ゴーストライター
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

本人が書いている場合は、ゴーストライターとは言いきれない[26]。また本多勝一は、口述筆記を使用していることを公言している[27]翻訳出版の分野においては、下訳というかたちで下積みの翻訳家が先におおまかな翻訳をつくることがよく行われている。特に翻訳者として名前が出るのが、作家やタレントなどの著名人である場合には、下訳の重要性が増す。

漫画の分野では、漫画原作者シナリオライターなどが何らかの理由により、表には名前を出さずにストーリーを手掛け、作品自体は漫画家のみの名義で出される・あるいはストーリー作りへの低評価が原因で中位辺りで伸び悩む作品へのテコ入れ策として編集部がシナリオライターを途中参加させるなどの形で、多くはストーリーの構成の面においてゴーストライターの存在が噂されることがある。編集部サイドや担当編集者の強い主導により作品企画が進められるスタイルの雑誌の場合は、キャラクター設定や物語の概要のみならず、ストーリー制作の実権をも編集部や編集者が握ってしまうこともある。このような場合、編集部の内部でストーリーを考案している雑誌スタッフや編集者が、実質的なストーリー担当者となる。そういう場合であっても、編集部・編集者が原作者や脚本担当としてクレジットされる例は実際にはあまりなく、多くはゴーストライターと同様の形態になる。ただし、編集者も漫画家も自分がストーリーを考えたと思っているケースもあり、どちらが『原作者』であるかという判断は外部からは難しい。両者の言い分が反する場合には、原稿を描いている漫画家の言い分に理があるといえる。また、漫画の場合はアシスタントを使って人物以外の背景やメカなどを描かせるといった分業体制による作画は日常的に行われているが、これらに携わるアシスタントらの名前も通常はクレジットされない。ただし、最近は浦沢直樹松田奈緒子佐藤秀峰など一部の漫画家において、単行本では編集者も含めたスタッフ名をすべて表記する流れが見られる。

レアケースではあるが、文字を書くことが困難、あるいは翻訳作業などが必要な外国出身者が本を出版する際、事実上の代筆担当者としてゴーストライターが起用される事もある(口述筆記)。この場合には、著者や出版社がゴーストライターの起用を自ら明かす事もある。著者が視覚障害者の場合は、述筆記でもなければ多くのケースで代筆担当者が存在し、点字などからの変換でも広義の意味で代筆に該当する作業となることがあるが、代筆担当の名前を出さない場合にはゴーストライターと同様の存在になる[28]

ゴーストライターの契約と報酬の支払い形態はさまざまであり、著者印税の一部をもらう歩合制となることもあれば、原稿料で買い切り制のこともある[29]長嶋茂雄王貞治の本の場合には、本人が6でライターが4の印税比率だったという[30]
放送業界

放送業界では、主にテレビドラマテレビアニメ脚本家について、ゴーストライターにまつわる噂が少なからずある。

以下にその例を挙げる。

脚本家の身近に別の執筆家がいる場合には、その執筆家が実制作を担っている。

ベテランの脚本家が、弟子筋に当たる若手脚本家や見習いの育成の一環として、自分名義の仕事を任せて実作業を行わせる。実際に名前が出る脚本家の方では、品質・内容のチェックと修正を適宜行う。

テレビ局のプレゼンで番組企画を通すために、著名な脚本家の名前を表に出し(いわゆる『名義借り』)、実際の執筆は別の脚本家が担当する。グレーな手法ではあるが、著名な脚本家の『ネームバリュー』をマーケティング的な観点から活用したい場合などは、名前を「監修」としてクレジットされる一方、別の脚本家が執筆した内容や世界観をチェックする役割を務める。

実例としては、2008年のNHK大河ドラマ篤姫』での、脚本家田渕久美子担当分の脚本についての件がある。実際には、シリーズ後半から「脚本協力」としてクレジットされた田渕の兄であるコピーライター田渕高志が、シリーズの当初から事実上のゴーストライターを務めていたのではないかという疑惑が存在している[31]。田渕久美子を巡る民事訴訟の法廷でも、田渕の元関係者が、高志が事実上のゴーストだったことを証言している[32]
音楽業界

出版業界と同様に、音楽業界・特にテレビ番組の主題歌やCM音楽などでゴーストライターの存在が噂される事がある。これについては主に作詞の名義について言われる事が多いが(大黒摩季#ビーイングスタッフ表記問題を参照)、一部には作曲編曲などでこの種の噂が発生する事もある。ニュースサイトTHE PAGEは「実在のシンガーソングライターでも、実際には別の人物が詩や曲を書くケースは多数存在します」と断定的に語っている[26]

レコードや書籍のなかった時代、芸術家は作品を大衆に届ける術を持たず、貴族などのパトロンを必要としていた。当時のパトロンは、題材や材料にまで口を出し、その作品を自分の名で発表することすらあったという。たとえばヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの『レクイエム』は、とある貴族が自分の亡くなった妻に捧げるために発注したもので、本来はこの貴族の名で公開されるはずだった曲が、モーツァルトの突然の死により遺作として公表されたものである。これらのゴーストライティングは仕事として普通に存在していた[33]

名前や顔の売れているタレントや若手アーティストに作詞や作曲をさせる場合には、商品化までにプロデューサーやディレクターやアレンジャーなどの専門家による「手直し」や「修正」が必要になる。それらの修正が多岐にわたり大幅になった場合、結果として修正にかかわった人間がゴーストライター化してしまうことがある。ポピュラー音楽界では、鼻歌や主旋律ていどしか作曲できないアーティストも多いという。音楽関係者によると「歌謡曲で多いのが、有名な作曲家や作詞家が弟子に作品を書かせるケース。アイデアが枯渇しているところに曲の注文がくると“キミ、こんな感じの曲を書いてくれ”と指示。出来上がった曲や歌詞を自分流にアレンジして完成させます。面倒見のいい師匠は、印税の何割かを与える。CDが100万枚売れたので弟子に100万円払ったという話も聞きますよ」という[34]

作曲家の青島広志は、日本の音楽業界の現状について「ポピュラーでは旋律を書ければ良い方で、時には鼻歌を編曲者が楽譜に起こして編曲し、レコーディングまで持っていく。クラシック畑の作曲家も、ひとたび名が売れてTVドラマや映画音楽の注文が来ると、まず絶対的に一人では楽譜が書けなくなる。初めの内はそれでも頑張っているのだが、締め切りに間に合わなくなるよりはいいので、誰かに助太刀を頼む。依頼主もその先生の名が欲しいので、余程質が落ちない限りは目をつぶるのだ」と書いている[35]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:89 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef