ゴキブリ
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しかし後の研究では約2億6000万年前にゴキブリ目とカマキリ目が分岐し、現生ゴキブリ目は約2億年前のペルム紀に出現し、その後白亜紀(1億5000万年 - 6600万年前)に現在の科が出揃ったことが分かっている[25]。日本における最古の昆虫化石は、山口県美祢市にある中生代三畳紀の地層から発見されたゴキブリの前翅である[24]

出現以来、繁殖力の強さ、弾力性ある体、発達した脚や感覚器官、雑食性、飢餓への耐性、殺虫剤への抵抗性発達など、種々の要因で現在に至るまで繁栄してきた[26]。「人類が滅びたらゴキブリの時代がくる」とさえ言われているが、安富和男はこれについて、休眠性を持たない熱帯原産種(チャバネゴキブリやワモンゴキブリなど)は耐寒性が低く死滅し、残り(ヤマトゴキブリなど)は森林や熱帯雨林へ回帰するだろうと推測している[26]
生活史

卵 → 幼虫 → 成虫という成長段階を踏む不完全変態の昆虫である[27]。卵は数十個が一つの卵鞘に包まれて産みつけられるが、チャバネゴキブリのようにメスが卵鞘を尾部にぶら下げて孵化するまで保護するものや[27]、マダガスカルゴキブリのようにいったん体外で形成した卵鞘を体内に引き込んで体内保護するものもいる[28][29]。また、孵化後腹部である程度成長させたあとに体外へ生み出す胎生の種もいる[28]。幼虫は翅がない以外は成虫とほぼ同じ形をしており[27][30]、種類や環境条件によるが6 - 15回程度の脱皮を経て成虫となる[29]クロゴキブリのような大型種は成虫になるのに1年半から2年程の歳月を要するものが多く、世代交代の速度は遅い[31]。体の脂肪体を栄養とすることで、ワモンゴキブリは水さえ摂取していない状態でも 30 - 40日 は生存する[32]
形態
卵・幼虫Pennsylvania wood cockroach (Parcoblatta pennsylvanica)の卵鞘

ゴキブリの卵は卵鞘というキチン質から成るカプセルに十数個以上含まれており、クロゴキブリなどの大型種はがま口型で黒ずんだ茶色ないし濃茶色、チャバネゴキブリなどの小型種は長方形で薄茶色をしている[33]。この中に細長い卵本体が2列に並んで入っており、卵数は両面に出来た浅い溝の数と同じである[34]。卵数と大きさは大型種が10数個から20数個で7ミリメートルから1センチメートル前後、小型種は5ミリメートル前後で、チャバネゴキブリの場合は卵数は30数個から40数個である[33]。いずれも全てが孵化することはあまりない[33]

卵本体はバナナのような形で白く、大きさは大型種で0.8 - 1.2 × 2.5 - 3.5ミリメートル、小型種で0.3 - 0.5 × 2.0 - 2.5ミリメートル[35]。コリオニンというタンパク質由来の弾力性に富む卵殻に覆われるが、卵殻は卵を保護するには薄すぎるので、卵鞘が乾燥などから卵を守る役割を担う[35][注釈 3]。卵鞘は卵巣の附属腺から分泌された粘液が卵を覆って乾燥したものである[35]卵胎生のマダガスカルゴキブリ (Gromphadorhina portentosa)マダガスカルゴキブリ (Gromphadorhina portentosa)の成育段階比較

孵化時、卵鞘のジャック側を破って出てきたばかりの幼虫は白く透明で柔らかく、次第に表皮クチクラ層が空気中の酸素に触れて固くなり、固有色を帯びていく[36]。そうして1 - 2時間後には活発に活動するようになる[36]。幼虫は翅を持たない以外は成虫に似ており、孵化した幼虫は脱皮を繰り返して成育していき、最後には羽化して成虫となる[30]
成虫

体長は種によってさまざまで、ホラアナゴキブリのように3 - 5 mm程度の種類もいれば[37]、長さ97 mm、幅45 mm、最大翼幅 20 cmに達するナンベイオオチャバネゴキブリ (Megaloblatta Longipennis)のような種も知られるが、平均は0.6 - 7.6 cmの範囲に収まる[38]。日本産の最大種は八重山諸島に分布する体長35 - 50 mmのヤエヤママダラゴキブリである[39]

体は例外なく扁平で幅の広い小判型をしており[40]、平行に重なった翅も相まって、狭い隙間に入ったり通り抜けるのに都合がよい体型をしている[41]。体色はおおよそ茶褐色か黒褐色系だが、淡緑色や金属青緑色を持つものも稀にいる[40]

外見上は頭部・胸部・腹部から成り、体全体はクチクラとも呼ばれる3層構造の表皮に覆われる[42]。この3層構造は外側から順に外表皮 (epicuticle)、外原表皮 (exocuticle)、内原表皮 (endocuticle)と言い、それぞれワックスを含む撥水性の非常に薄い層、体色を決める色素を含む層状になった薄い膜、厚く柔軟で丈夫な層、という具合である[42]。体表の撥水性や気門の仕組みにより水面を浮いたまま移動でき、足場が良ければ一時的な潜水も可能である[43]。幼虫期間を浅瀬などの浅い水中で過ごすマダラゴキブリのような例もある[43]

この表皮は真皮細胞が分泌したもので、真皮細胞は他にも感覚子や毛、刺、鱗片といった特徴的な構造の元となっている[42]。真皮細胞層にある皮膚腺からは皮脂が分泌され、これが皮膚腺孔を通して外表皮へ運ばれることで体表に油ぎった光沢感を持たせている[42]。光沢をつくる脂質はヘプタコサジエンを主成分とし、オルトキノンが酸化防止剤として固化防止の役割を担う[32]。これがアブラムシ(油虫)の別名を持つ所以だが、種類によっては光沢を欠くものもいる。

他の昆虫と同様に開放血管系で、背板の背隔膜(背脈管)を通して大動脈が前後に1本走り、それに心臓が続く[44]。中枢神経系ははしご形神経系で、脳、食道下神経球、胸部神経球3個、腹部神経球9個、それらを繋ぐ腹走神経索で構成される[45]。神経球はそれぞれ所管する体節を制御し、特に胸部には多くの末梢神経が伸びて脚や翅の行動を制御する大きな神経球がある[46]

消化管は咽頭から食道、前腸(素嚢と前胃)、中腸、後腸、結腸、直腸で構成される[47]。素嚢は摂取した食べ物を一時的に貯めておく薄い半透明の膜状の袋で[48]、前胃には6列の歯列帯が配列し、食べ物を物理的に破砕する[47][48]。中腸(胃)では食べ物の消化と吸収が行われ、後腸との境目には排出器官のマルピーギ管がある[47]
頭部ワモンゴキブリ (Periplaneta americana)の顔

頭部は下向きで小さく、ほぼ前胸背板で隠れる[40]複眼と単眼触角大顎などの口器がある。複眼はそら豆状で平たく[40]、数千個の個眼から成る[49]


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