ゴルゴノプス亜目
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彼らはこので、植物食性のディノケファルス類ディキノドン類パレイアサウルス類などを襲い、捕食していたと思われる[4]

特徴的なサーベル状の犬歯は獲物を殺したり解体する際おおいに役立つと共に、他者へのアピールに使われた可能性も高い[5]

口蓋歯(口腔の天井に存在する歯)は、より基盤的な獣弓類とされるビアルモスクスと似ていた[6]
胴体
四肢

四肢は比較的走行に適した形状となっていたが、上腕骨は水平に近い位置にあり、ワニに似た形態。爬行あるいは中腰での歩行を行っていたと推定される。
生理学

体表に関しては、軟組織であるので化石からの推定は難しい。ただし、より古い形質を持つディノケファルス類のエステメノスクスの化石に残されていた皮膚表面にはは存在しなかった。また、ゴルゴノプス類の一部の属(レオントケファルスなど)では部骨格表面に小さな窪みが多数確認されている。これは、洞毛の痕跡と見られている。しかし、ヒトなど洞毛を持たないものを除くすべての哺乳類は発生段階において洞毛の後に体毛が生じていることから、この段階において体毛を獲得していたとは断定できない。しかし、ペルム紀の獣弓類が「原毛」というべき構造を備えていた可能性が指摘されている。

これらの研究や推測は金子隆一の著書『哺乳類型爬虫類』が詳しい。金子は基盤的単弓類の体毛の有無についての問題に決着をつけるために、後期ペルム紀の肉食動物の糞化石の内容物の調査が求められるとしている。そして同時に金子は、十中八九ゴルゴノプス類のものとされる糞化石(餌食となった生物の骨が噛み砕かれて混ざっているもの)についても言及し、糞の内容物から犠牲者の身元を特定するのは難しいともしていた。

しかし2011年、ゴルゴノプス類のものとされる糞化石の研究報告がなされた。そこからは獲物とされるディキノドン類や爬虫類の骨片、魚類の鱗などが複数見つかっただけに留まらず、何者かの体毛らしき痕跡も発見された[4]。これが正しければ、当時の単弓類の中には既に体毛を持つ種類がいたことになる。

ゴルゴノプス G. whaitsi 頭骨

スクトサウルスを襲うイノストランケビア

古病理学

当時の最上位捕食者だったと推定されるゴルゴノプス亜目だが、病魔とは無縁ではなかった[7]。ザンビアより報告されたゴルゴノプス亜目の橈骨(腕の骨)には骨膜の炎症が治癒したと見られる痕跡が残されており、しかも治癒は1年足らずで完了したと見られている。この素早い回復力から、すでに彼らが恐竜や哺乳類のような高代謝を獲得していたとも推測されている[8]
食性

本記事においても折に触れて説明してあるが、ゴルゴノプス亜目は正真正銘の肉食動物(強肉食)であり、素早い身のこなし、鋭敏な感覚器、そして発達した切歯と犬歯を駆使することで、一帯の動物の多くを餌食にしていたと考えられている[9]。この内の犬歯は剣歯虎に見られるようなサーベル状(ただし剣歯虎の歯よりは厚みのある構造)になっているため[10]、非常に殺傷能力が高い。こうした重武装は共存していた鎧を持つ大型爬虫類パレイアサウルス類や大型で危険なディキノドン類を仕留めるの役立ったようである。

現在までにゴルゴノプス亜目からは複数の糞化石や胃内容物が発見されている[4][11][2]。それらによると確認されているだけでも獲物は、ディキノドン類、爬虫類、魚類といったように大きさや棲家を問わず、そのバリエーションが豊かであったことが示されている。

また捕らえた獲物が小さいと丸呑みにし、大きい場合は何度か咀嚼してから飲み込んだ。だがゴルゴノプス亜目の頬歯(奥歯)は貧弱であり、さらに一部の種では頬歯自体が消失してしまっているため、どれほどの咀嚼機能を担っていたかは未知数である[2]
分布

南アフリカから多数の化石が出土。イノストランケビアなど一部のグループはロシアにも分布を広げていた。当時はパンゲア大陸としてすべての大陸は陸続きであったため、多くの陸生動物が大きな障壁なく大陸の各所に進出できた。ただし西ヨーロッパ、南アメリカ、東南アジアにおいては発見例がない[12]
系統

獣弓目 Therapsida

獣歯類 Theriodontia

†ゴルゴノプス亜目 Gorgonopsia

真正獣歯類 Eutheriodontia

テロケファルス亜目 Therocephalia

キノドン亜目 Cynodontia

哺乳類 Mammalia





下位分類ゴルゴノプスアルクトグナトゥス

以下の分類は全下位分類群を網羅しているわけではない。

†ゴルゴノプス科 Gorgonopsidae

Aloposaurus

Arctops

Broomisaurus

Cephalicustroidus

Cerdorhinus

Cyanosaurus

Cynariops

Eoarctops

Galesuchus

ゴルゴノプス

レオントケファルス[13]

リカエノプス

Paragalerhinus

Scylacognathus

ゴルゴノプス亜科 Gorgonopsinae

サウロクトヌス[12]

Scylacops


ルビジア亜科 Rubidgeinae

アエルログナトゥス

Aelurosaurus

アルクトグナトゥス = リコサウルス

Broomicephalus

Clelandina

Dinogorgon

Niuksenitia

Prorubidgea

ルビジア

Sycosaurus


イノストランケビア亜科(英語版) Inostranceviinae

Pravoslavleria

イノストランケビア



脚注[脚注の使い方]^ a b https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0207367
^ a b c 金子隆一(著)『哺乳類型爬虫類』獣歯類の項
^ 「The rise and fall of the first saber-tooths」(EARTH ARCHIVES:2015)
^ a b c https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031018211004792
^ Canine evolution in sabretoothed carnivores: natural selection or sexual selection? Marcela Randau, Chris Carbone, Samuel T Turvey PLoS One 8 (8), e72868, 2013
^ The palatal dentition of tetrapods and its functional significance(2017:Ryoko Matsumoto)
^ https://jamanetwork.com/journals/jamaoncology/fullarticle/2591155
^ https://blogs.scientificamerican.com/laelaps/saber-toothed-protomammal-was-a-quick-healer/
^ Upper Permian vertebrates and their sedimentological context in the South Urals, Russia(Valentin P Tverdokhlebov:2005)
^ 土屋健『カラー図解 古生物たちのふしぎな世界 繁栄と絶滅の古生代3億年史』講談社、2017年、222頁。


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