キングギドラの天神襲撃シーンは、映画『空の大怪獣 ラドン』(1956年)に登場する天神襲撃シーンのオマージュである[94][245]。福岡駅前は当時とは様変わりしていたためまったく同じ構図とはならなかったが、通常より大きめの1/15スケールのミニチュアを用いて同作品に近い雰囲気を表現している[245][注釈 43]。タイアップの看板は更に大きめに作られている[107]。予算の都合でキングギドラの引力光線でビルが爆散するシーンの一部は石膏板に引き伸ばしたビルの写真を貼ったものを爆破している[232][107]。
7月2日から17日には、第9ステージで網走でのゴジラとキングギドラの対決シーンが撮影された[出典 110][注釈 44]。川北は、同シーンでは破壊する対象がないことから、ゴジラとキングギドラとの戦いをダイナミックに描写することを心がけていた[114][248]。また、空や陸との立体的な構図も意識している[248]。原野のセットは、様々なカメラポジションをとれるようレールで分割移動できる構造となっており、富士山麓でのMOTHERのシーンにも流用された[242]。7月16日には、簡易小ステージでMOTHERの合成カットが撮影された[135]。
7月12日から17日には、オープンセットや大プールでメカキングギドラの飛行シーンが撮影された[230][注釈 45]。大プールで行われたクライマックスの海上シーンは、水量不足により上から見下ろす構図が中心となった[249]。
7月18日から20日には第7ステージでMOTHER格納庫の撮影[230][注釈 46]、7月24日・25日には第9ステージで深海のシーンが撮影された[246][注釈 47]。深海の描写では、距離感を出すため、現実的なゴジラとの比率では見えないマリンスノーをあえて描いている[114]。疑似海底での潜水艦の表現は、映画『レッド・オクトーバーを追え!』を参考にしている[114]。
キングギドラが中京の石油コンビナートを破壊するシーンは『東京湾炎上』(1975年)の流用で[250][183]、引力光線の合成を追加している[183]。該当シーンはもともと絵コンテに存在しなかったが、絵コンテにはゴジラが東京湾に上陸して、コンビナートを破壊するシーンが存在する(こちらは撮影されていない)。
キングギドラと空中戦を行うF-15の映像の一部は、東映制作の映画『BEST GUY』(1990年)の映像を流用している[217]。大森によれば、航空自衛隊から戦闘機のライブラリーが借りられなかったため、他社から提供してもらったという[49]。
次作『ゴジラvsモスラ』からはデジタル技術が導入されるため、富山は本作品をアナログ特撮の集大成と評している[51]。
音楽「ゴジラ (架空の怪獣)#テーマ曲」および「キングギドラ#テーマ曲」も参照
前々作、前作ではシリーズ刷新の意味合いも込めて当時の人気作曲家が音楽を担当したが、「やはり最も有名なテーマを超えるものを造るのは難しいので、やってもらおう」という意向から[251]、本作品では『メカゴジラの逆襲』以来16年ぶりに音楽を伊福部昭が担当した[出典 111]。伊福部は、その間に2度ゴジラ映画での音楽の依頼を体調不良を理由に断っていたが、本作品で3度目であったことから道元の言葉である「三請不止」に従い引き受けた[出典 112][注釈 49]。
ゴジラのテーマ曲が前面に押し出されたほか、キングギドラのテーマ曲や『宇宙大戦争』『キングコング対ゴジラ』『怪獣総進撃』で用いられた旋律が伊福部自らによる編曲を経て再び用いられている[255][258]。伊福部は、ゴジラとキングギドラのどちらも手掛けてから数十年経っていたことから全面的に変えることを考えていたが、友人から「(伊福部に頼むということは)似たような音を求められているのではないか」と言われ、過去のモチーフを中心とした構成とした[254][255]。いわゆる「ゴジラのテーマ」は、本来ゴジラを主題にした楽曲ではなかったが、ゴジラの音楽としての認知度が高かったため本作品より明確なテーマ曲として用いられた[出典 113]。例外的に、戦闘機がキングギドラを追撃するシーンで、前作同様にアルバム『OSTINATO』から「ラドン追撃せよ」が流用された[259] が、これは監督の意図が自衛隊主体のシーンだったのに対して伊福部がギドラの主題を用意していたため、新たに作曲し直す時間がなかったことによる[47][注釈 50]。