ゴジラ_(1954年の映画)
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その後もゴジラの仕業とみられる船舶の被害が相次いだため、ついに大戸島西方沖へフリゲート艦隊が派遣され、ゴジラへの爆雷攻撃が開始される[注釈 11]。その様子をテレビニュースで見て、物理衛生学の立場から貴重な研究資料であるゴジラを失いたくない山根は胸を痛める。

そんなある夜、東京湾を周遊中の納涼船「橘丸」の甲板でダンスに興じていた人々が目の前の海面に姿を現したゴジラを目撃し、パニックに陥る事態が発生する。ゴジラ問題を担当する特設災害対策本部は山根を招致してゴジラの生命を断つ方法を訊ねるが、山根は古生物学者の立場から水爆の洗礼を受けてなお生命を保つゴジラを抹殺することは不可能であり、むしろゴジラの生命力を研究することこそが必要であると力説する。一方、ゴジラ対策の取材の一環で、「芹沢博士がゴジラ対策につながるプランを完成させているかもしれない」とあるドイツ人が語ったとの情報を毎朝新聞のデスクから聞かされた萩原は恵美子を訪ね、芹沢との面談の仲介を依頼する。芹沢はかつて恵美子と婚約していたが、戦時中に右目を失い[注釈 12]、人間不信にも陥って恵美子を遠ざけるようになり、あたかも世捨て人のように自宅地下の実験室に籠る生活を送っていた[46][47]。恵美子とともに訪ねてきた萩原を芹沢は追い返し、恵美子に絶対に秘密と約束したうえで「ある恐るべき実験」を見せる。それを目にした恵美子は、恐怖のあまり悲鳴を上げる。

その夜、ゴジラが品川沖に現れ、重機関銃で迎撃する防衛隊をものともせずに品川埠頭から品川へ上陸する[48]。山根は警官に「ゴジラに光を当ててはいけない、怒らせるだけだ」と必死に伝えるが受け入れられず[注釈 13]、ゴジラは品川駅構内へ侵入。走行中の国鉄EF58形電気機関車客車を蹂躙し、品川運転所京急本線八ツ山橋跨線橋を破壊して東京湾に去っていく[48][49]。この結果、甚大な被害が出たことにより諸外国の調査団が相次いで来日する事態となった。

東京湾に潜むゴジラから東京を防衛するため、対策本部は東京湾の品川地区を中心に、高さ30メートルの鉄塔を海岸線一帯に建て、巨大な有刺鉄条網を幅50メートルごとに敷設して、変電所と連動して5万ボルトの強力な高圧電流を通じ、ゴジラを感電死させる作戦を実施する[出典 9]。鉄条網の工事が完成して間もなく、ゴジラが芝浦沖に出現。防衛隊は鉄条網の背後に榴弾砲重機関銃軽戦車を展開してゴジラを待ち受ける。やがてゴジラは芝浦海岸に上陸し5万ボルトの高圧電流電流が流れる鉄条網に接触するがびくともせず[49]、ゴジラが口から吐く放射能を帯びた白熱光で送電鉄塔はたちまち赤熱し水飴のように融け落ちる。防衛線を突破したゴジラは第一京浜国道を北上し札の辻で第49戦車隊を全滅させた後銀座へ侵入し[53]松坂屋和光ビル[注釈 14]日本劇場国会議事堂を次々と破壊するとともに大火災を発生させる[54][49]。さらに実況放送中の報道陣もろとも平河町テレビ塔をなぎ倒すと、勝鬨橋を横転させ破壊して東京湾に向かう[54][49]。そこへ到着した防衛隊のF-86F戦闘機隊が追撃を試みるが、ゴジラはそれを振り切って海中へ姿を消す。

