ゴリラ族
[Wikipedia|▼Menu]
□記事を途中から表示しています
[最初から表示]

食べるアリの種類や、採食方法などは地域差がある[16]。採食方法の例として、平手で地面をたたく・平手で樹上の巣を壊す・手の上に巣を乗せアリを叩き落とす・アリの群れに手を突っ込んで舐めるなどといったものがある[16]。シロアリが生息しない高地に分布するヒガシゴリラは、植物についているダニクモを無作為に食べることで動物質を補っていると考えられている[14]。マウンテンゴリラは自分の糞も含めた糞食を行い、腸内細菌の摂取や未消化の食物を再吸収していると考えられている[14]

捕食者としてヒョウが挙げられる[15]。例としてヴィルンガ山地キソロでのシルバーバックの個体がヒョウに殺されたという報告例、コンゴ共和国のン・ドキでヒョウの糞の内容物の調査からオスの骨が発見された例、中央アフリカのザンガ・サンガ国立公園でヒョウに襲われた報告例などがある[15]。カフジ=ビエガ国立公園のヒガシローランドゴリラの個体群では、オスが死亡した群れでメスや幼獣が主に地表に作っていた寝床(68.8 %)を樹上に作るようになった報告例がある(地表の寝床の割合が22.9 %まで減少)[15]。この群れはオスが合流すると、60 %の割合で再び地表に寝床を作るようになった[15]。これはオスがいなくなったことで、捕食者を避けようとしたためだと考えられている(カフジ=ビエガ国立公園にはヒョウはいないが、1970年代までは目撃例があったとされる)[15]。動物学者の小原秀雄は、ゴリラを含む類人猿は知能が高いので恐怖や痛みに極めて敏感であり、ヒョウなどの捕食動物には不得手であると述べている[17][注釈 1]

繁殖様式は胎生。妊娠期間は平均256日[3]。出産間隔は3 - 4年[3]。寿命は約40 - 50年で、53年の飼育記録がある[3]。2017年1月17日に死亡したアメリカオハイオ州のコロンバス動物園にいた雌のゴリラ「コロ」は60歳まで生きた。死亡時には子供が3頭、孫が16頭、曾孫が12頭、玄孫が3頭いた。また、彼女は人間に飼育されている環境下で誕生した初のゴリラでもあった[18]

前肢を握り拳の状態にして地面を突くナックルウォーキングと呼ばれる四足歩行をする[19]

発見以来、長年に渡って凶暴な動物であると誤解されてきたが、研究が進むと、交尾の時期を除けば実は温和で繊細な性質を持っていることが明らかになった[20]。かつてドラミングが戦いの宣言や挑発の手段と考えられていたが、山極寿一によれば、胸をたたいて自己主張し、衝突することなく互いに距離を取るための行動だという[21][22]。また、群れの間では多様な音声を用いたコミュニケーションを行い[23][24]、餌を食べる時などに鼻歌のような声を出しているのが確認されている。

人間を除けば 天敵は ヒョウだけである。
人間との関係

カルタゴ航海者ハンノが紀元前6世紀にアフリカ西海岸を周航した際に遭遇した野人の集団の呼称が「ゴリラ」だったとされるが、現地語ではゴリラという呼称は確認されていない[2]。この野人が本属であることも疑問視されている[2]

森林伐採や採掘による生息地の破壊、食用(ブッシュミート)の乱獲、内戦、感染症などにより生息数は減少している[3][25]。森林伐採により交通網が発達し奥地へ侵入しやすくなるとともに輸送コストも安くなったこと・経済活動の破綻により都市部の失業者が森林のある地域へ大量に移入したこと・内戦により銃器が流出し狩猟に用いられるようになったことなどの理由で食用の乱獲は増大している[25]。生息地は保護区に指定されている地域もあるが、密猟されることもある[3]

飼育施設などで飼育されることもある。コロンバス動物園が世界で初めて飼育下繁殖に成功した[10]日本では、1954年に初めて輸入されて以降、2005年現在ではニシローランドゴリラのみ飼育されている[10]。1961年にマウンテンゴリラが2頭輸入されているが、2頭とも数日で死亡している[10]。日本では、1970年に京都市動物園が初めて飼育下繁殖に成功した[10]。1988年に「ゴリラ繁殖検討委員会」が設置され、1994年から各地の飼育施設で分散飼育されていた個体を1か所に集めて群れを形成し、飼育下繁殖させる試み(ブリーディングローン)が恩賜上野動物園で進められている[10]

日本では、2018年現在ゴリルラ属(ゴリラ属)単位で特定動物に指定されている[26]
ギャラリー

ヒガシゴリラ
G. beringei

ニシローランドゴリラ

脚注[脚注の使い方]
注釈^ 1961年2月、ウガンダ国内のムハブラ山でシルバーバックや雌の個体がクロヒョウに捕食された例や、西洋人狩猟家が目撃例として、雌ゴリラが原住民達に棒で殴打され一方的に撲殺された例を挙げている[17]

出典^ a b c Colin P. Groves, " ⇒Order Primates,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 111-184.
^ a b c d e f g h 岩本光雄 「サルの分類名(その4:類人猿)」『霊長類研究』第3巻 2号、日本霊長類学会、1987年、119-126頁。
^ a b c d e f g h i j k l m n 山極寿一 「ゴリラ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、147-148頁。
^ a b c d e f 山極寿一 「第4章 ゴリラを分類する―種内の変異が示唆すること」『ゴリラ 第2版』、東京大学出版会、2015年、95-123頁。
^ 小寺重孝 「オランウータン科の分類」、今泉吉典監修『世界の動物 分類と飼育 1 霊長目』東京動物園協会、1987年、91-95頁。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:42 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef