ゴジラの逆襲
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高さ約2メートルの大坂城のミニチュアは、50万円(当時)をかけて約1か月で作られた[出典 37]。丈夫に作り過ぎたあまり、本番でゴジラが体当たりしてもうまく崩れてくれず、NGとなった[34][注釈 15]。続いて改修し、裏からワイヤーで引っ張って壊れる算段としたが、スタッフがゴジラの襲撃前にタイミングを勘違いしてワイヤーを引き、壊してしまった[出典 38]。結局、半壊したミニチュアを2日間かけて修理し[34]、再度撮影を行っている。だが、取材陣はこのアクシデントに大喜びして報道し、怪我の功名で宣伝は大成功となった。

クライマックスの氷山は、オープンセットに高さ10メートルのものが作られた[12][101]。撮影時期は真冬ではあるが、本物の氷が製氷業者から200トン分も運び込まれ[12]、借りてきたベルトコンベアーで細かく粉砕したものを敷き詰めている[34][29]。さらに、ゴジラが氷に埋まるシーンでは、後楽園遊園地のスケートリンクから借りた製氷器で作った氷雪が使われた[97][101]。このシーンでは、セットの下でゴジラの口を操作していた開米栄三が生き埋めになっており、大した怪我はなかったが[105]、周囲に気づかれず死ぬ思いであったという[100]。開米は、セットの足場に用いた二重が廃棄寸前の古いものであったためと述べている[100]。有川は、雪山では対比物がないために勘で撮影するしかなく、結果としてゴジラが小さく飛行機の方が目立ってしまったと述懐している[97]

円谷英二の長男である円谷一が前作に続き、撮影助手として特撮班に加わっている。学習院大学理学部物理科生という経歴から、英二に「特撮に使えるいい素材は無いか」とつねづね相談されていた一は、ガラスを特殊コーティングした「ハーフミラー」を創案し、特技監督の英二によって合成画面に使用されて効果をあげている。

ゴジラとアンギラスとの格闘シーンは当初、3倍の高速度撮影で撮る予定だったが、撮影助手[注釈 16]が撮影速度のコマ数設定つまみを間違え、微速度撮影(コマ落とし)にするミスをしてしまい、異様に素早い怪獣の動きとなったフィルムが編集で上がってきた[出典 39]。ラッシュを確認した有川貞昌は担当者を怒ったが、円谷英二はこの素早さが野獣の格闘らしいと面白がり、コマ落としの手法のまま両怪獣の撮影が進められた[出典 40]。この手法は、以後の怪獣映画作品でも取り入れられた[101][102]。高速度撮影ではカメラに特注モーターを取りつける必要があったため、結果として操作は楽になった[97]。戦いの描写は、闘犬を参考にしている[出典 41]

特撮の現場を見学していた土屋嘉男によれば、ゴジラとアンギラスが水中で戦うシーンでは、2体が激しく格闘していたところにプールへ電気が流れ、両者が感電する事故があったという[55]

大阪のシーンはナイトシーンとしても暗い画面になっており、川北紘一は着ぐるみによる演技を隠す意図のほか、フランス映画の影響を受けてコントラストを少なくしているものと推測している[101]。書籍『ゴジラ来襲』では灯火管制下の戦いにリアリティを与えていると評価しているが[6]、書籍『ゴジラ大辞典』では画面の暗さを本作品の難点に挙げている[33]

神子島のシーンで偵察機からの俯瞰のゴジラは30センチメートルのゼンマイ人形が作られた[34]。撮影中に中島春雄は同じ型から人形を作成・着色し、撮影後も自宅に飾っている[107]

パイロットを主人公としていることから空撮シーンが多いが、飛行機からの空撮は円谷英二が自ら行った[出典 42]

有川によれば、前作のように時間の都合から合成に逃げるということがなく合成が少なくなったため、徹夜の作業も減ったという[97]
評価

公開当時の映画評では、前作よりも本作品の方が高く評価されていた[90]。これについて本多は、当時のマスコミは監督が映画の中に自身の主張を入れることに否定的な風潮であったといい、本作品に対する評価はそのことが反映されたものと推測している[90]。本多自身は、前作よりも事件がポンポン進んで面白かったのではないかと評している[90]
海外公開版

前作が『Godzilla, King of the Monsters!』の英語題名で海外に配給され、大成功を収めたことから、本作品もアメリカのバイヤーに買い取られ、海外配給が決定した。権利を取得したのはヘンリー・リブニック(別名 - ハロルド・ロス)、リチャード・ケイ(英語版)、エドワード・バリソン、ポール・シュライブマン、エドモンド・ゴールドマンらのグループである[108]。当初は『Godzilla, the Fire Monster』のタイトルが予定されていたが[109]、前作とはバイヤーと配給会社が異なるために「Godzilla」をタイトルに使うことができず[注釈 17]、『The Volcano Monsters』のタイトルでリパブリック・ピクチャーズが配給することが決まり[110]、さらにアメリカ・ハリウッドで新たに追加撮影を行うこととなった[111][110]。日本人俳優の登場するシーンや日本版のストーリーはすべてカットし、アメリカ映画として作り直す予定であった[出典 43]

エドワード・バリソンとヘンリー・リブニックは追加撮影のためにAB-PTピクチャーズと契約し[112][109]、脚本はイブ・メルキオールとエド・ワトソンが執筆した[112][108]。執筆にあたってメルキオールとワトソンは『ゴジラの逆襲』を鑑賞して特撮シーンをリスト化すると、使用する映像を選別して新しいストーリーを構想し、1957年5月7日に脚本が脱稿した[108]。同年6月17日から撮影が開始される予定であることが雑誌『バラエティ』で発表された[110]。追加撮影に関しては前作に触発されたものとされているが[110]、イブ・メルキオールは『ゴジラの逆襲』のストーリーをプロデューサーが面白くないと判断したためだと述べている[109]

その内容は、「フィリピンを経由して大阪で激闘を繰り広げた2匹の巨大怪獣が、アメリカに上陸して再戦する」というものである[111][注釈 18]。なお、脚本上では登場怪獣は巨大な恐竜と設定されており、ゴジラはティラノサウルス、アンギラスはアンキロサウルスと記載されている[112][108]

ゴジラが白熱光を放つシーンはカットされる予定で[注釈 19]、飛行機が撃墜されるシーンでは白熱光の代わりに、ゴジラの手が飛行機を叩き落とすシーンがアメリカで制作される予定だった[112][108]。なお、アメリカでの特殊効果はハワード・A・アンダーソンのスタジオが担当する予定だった[108]


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