東京は焦土の廃墟と化し、ゴジラによる放射能汚染は幼い子供たちにも及ぶ。恵美子は臨時救護所[注釈 15]で被災者たちの救護に当たるが、眼前に展開するあまりにも凄惨な光景に耐え切れなくなり芹沢との約束を破ってあの日に見せられた実験の秘密を尾形に明かすことを決意する。それは水中の酸素を一瞬のうちに破壊し尽くしあらゆる生物を窒息死させ、さらに溶解する液体中の酸素破壊剤「オキシジェン・デストロイヤー」の実験だった。芹沢は酸素の研究をしていた際、偶然にそれを発見したといい、平和利用できるまで公表しないつもりでいたという。尾形と恵美子は芹沢のもとへと向かい、ゴジラを倒すためにそれを使わせてほしいと必死に懇願するが、芹沢は「オキシジェン・デストロイヤーは原水爆に匹敵する恐るべき破壊兵器になり得るものであり、いったんこれを使ったならば世界の為政者たちが看過しているはずはない。彼らは必ず武器として使用するに決まっている」と言い、使用を断固として拒絶する。しかし、テレビに映し出された変わり果てた東京の光景・苦悶する被災者たちの姿・女子学生らによる真摯な「平和への祈り」の斉唱を目の当たりにして心動かされた芹沢は、「今回一回限り」の条件でオキシジェン・デストロイヤーの使用を承諾し、それに関するすべての資料を焼却する。

海上保安庁の巡視船「しきね」の甲板で、田辺はガイガーカウンターで東京湾に潜むゴジラの所在をつきとめる。芹沢は「完全な状態で作動するには水中操作以外にない」と潜水服を着てオキシジェン・デストロイヤーのカプセルを受け取ると尾形のサポートを受けて海底に潜り、ゴジラの側まで到達したところで隙を見て尾形だけを海面へ浮上させゴジラの足元でカプセルの安全弁を抜いてオキシジェン・デストロイヤーを一人で起動する。一瞬のうちに海水が激しく泡立ち、もがき苦しんだゴジラは海上で断末魔を残すと力尽きて海底へ沈み、死骸は溶解して骨となり海の泡と化して消えた。だが、人間不信の芹沢もオキシジェン・デストロイヤーの悪用を恐れ、ゴジラ絶命の成功を見届けると尾形に「幸福に暮らせ」と別れを告げると、ジャックナイフで潜水服の命綱とエアパイプを切断して海中で自決しオキシジェン・デストロイヤーの秘密を誰にも知られないよう永遠に封印してしまった。

船上で事態の推移を見守っていた人々がゴジラを倒した歓喜に湧くが、尾形らは芹沢の死の悲哀に満ち、山根は沈痛な表情で「あのゴジラが最後の一匹とは思えない。もし水爆実験が続けて行われるとしたら、あのゴジラの同類がまた世界のどこかへ現れてくるかもしれない[注釈 16]」と呟く。人々は静けさを取り戻した海原に敬虔な黙祷を捧げるのだった。
登場人物
尾形 秀人(おがた ひでと)
[56]
本作品の主人公。南海汽船の子会社である南海サルベージKKの若き所長[出典 10]。27歳[56][58]。「栄光丸」と「備後丸」が消息不明となった際、南海汽船の社長とともに海上保安庁に詰めて情報を収集するほか、大戸島への調査団にも潜水作業の専門家として参加し、八幡山の向こうから姿を現したゴジラと遭遇する[49]。山根博士の一人娘である恵美子とは相思相愛だが[57]、山根博士をはじめ周囲には未だに公言できずにいる。ゴジラの抹殺と保護をめぐって山根博士と対立する。芹沢大助は中学校以来の旧友である。愛車はキャブトンサイドカータイプ[59][60]

年齢設定は、検討用台本では30歳[61]、準備稿では32歳であった[62]

山根 恵美子(やまね えみこ)[63]
本作品のヒロイン。山根博士の一人娘で尾形の恋人[出典 11]。母親がいない家庭の中で父親の世話をしている。22歳[63][58]。大戸島への調査団には山根博士の助手として参加しており[58]、八幡山の向こうから姿を現したゴジラと遭遇する。芹沢を兄のように慕っているが[64]、世間では彼と婚約していると噂されている。また、尾形との関係は未だ周囲に打ち明けていない。萩原記者の依頼で芹沢の自宅を訪ねた際に芹沢から秘密にする条件でオキシジェン・デストロイヤーの実験を見せられ、以後その秘密を芹沢と共有するが、ゴジラの被害を見かねて約束を破り、尾形に打ち明けてしまう。

演じた河内桃子は、尾形役の宝田明とは養成所時代の同期であり、本作品でも養成所の延長のような感覚で恋人というよりも兄弟のようであったと述懐している[65]


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