ゴシック小説では礼拝堂、鎧、肖像画などが道具立として使われたが、濠や跳ね橋、秘密の地下道のある古い屋敷は、推理小説ブームの時代においても、A.A.ミルン『赤い館の秘密』(1921年)、コナン・ドイル『恐怖の谷』(1914-15年)などでも舞台とされた[1]。
ゴシック小説的手法を用いた作品として知られるものには、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』(1847年)や、トマス・ピンチョン『V.』(1963年)がある。『オトラント城奇譚』は20世紀になるとシュルレアリスト達によって再評価され、特にアンドレ・ブルトンはこの作品が夢から着想を得た点に注目した。アメリカではシャーリイ・ジャクスンら、ゴシック・ノベル、ゴシック・ホラーなどと呼ばれる現代的ゴシック小説が高い人気を保っており、1990年代にはポスト・モダンがE.A.ポーと言われるパトリック・マグラアなどのニュー・ゴシックが注目された。
ゴシック小説定番のモチーフは、怪奇現象、宿命、古城・古い館、廃墟、幽霊などであり、それらは現代のゴシック小説でも継承されている。
映画においても、ケン・ラッセル『ゴシック』(1986年)や、ピトフ『ヴィドック』(2001年)といったゴシック趣味の映画が作られている。
主なゴシック小説
『ヴァセック』(1786年、ウィリアム・トマス・ベックフォード)
『フランケンシュタイン』(1818年、メアリー・シェリー)
『ノートルダム・ド・パリ』(1831年、ビクトル・ユーゴー)
『ジキル博士とハイド氏』(1886年、ロバート・ルイス・スティーヴンソン)
『吸血鬼ドラキュラ』(1897年、ブラム・ストーカー)
『ゴーメンガースト』(1946年 - 1959年、マーヴィン・ピーク)
脚注^ a b 中尾真理『ホームズと推理小説の時代』筑摩書房 2018年
^ 由良
参考文献
ルイ・ヴァックス『幻想の美学』窪田般彌訳 白水社 文庫クセジュ 1961年
日夏耿之介『サバト恠異帖』国書刊行会 1987年。新版
笠井潔編著『SFとは何か』NHKブックス 1987年