ゴキブリ
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オオゴキブリ上科 Blaberoidea[1][2]
ゴキブリ上科 Blattoidea[3][2]
ムカシゴキブリ上科 Corydioidea[4][2]
†Caloblattinoidea[5]
Blaberus giganteus

ゴキブリ(英語: cockroach)は、昆虫綱ゴキブリ目(Blattodea)のうちシロアリ以外のものの総称。なおカマキリ目と合わせて網翅目 (Dictyoptera) を置き、Blattodeaをその下のゴキブリ亜目とすることがあるが、その場合、ゴキブリはゴキブリ亜目(のうちシロアリ以外)となる。 生きた化石の一つ。

朝比奈正二郎 (1991)によれば、ゴキブリは全世界に約4,000種いると言われ、うち日本には92550種余りが記録される[6]。Beccaloni G.W. (2014)のCockroach Species Fileには約4600種が記録されている[7]。世界に生息するゴキブリの総数は熱帯亜熱帯の森林を中心に1兆4853億匹といわれており、日本には236億匹が生息するものと推定されている[6]。特に熱帯・亜熱帯域に多いが、世界中に広く分布し、人の手を介して拡散されることも少なくない[8]
名称

ゴキブリは最初からそう呼ばれていたわけではない。平安時代本草和名には「阿久多牟之(あくたむし)」や「都乃牟之(つのむし)」の古名が見え、伊呂波字類抄には「アキムシ」という名前も見える[9]。いずれも現在のヤマトゴキブリを指すと考えられている[9]

江戸時代に入ると「油虫(あぶらむし)」と呼ばれるようになり[10]、百科事典の和漢三才図会には御器噛(ごきかぶり)と共にその名前が記されている[9]。油虫という名前は油ぎったような外見から、御器噛という名前は蓋付きの(御器[注釈 1])をかじる虫であることから由来し、他にも地域によってゴキクライムシやゴゼムシ、アマメ[注釈 2]などと呼ばれていた[9]。御器をかぶることから御器被りとも解される[12][13]

そして明治時代になってゴキブリという名前が現れる[9]。この名称はゴキカブリから訛ったものだとも説明されるが[14]昆虫学者小西正泰によると、「ゴキブリ」という名称は、1884年明治17年)に出版された日本の生物学辞典『生物学語彙』(岩川友太郎)に脱字があり、「ゴキカブリ」の「カ」の字が抜け落ちたまま拡散・定着したことに由来する[10]。なぜ欠落したのかは定かではないが、同書は漢字1文字あたり2文字までしか読みを振れない活字を使っており、これによって中央の文字が抜け落ちた可能性がある[10]

俳句では「油虫(アブラムシ)」は夏の季語である[15]など広く親しまれていた名称だが、生物学上では矢野宗幹は1906年(明治39年)、アリマキとの混同を避けるためにゴキブリを総称とするよう提唱した[16]。標準和名としての使用は松村松年が1898年(明治31年)にPeriplaneta americanaにこの名を与えたのを皮切りとする[17]。1903年(明治36年)に名和靖ヤマトゴキブリを指してゴキブリとし、1904年(明治37年)に出版された松村松年の日本千虫図鑑第1巻でもゴキブリ名義でヤマトゴキブリが図説されている[18]。しかし矢野は1906年、本草綱目啓蒙の記述からゴキブリはゴキブリ属の種の総称だと解すべきとして、特定の1種の和名とすることはできないと論じた[16]

漢字表記には漢名の「蜚?」という文字が当てられ、沖縄県琉球方言でゴキブリを指す「ヒーレー」「フィーレー」という語は漢名の音読み「ひれん」に由来する[19]

中国普通話国語の場合)では「?螂(zh?nglang[20])」や「蜚?(f?ilian[20])」、香港広東語の場合)では「??(gaat6 jaat2[21]/おうそう)」という区別で呼ばれることもある。後者は「?」も「?」も常用漢字ではないが、日本でも時折ゴキブリを表わす漢字として用いられることがある。

英名はcockroachで、これはスペイン語のcucarachaが英語化したもの[22]。ほか、甲虫類に似ていることからblack beetleと呼ばれることもある[23]
進化史

定説では、ゴキブリが出現したのは、今から約3億年前の古生代石炭紀で、「生きている化石」とも言われてきた[24]。しかし後の研究では約2億6000万年前にゴキブリ目とカマキリ目が分岐し、現生ゴキブリ目は約2億年前のペルム紀に出現し、その後白亜紀(1億5000万年 - 6600万年前)に現在の科が出揃ったことが分かっている[25]。日本における最古の昆虫化石は、山口県美祢市にある中生代三畳紀の地層から発見されたゴキブリの前翅である[24]

出現以来、繁殖力の強さ、弾力性ある体、発達した脚や感覚器官、雑食性、飢餓への耐性、殺虫剤への抵抗性発達など、種々の要因で現在に至るまで繁栄してきた[26]。「人類が滅びたらゴキブリの時代がくる」とさえ言われているが、安富和男はこれについて、休眠性を持たない熱帯原産種(チャバネゴキブリやワモンゴキブリなど)は耐寒性が低く死滅し、残り(ヤマトゴキブリなど)は森林や熱帯雨林へ回帰するだろうと推測している[26]
生活史

卵 → 幼虫 → 成虫という成長段階を踏む不完全変態の昆虫である[27]。卵は数十個が一つの卵鞘に包まれて産みつけられるが、チャバネゴキブリのようにメスが卵鞘を尾部にぶら下げて孵化するまで保護するものや[27]、マダガスカルゴキブリのようにいったん体外で形成した卵鞘を体内に引き込んで体内保護するものもいる[28][29]。また、孵化後腹部である程度成長させたあとに体外へ生み出す胎生の種もいる[28]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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