ゴッドファーザー_(映画)
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名付け親や代父を意味する「ゴッドファーザー」や、貴人への尊称である「ドン」という言葉は、本作によって「(決して好ましくないイメージをもった)組織の最高権力者・親分」を意味する言葉として世間一般に定着した[17][240][5]

しかしもう一方で、イタリア系アメリカ人の伝記作家であるトム・サントピエトロ(英語版)は、2012年に発表した著書『The Godfather Efferct』のなかで、本作はむしろイタリア系アメリカ人に対する多くのステレオタイプを抑制したと主張し、この研究は絶賛された[235][241][242]。『ゴッドファーザー』では、残酷なマフィアがとても美しく撮影され、編集されているという事実に加えて、大学を卒業し、戦争の英雄を飾った最年少の弟であるマイケル・コルレオーネの温和な堅気の青年から冷酷なマフィアのボスへとそのキャラクター性が変容する様子も映しており、マイケルは決して無学で酷い訛りを発する古典的なイタリア系アメリカ人のイメージではなかった[215]。また、ハリウッドにこれまで前例がなかった、イタリア系移民によってイタリア系移民が描かれた民族的マイノリティーのための映画であり、誇り高いエスニシティを強調した本作は、イタリア系アメリカ人だけでなく、あらゆる文化的ルーツを持つアメリカ人が個人的および国家的な自己同一性とその可能性、そしてそれに伴う失望への見方を変えた[243]。さらにこの映画の根本的なテーマは、家族の感覚と愛の感覚である[215]。米国史上初のアフリカ系アメリカ人大統領であるバラク・オバマが本作を最も好きな映画の一つに挙げていることも、この映画の偉大さを示す上でよく言及されている[注 20][216][215]
犯罪組織への影響

本作は既存のマフィア構成員のイメージを形成することに成功しただけでなく、マフィアに参加するための広告塔としての役割も果たしたと考えられている[245]。1972年の映画公開当時、何人かのメンバーは、この映画はマフィアにとって最高の勧誘ツールだったとコメントしている[245]。マフィア史家のジェリー・カペチ(英語版)は、「この映画によって、ギャングスターは名誉なき殺人者という実態に代わって、名誉ある人物になった」と述べている[245]。『ゴッドファーザー』は、組織犯罪を汚職や違法行為と結びつけるのではなく、気高さ、敬意、伝統として説いている面があった[245]。この映画が公開される以前のギャング映画では、善人と悪人が明確に区別されていたが、『ゴッドファーザー』はある種の「モラルの曖昧さ」をもたらし、登場人物をどう見るかは観客の手に委ねられることになった[245]。マフィアのメンバーは悪意があり、一般大衆とはかけ離れたモラルに欠けた人物であるという、従来のマフィアの固定観念を打ち破る試みがいくつもなされている本作は、マフィアの生き方を積極的に紹介し、新しいマフィアを呼び込むことに貢献した[245]。それまでマフィアを危険で残酷な存在、普通の権力者とは違う存在として見ていた人たちも、その考えを改めさせられた[245]。コルレオーネ一家が見せる威信や気高さが、社会的な後押しを求める弱者を引き寄せたのかもしれない[245]。マフィアとの関わりを考えていた若いイタリア系アメリカ人にとって、『ゴッドファーザー』は、少なくともその可能性を検討するための後押しになったのである[245]。具体的な状況はともかく、この映画が将来の組織犯罪への関与を形成する上で大きな影響を与えたことは確かであった[245]。コッポラ自身も、「マフィアの暴力を間接的に礼賛している」として、映画の人気とは対照的に一部の知識人たちから批判を受けたことを告白している[246]
映画界への影響


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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