間小説として知られる、チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』では、「妖精の力」で時を越えるのに過ぎなかったが、ウェルズは「タイムマシン」という時を越える道具を主人公に「発明」させる事で時間を越えている。


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