サイエンス・フィクション
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17世紀の天動説が主流であった当時、1620年代ごろに天文学者ヨハネス・ケプラーが地動説の考えに基づいて書いた小説『ケプラーの夢』(ラテン語 Somnium)がある。この小説は、アイスランド人ドゥラコトゥスが地球(ヴォルヴァ)と月(レヴァニア)を自由に往復する精霊に連れられて月世界へと旅行する物語である。シラノ・ド・ベルジュラックは1657年に「月世界旅行記」を出版した。これは、ロケットによる月旅行を描いた最初の作品とされている。また、北極に異世界が存在するという設定はen: The Blazing World(1666年)に、地球内部が空洞であり異世界が存在するという設定はen: Niels Klim's Underground Travels(1741年)に描かれている。ヴォルテールによるen:Micromegas(1752年)は、シリウスを周回する惑星と土星からの来訪者が地球にやってくるというストーリーである。

ジョナサン・スウィフトガリヴァー旅行記には科学者が住む飛行する島ラピュータが登場する。島は底部の天然磁により磁鉄鉱の豊富な土地の上空を自在に移動できるなど科学的な設定があり、地上に住む人間を押しつぶすなど兵器として使われるシーンもある。映画『フランケンシュタイン』(1910年)

さらに、1816年に当時19歳のメアリー・シェリーが書いた『フランケンシュタイン-あるいは現代のプロメテウス』がある。科学者ヴィクター・フランケンシュタインが死体を集めて繋ぎ合わせ、人造人間を作ることに成功する。しかし、その醜さゆえに彼は、人造人間(”怪物”)を放棄する。造られた”怪物”は「こころ」を持ち、幾度か人間と交流を試みるが、醜い容姿のせいでことごとく拒絶される。絶望した”怪物”は自らヴィクターの元に現れ、自分の伴侶となり得る女性の”怪物”を一人造るように要求する。彼は一度約束したが、女性の完成間近になってそれを破る。怒った”怪物”は、ヴィクターの妻や友人を殺害。ヴィクターの方もその死に怒り、”怪物”を殺すために追跡を始める。しかし、長い追跡の末、北極海でヴィクターは衰弱し死亡する。”怪物”は彼の亡骸の前で、複雑な心境を語った後、自ら焼死するために北極海へと消えた。

この小説は、メアリー・シェリーが夫(パーシー・シェリー)と共にバイロンの別荘(ディオダティ荘)に行った際の構想を元に書かれたものである(ディオダティ荘の怪奇談義)。ある日バイロンは怪奇小説を書いて互いに見せ合う事を提案した。パーシーとバイロンは途中で小説を投げ出した(バイロンがこの時書いた構想を借りて、彼の主治医であるジョン・ポリドリが『吸血鬼』を書いた)が、メアリーはこれを仕上げた。

メアリーの『フランケンシュタイン』はSF的テーマを扱いながらも「怪奇小説」であり、科学小説を書こうというモチベーションによって書かれたわけではないが、ブライアン・オールディスをはじめとする後世の多くの作家や評論家たちがメアリーに先駆的な業績を認め、SFの先駆者あるいは、創始者であると捉えている。[15]一方で、『フランケンシュタイン』は確かに重要な作品ではあるが、SFの起源とすることはSFの領域を拡張させ過ぎている、という意見も存在する。[16]

19世紀前半の作家エドガー・アラン・ポーも、SFの開祖の一人である。彼の作品は人間心理の異常性に踏み込んだ怪奇・恐怖小説が多いが、『鋸山奇譚』・『大渦に呑まれて』・『ハンス・プファールの無類の冒険』など、科学知識を応用した作品も見られる。特に『ハンス・プファールの無類の冒険』は、気球による月世界旅行を描いたもので、当時の最新の科学知識を用いた、まさに正統派のSFであった。ヴェルヌやウェルズもポーの影響を受けており、現代SFの発展に功績があったといえる。[17]
創世期のSF

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ジュール・ヴェルヌジュール・ヴェルヌ月世界旅行』挿絵(1868)。SFイラストレーションの嚆矢でもある。

ジュール・ヴェルヌは若い頃は大デュマに師事してロマン劇を書いていたが、愛読書のエドガー・アラン・ポーの小説にある科学技術を織りまぜて現実性をより高めるという手法に注目し、1863年に冒険小説『気球に乗って五週間』を発表した。この作品は純粋なSFではないが、ヴェルヌの作風に多大な影響を与えた。

本格的な科学小説としては1865年に書かれた『月世界旅行』(邦題では『月世界探検』とも)が最初といえる。月世界旅行では砲弾に乗って月へ行くという科学的な宇宙旅行が初めて描かれておりSFの嚆矢としての意義は大きい。その後も『海底二万里』や『インド王妃の遺産』など多くの科学小説が書かれた。ヴェルヌの作風は当時正しいとされていた科学知識を活用したものがほとんどで、当時としては現実味と説得力があり、その点が、それまでの(上述されたような)作品群と異なる。科学を賞賛した一方で人間が科学に支配されることについて危機感を抱くという先見の明もあり、『国旗に向かって』(別題:『悪魔の発明』)や『二十世紀のパリ』などの作品で強い警鐘を鳴らしてもいる。
ハーバート・ジョージ・ウェルズH・G・ウェルズ


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