ゴム
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明治25年には土谷ゴムを改組して、土谷と田崎三兄弟を意味する「三田土護謨製造合名会社」に改称、東京市本所区中ノ郷業平橋(現東京都墨田区業平橋)にロールを保有する本格的工場を稼働させた[6]。防水ゴム布のほか、ホースやエボナイトなどの工業製品、ゴム玩具やゴム靴も製造し、日清戦争日露戦争が始まると軍需品も製造し発展した[9]

明治33年には、明治護謨製造所(現明治ゴム化成)が設立された[9]

原料となるゴムの栽培は、1875年(明治8年)頃から原産地の南米からインドシンガポールで試植されはじめ、その後マレー半島などで栽培されるようになった[10]。日本では、1897(明治30)年以降に台湾への移植が試みられ、1902(明治35)年には、マレーにおけるゴム園の経営に初めて日本人が進出し、1903(明治36)年にマレー半島スレンバン付近に笠田直吉と中川菊蔵がゴム園を買収したのが、日本人の南方でのゴム栽培の嚆矢であるとされている[10]

その後も南方在住の日本人商人や日本からの企業などが乗り出し、米国の自動車産業の急成長により1910年(明治43年)頃にゴム相場が急騰すると、日本人によるゴム栽培事業は本格化した[10]。これ以前よりマレー連邦政府は国籍を問わずゴム植付助成金の貸付など栽培支援をしており、またジョホール王(ms:Sultan Johor)が日本人のゴム栽培業者に対して特に好意的であったことも進出に拍車をかけた[10]三菱財閥系の三五公司を筆頭に、三井、藤田、古河、森村などの財閥企業が進出し、1911年にはマレーでの日本人経営のゴム園は79を数えたが、第一次大戦後ゴム価格が急落し、その多くが撤退した[10]
物理的特徴

弾性ゴムは高弾性材料である。ここで言う「高弾性」とは弾性限界が大きいことを指す[11][12]。なお、弾性に関する指標には弾性限界のほかに弾性率等があって、ゴムの場合には弾性限界は大きいが弾性率は小さい(つまり、高弾性限界であるが低弾性率である)。
ゴム弾性の構造

分子間を共有結合で結合し、三次元網目構造を形成する高分子は、ガラス転移温度以上ではゴム弾性という特殊な性質を示すゴム状態となる。ゴム弾性とは、ゴムのように弾む性質ではなく、一見柔らかく塑性変形を起こしやすそうに見えるが、元に戻る応力が大きく、変形しにくいといった性質を指し、次のような特徴を持つ。

通常の固体ではその弾性率は1?100 GPaであるが、ゴムは1?10 MPaと非常に低い弾性率を示す。

このため、弱い力でもよく伸び、5から10倍にまで変形する。しかし外力を除くとただちに元の大きさまで戻る。伸びきった状態では非常に大きな応力を示す。

弾性率は絶対温度に比例する。

急激(断熱的)に伸長すると温度が上昇し、その逆に圧縮すると温度が降下する(Gough-Joule効果(英語版))。

変形に際し、体積変化がきわめて少ない。すなわちポアソン比が0.5に近い。

これはゴムの弾性がエントロピー弾性と呼ばれる、他の固体とは異なる機構で実現しているからである(他の固体ではエネルギー弾性という)。ゴムの弾性は、本来規則構造を持たない(非晶質)分子の配列が、外部からの力により規則的(結晶組織)になり、これが元の不規則な配列に戻ろうとするときの力によるもので、熱力学的には応力によるエントロピーの低下(ギブス自由エネルギーの増加)が元に戻ろうとする力による弾性である。
その他の物理的特徴

ゴムは粘弾性を持つ。粘度の測定にはムーニー粘度(英語版)を測るムーニー粘度計(英語版)やキャピラリーレオメータ(英語版)が用いられる。

実用上は他に、耐摩耗性、耐寒性(ガラス転位温度)、耐熱性、耐候性(耐日光、オゾン)、耐油性(溶解パラメーター)などが重視される[13]
劣化・老化

ゴムは時間とともに性質が変化し、き裂が生じたり、硬化軟化あるいはべとついたりする。これは、酸化分子の切断などが主要因として挙げられ、温度の存在等によって加速される[14][15]。使用中だけでなく、貯蔵中にも起こる現象である[14]。これは一般的な劣化現象であり、高分子材料であれば避けられない。ゴムの劣化について、特に老化とも呼ぶ[14][15]。老化を防止するため、ゴム製品には各種老化防止剤を使用する。
種類
原料による分類

ゴムにはゴムノキの樹液(ラテックス)によって作られる天然ゴムと、人工的に合成される合成ゴムが存在する。
天然ゴム天然ゴムの構造

天然ゴム (NR) はゴムノキの樹液に含まれる cis-ポリイソプレン [(C5H8)n] を主成分とする物質であり、生体内での付加重合で生成したものである。樹液中では水溶液に有機成分が分散したラテックスとして存在し、これを集めて精製し凝固乾燥させたものを生ゴムという。


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